AI時代のエンジニア組織における探索フェーズの導入提案
背景:ボトルネックが変わった
AIの進化により、ソフトウェアの実装コストは劇的に低下しました。これまで「つくる速度」がボトルネックだったため、チームで分担して1つの製品を開発するモデルが合理的でした。しかし今、ボトルネックは「何をつくるかを見極める力」に移っています。方向を間違えたまま高速に実装を回すことが、最大の無駄になりつつあります。
提案:探索ループと実行フェーズの二段構え
製品開発プロセスを以下の2フェーズに分離することを提案します。
フェーズ1:探索ループ(個人主体)
「何をつくるべきか」が不明確な段階で実施します。
- 探索と実装は個人が行う。 各エンジニアが1人1テーマで仮説を立て、AIを活用してプロトタイプまで個人で作成します。合議による「無難な方向への収束」を避け、探索の多様性と並列度を最大化します。
- 評価と選別は集団で行う。 定期的にレビューの場を設け、各自の探索結果を持ち寄ります。「続けるか・捨てるか・深掘りするか」を集団の目で判断します。
- このループを繰り返す。 1回で正解にたどり着くことは期待しません。発散→個人実装→集団レビュー→再探索のサイクルを複数回回し、「これをつくるべきだ」という確信を醸成します。
フェーズ2:実行フェーズ(チーム主体)
確信が得られたテーマに対して、従来型のチーム開発で品質を磨き上げます。手法はスクラムでもウォーターフォールでも、テーマに適したものを選択します。
マネージャーの役割の変化
探索ループにおけるマネージャーの役割は、進捗管理ではありません。
- 各人の探索の質を高める支援(問いの立て方、視野の広げ方へのフィードバック)
- レビューの場の設計と運営(発散を殺さずに収束させるファシリテーション)
- 「何を捨てるか」の意思決定支援(サンクコストに囚われない判断の促進)
管理者というよりキュレーターに近い関わり方になります。
求められるエンジニア像の転換
このモデルでは、チーム内で分担された役割を遂行する力よりも、以下の力が重要になります。
- 問題発見力:自分で問いを立てられること
- 仮説構築力:限られた情報から方向性を描けること
- 判断力:「筋が悪い」と早めに捨てる決断ができること
端的に言えば、研究者寄りのケイパビリティです。
導入ステップ(案)
- まず1チーム・1スプリント分を探索ループに充て、小さく試す
- レビューの場の設計と運営方法を検証する
- 成果と課題を振り返り、対象チーム・期間を段階的に拡大する