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ASDが持つ三つの困難(コミュニケーション、こだわり、コスパ)

📒まとめ

ASD の主な特徴を、「こ」始まりで三点で整理しています。

一言で言えば、運動神経ならぬ認知神経が先天的に悪いと言えます。認知能力が弱いがゆえにコミュニケーションに追いつかず、こだわりをつくって節約し、また燃費も悪いので長時間の社会生活すらも大変です。

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1: コミュニケーション困難

ASD は、身体的な障害ならぬ 社会性の障害 と呼べると思います *3。

先に身体的な障害から

たとえば片腕がない、両足がない等を思い浮かべてください。

私たちは日々当たり前に移動や家事やスポーツをしていますが、これらは言葉で説明できないくらい極めて高度なものです。身体的な障害があると、健常者のように行うことはほぼ不可能となります。

ですので、(無能と切り捨てて排斥するのでなければ)障害があるなりに配慮しなければなりません。片腕がないならタイピングがむずかしいから免除してもらう、両足がないなら通勤は難しいからフルリモートを認める、かつどうしても会いたい場合は上司やメンバーに自宅に来てもらうなどですね。

もちろん、訓練次第では片手でも入力はできますし、会社の近くに済む、かつオフィスもバリアフリーであるならば通うこともできます。社会的にも割引や介助などの支援はある程度整備されています。

次に社会性の障害を

ASD も、この「障害」と同じカテゴリーに属するものと言えるはずです。社会性の障害と呼ばれることがあり、私はわかりやすくて気に入っています。

もっと言えばコミュニケーションです。コミュニケーションはとても奥が深いものです。少し深堀りしましょう:

このように、コミュニケーションは非常に高度な営みです。生成AIが盛り上がる 2025/08 現在でも、まだまだ人間を代替しきることはできません。機械でまかなえない程度には高度なのです。

ASD は、このコミュニケーションを行うのに必要な脳機能の不全だと考えられています。詳細は現時点でも解明されてはいませんが、原因がわからずとも観察と分析はできます。社会性の障害は、たしかにありそうです。そしてそれは「障害」のカテゴリーにふさわしいくらいに深刻なハンデなのです。

どんなコミュニケーション困難がある?

まずは生成AIに挙げてもらいましょう。

1. **非言語的コミュニケーションの理解**:
   - ASD社員は、表情、ジェスチャー、声のトーンなどの非言語的な手がかりを読み取ることが難しい場合があります。
   - 例えば、上司や同僚が暗に示唆していることを正確に理解できず、意図しない誤解を生むことがあります。

2. **明確な指示の必要性**:
   - 仕事の指示が曖昧な場合、それを理解し、自らで解釈することに困難を感じることがあります。
   - 明確で詳細な指示がないと、期待に沿った成果を達成するのが難しくなることがあります。

3. **社会的な場面での不安**:
   - 会議や社交イベントのような社会的な状況で、適切なタイミングで会話に参加したり、間を取るのが難しく、しばしば孤立を感じることがあります。

4. **メタファーや皮肉の理解**:
   - 言葉を文字どおりに解釈する傾向があるため、皮肉やメタファー、冗談を正しく理解できないことがあります。
   - これにより、会話の流れに乗れなくなったり、場違いな応答をしてしまったりすることがあります。

5. **感情の表現**:
   - 自分の感情を言葉で表現することが難しく、ストレスや不満を抱え込んでしまうことがあります。
   - また、感情が突然表面化し、周囲を驚かせることがあるかもしれません。

6. **多人数のディスカッションの難しさ**:
   - 複数人が同時に話す状況では、会話を追うのが難しく、話題に追いつくのが困難になることがあります。
   - 結果として、意見を求められても何も言えなくなってしまうことがあります。

🐰上記をベースに、私の個人的な体験を挙げてみます。

2: こだわり困難

コミュニケーションの次くらいに挙げられる特徴が「こだわりの強さ」です。

私たちは通常、既存の規範――ルール、マナー、文化様式、もっとカジュアルにはその場の空気やパワーバランスといったものまで、様々な規範に従います。しかし ASD はこだわりが強く、それらよりも自身のこだわりを優先するため対立が生じます。

何にこだわるかは千差万別

ASD が何にこだわるかは千差万別です。

🐰私の場合、やり方と過ごし方にこだわります

少し例を挙げましょう。

これらはほんの一部にすぎず、私は自身をプロのアスリートとたとえています。

当然ながら仕事でも衝突することが多いです。パンデミックによりフルフレックス、フルリモートの流れが来なかったら、と考えると恐ろしいです。

🐰こだわりを曲げない選択肢はない

こだわりは宗教観や倫理観のようなものと考えてください。たとえるならクリスチャンにキリスト教をやめろと言ったり、現代人に「殺人忌避はやめろ(仕事として必要なのだからいいからそいつを殺せ)」と言うようなものです。曲げるという選択肢はまずありません。生命の危機があるなら、一時的に曲げるかもしれないという程度です。

仕事だから、みんなに迷惑がかかるから、尊敬している人が言っているから、などは 何の理由にもなりません

実際、私も顧客だろうと幹部だろうと、あるいは私をよく知る友人や上司だろうと、自分のこだわりが侵されそうなときは遠慮なく主張してきました。もちろん、社会人として TPPPO はわきまえますし、私にもそれだけの経験値はありますが、それでも本心では曲げるつもりは一切ありません。火山の噴火に無理やりフタをしているようなもので、そのうち暴発しかねません。私はそれを防ぐために、丁寧に言語化して配慮を申し出ますが、相手が受け入れない場合、どこかで衝突することになります。止められるものではありません。

🐰こだわりは性能不足の裏返し

私は 汚部屋のたとえ をよく使います。

たとえ汚部屋であろうと、それで生活できるなら問題はないという意味です。もっと言えば、汚部屋で生活できる人は、汚部屋でも生活できるだけの処理性能を持っていると言えます。たとえば細かい汚れを気にしない鈍感さや情報の取捨選択だったり、どこに何があるかを覚えている記憶力や空間認識だったり、あるいは単に不衛生で不養生でも生活できるほど頑丈だったり燃費が良かったりします。

逆を言えば、汚部屋では処理が追いつかないようなロースペックな人が潔癖になります。処理が追いつく程度の環境を維持しないといけないので、掃除はもちろん、物自体も徹底的に減らしたりします。

かたや汚部屋でも平気なハイスペック、かたや汚部屋では生きていけないロースペック――わかりあえるはずもありません。積んでいる物が違います。

私は、ASD はロースペックだと考えています。ロースペックでも生きていくためには、情報量を減らして、できるだけ少ないものに頼る他はありません。こだわりの特徴は、ここから来ているのではないかと考えます。そうして、とりあえず「これなら行けそうだ」が見つかって、こだわり続けるうちに、もちろん慣れや愛着も出てくるので、なおのこと強固なものになっていきます。

こだわるメカニズム

Deep Research の結果を読み解きます *4。

先天的な脳の性質による処理不足 or 処理過剰と、それに伴う後天的な適応があるようです。ロースペックだからこだわらざるをえない、との私の見方もあながち間違ってなさそうですね。

3: コスパ困難

既存の情報源ではあまり語られませんが、燃費の悪さも困難の一つと考えます。このページでは「こ」で統一したいのでコスパ(コストパフォーマンス)が悪いと称していますが、燃費が悪い、と同義です。

🐰燃費が悪い

ASD は、神経科学的に言えば「不器用な脳のあり方」と言えそうです。コミュニケーションや状況適応に必要な処理を発揮しづらいのです。より正確に言えば、脳内の回路が非効率なせいで 人一倍エネルギーが消耗される 感覚があります。

私がよく使う例はアーケード音ゲーです。アーケード(ゲームセンター)にある音ゲー(音楽ゲーム)が趣味で、音楽に合わせて指、手、腕を動かすのですが、私が「運動歴が長く運動習慣もある健康的なアラフォー」の身体能力をフル活用して、汗をかきながらプレイしている一方で、運動習慣もなさそうで不健康そうな中高生が涼しい顔でプレイしています。中高生の方がスコアが良かったりします。その場で、私だけが半袖半パンでタオルを首にかけたスポーツスタイルなのです。

これは燃費の悪さを如実にあらわしていると思います。燃費が悪いので、ある一定以上の水準から先に至ることができません。ですので体力でカバーする羽目になっています。音ゲーは秒間 10 回以上連打したり、秒間 2 ~3 往復させたりとそれなりの運動を伴い、私はれっきとしたスポーツとさえ感じます。一方、燃費が良ければ、それこそ子供でも難なくさばけますし、実際そちらがマジョリティです。アーケード音ゲーをスポーツととらえている人はいませんし、これは全国大会出場者など実力者を見ても明らかです。

このような限界に、音ゲーに限らずあらゆる場面で遭遇してきました。つまり何をやっても(よほどマイナーで単に人口が少ないのでなければ)人並以上に至ることができません。そもそも学業も、定期試験では学年首席なのに、範囲の広い模試になると偏差値 50 にも届かなくなりました。

燃費が悪いのです。普通の人は 10 やって 10 を出せるところを、私は 10 をやっても 1 しか出ません。周囲に経験者が少ない場合(新しいジャンルや取り組みなど)は努力量で勝てますが、周囲も始めだすと、コスパの悪さでどう頑張っても勝てなくなります。

ASDと燃費の悪さの関係

Deep Research に調べてもらいました *5。特に「認知的負荷」観点で調べています。

以下、一部を抜粋します。

一言で言えば、運動神経ならぬ 認知神経が悪い とでも言えると思います。認知神経はあくまでたとえですが、運動神経の認知能力版です。そして何事においても認知能力は使いますから、何事においても――たとえばコミュニケーション全般や状況判断全般でも不利となります。

参考