原則:二択と自己判断原則
サマリー
- ASD には「遠回しのお願い」や「グラデーション」が通用せず、しばしば二択に単純化されるし、自己判断で選択される
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背景とアプローチ
- 遠回しのお願いとは、以下のようなもの
- 例: 「できれば~~してほしい」
- これは事実上「~~をしてください」に等しいが、ASD は読み取れない
- ASD 部下は「上司は~~してほしいと考えている」「希望であって絶対ではない」と字面通りに捉える。言い方を変えると 使ってもいいし使わなくてもいい「参考情報の一つ」 と捉える
- グラデーションとは、白黒をつけるほど単純ではないもの
- 例: ASD 部下が上司に提案1を出し、上司は「考えておく」と濁した
- ASD 部下から見ると「提案1をやる or やらない」の二択で捉えており、濁した回答は「やらない」にカテゴライズする
- もちろん上司側としては様々な事情や制約があり、現時点ではどちらにも倒せないからこそ濁していたりするが、ASD 部下側はそれを読み取れない。あるいは読み取ったとしても理解しない
- ASD 部下にとっては、「やる」ではなかった → 「やらない」に等しいと認識する。さらに、「この上司には “やる” だけのやる気や能力がない」「無い上司でも理解できるよう、丁寧に詳細に書いた長文を提出して教えてやらねば」といった歪みに発展する場合もある
- いずれにせよ ASD 部下は、生来の認知能力の乏しさゆえに解像度が粗くなる
- 遠回しもグラデーションもわからないか、労力が非現実的に大きい
- 現実的に収めるためには、だいぶ端折るしかない → 二択にして単純化し、かつ「参考情報であり使う・使わないは自由」との扱いにもして、その上でどちらかに倒す
- しかし、このような生態はわかりづらい
- 👉原則の形で言語化。特に二択に単純化する点と自己判断を下しがちな点の二点を盛り込む
アプローチ詳細
- 二択と自己判断
- 1: 二択に単純化 してとらえがちである
- 2: 情報を「使っても使わなくてもいい参考情報」ととらえがちである
- 3: 判断は 1+2 に従う
- つまり 自己判断で情報を使ったり使わなかったりした上で、二択のいずれかを選ぶ
- 二択と自己判断をしがちな理由
- 認知能力の問題
- 特性上、そこまで単純化しないと通用しないため
- 対処方法
- 明示的に与えると良い
- 曖昧な指示で悟らせず具体的に与えることと、グラデーションをぼかして伝えず(たとえばn個でもいいので構成要素を)列挙して具体性をインプットすることの二点
- 例1:
- ❌「できれば~~してほしい」
- ⭕「~~してください」
- 例2:
- ❌「その提案だけど、うーん、そうだなぁ……まあ考えておくね」
- ⭕「その提案だけど、現状では(文脈1)、(文脈2)、(文脈3)、……があるから少なくとも直近三ヶ月は難しそう。私も正直ここ三ヶ月はその気はない」
- また情報は口頭で一度伝えて終わりではなく、テキストなど形に残るものを与えた方がいい
- あるいは ASD 部下側がメモやノートを取るタイプなら、それができるだけの猶予を与える
- 🐰よほどスキルが生きるか、才能に恵まれている場合を除いて、ASD 部下が瞬発的に「二択と自己判断に抗う」のは難しいです
- 形の残した情報を見ながら判断する、とのスタイルが必要不可欠です
- あるいは徹底的にパターン化した上で「パターンに従う機械」のように振る舞ってもらうことでも成立します
- いずれにせよ、二択と自己判断に陥る者でもわかるくらいに具体的で詳細な情報を出す、整える ことからは逃げられません。ここから逃げている限り、ASD 部下は「二択と自己判断」の域を出ることはないでしょう