パターン：シングルゲートウェイ
サマリー
- ASD 部下とのコミュニケーションを仲介する役割をひとりだけ設定する
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背景とアプローチ
- 仕事は通常チームプレイであり、チームメンバーn人とのコミュニケーションが要請される
- ASD にとって、n 人との恒常的なコミュニケーションは荷が重く、仕事に費やす分も費やされてしまう → 仕事かコミュニケーションのどちらかがおろそかになる
- また、これは性能限界からくるものであり、時間や努力で解決するとも限らないし、おそらくしない
- そんな低確率な人材に「チームメンバーとして馴染むこと」を期待するのは筋が悪い
- 👉️隔離する。しかし隔離しただけではコミュニケーションが取れないので、仲介役を最小限＝ひとり設定する
アプローチ詳細
- ゲートウェイはひとりにする（シングルゲートウェイ）
- シングルゲートウェイにより、ASD は「ゲートウェイひとり」とだけコミュニケーションすればいいため、負荷が現実的なラインでおさまる
- ゲートウェイが仲介するのはタスク（とその遂行に直接関係する情報） です
- ここでタスクとしては、チームとしてやることが決まったものを指します
- ですので、タスク以外の情報については仲介は不要です。たとえば、オンボーディングその他細かい情報は、（いちいち解説するのではなく）ドキュメントやフォルダを読ませればよいです
- ゲートウェイの役割は翻訳と調整とQ&Aです です
- 翻訳：ASD → チームについては、チームにわかるように翻訳して伝えます。チーム → ASD については、ASD 部下にわかるように翻訳して伝えます
- 調整：ASD がキャパオーバーするか、チームがキャパオーバーしがちなので、ゲートウェイが負荷をコントロールします
- Q&A：ASD → チーム、チーム → ASD、双方向で質問したいことがよく生じるので、それに答えます。テキストで非同期で行うのが基本ですが、分量が多い場合は会議などでまとめて行っても構いません。
- ゲートウェイの緩和
- ゲートウェイ役の負担が高いこと、また ASD 部下の自立を促すことを考えると、ゲートウェイの負荷は軽くしていきたいです
- たとえばゲートウェイをはさまず直にチームとやりとりさせるか、その上で問題があればゲートウェイが補足や仲裁に入るようにします
- 役割で言えば、Q&A（特に非同期でテキストで行うもの）から行うのがやりやすいでしょう。言い方を変えると、ここでゲートウェイレスを実現できないのであれば、他の場合もたぶん無理なので、まずは Q&A での緩和を目指しましょう
議論
- Q: ゲートウェイを務める者の負荷は無視できないと思うが。どうすればいいのか
- Ans: 上手く調整して乗り切ってください
- まずゲートウェイがなければ、チーム全体が被害を被るので、おそらくゲートウェイは必要です
- ゲートウェイ役の業務量は減らしてください
- ゲートウェイ役のやる気を上げる言い分を考えてください、たとえば:
- その ASD メンバーをある種自由に使える立場である（強力かもしれない武器を手に入れた）という事実
- ゲートウェイ役を理由に、忙しい業務や慌ただしいチームから少し距離を置ける可能性
- 例: 「ゲートウェイはそれなりに大変なので、すみませんがその仕事は誰かにお任せしたいです。あるいはあなたがゲートウェイをしてもいいですが……」
- 日常ではあまり出会えない、レアなタイプの人材をマネジメントするという挑戦
- 役割分担や多様性の見直しへの接続
- 🐰ASDに限らず、マイノリティに配慮する営みは、その組織そのチームの構造的・文化的問題に目をつけるきっかけとなります
- Q: ひとりとしかコミュニケーションできないと言っているようなものではないか。甘えではないのか
- Ans: どう判断するかは自由ですが、被害を被るのはチームです
- 🐰たとえば ASD 部下の中年男性は、新卒の若い新人に対しても、ベテランの男性でないと受け止められないような濃い正論を初対面にもかかわらずいきなりぶつけたりします。なぜそれがダメなのかを理解できませんし、むしろ平等や公平の概念を使って正当化したりします
- 🐰これは一例で、ASD にとってコミュニケーションとは「相手や場の前提や状況はよくわからないし、適切な言い回しもわからないけど、とりあえず伝える」ものでしかありません。あるいは、わからないので自分から一切話すのはやめよう、と保身的（受動的）になります。いずれにせよ、チームメンバーとして許容するのは難しいでしょう
- このドキュメントで強調してきたように、ASD は特性上、そういった機微を読み取るのができないか、できても燃費が悪くて恒常的続けらずボロが出ます。配慮するしかないのです
- まずはシングルゲートウェイを成功させましょう。チームメンバーとして解放するのは、それからでも遅くはありません