管理職層の既婚者率は 8 割超、時に 10 割に迫る。性別・国籍と並ぶ多様性の軸として論じられないが、これは構造的同質性である。本稿ではこれを 「既婚の単一性」 と呼び、イノベーション阻害の主因の一つとして議題化する。
「結婚して性質が変わる」のではなく、元々その指向性を持つ者が結婚を選ぶ。ゆえに DINKs・子なし・別居婚でも単一性は保たれる。独身者の介護や同居は所与の条件であり、自己選択としての既婚とは非対称。
既存理論(経路依存性、組織の同型化、探索と深化のトレードオフ、イノベーターのジレンマ)に対し、本仮説は「誰が意思決定しているか」という人的基盤を与える補完である。日米のテック企業経営者のライフスタイル差とも整合する。
R&D 投資や制度改革では届かない、意思決定層の人間的構成そのものへの介入を要求する点に含意がある。ジェンダーや年齢の多様化だけでは同じ層を選び続ける可能性がある。
因果か相関かは切り分け困難で、既婚率は規範志向のマーカーかもしれない。また阻害は多要因であり単独要因ではない。ゆえに結論は断定ではなく議題化の形をとる:イノベーション阻害の主因の一つとして、既婚の単一性という見過ごされてきた変数を真剣に検討すべきだ。