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LGBTとSOGIの違い、そして神経多様性への応用 ~IOOOの提案~

第1部:LGBTとSOGIの違い

SOGIとは

SOGI(ソジ)は Sexual Orientation(性的指向)Gender Identity(性自認) の頭文字をとった言葉で、すべての人が持つ属性としての性的指向と性自認を指す枠組みである。

LGBTとは

LGBTは以下の4つの頭文字をとった言葉で、特定のセクシュアルマイノリティの人々を指すカテゴリーである。

両者の関係

SOGIは「分類の軸そのもの」、LGBTは「その軸上の特定のグループ」にあたる。

たとえるなら、「血液型」がSOGIに、「A型・B型・O型・AB型」がLGBTに相当する。血液型という枠組みは全員に関わり、その中のどれかに誰もが当てはまる。SOGIという「性的指向×性自認」の分類軸はすべての人が持っており、LGBTはその中でマイノリティにあたる組み合わせをまとめた呼び名である。

つまり、SOGIが上位の枠組み、LGBTがその中の下位カテゴリーという関係になる。

LGBT以外のSOGIの例

最多数派は異性愛(ヘテロセクシュアル)かつシスジェンダーの人々。

LGBTの4つに収まらない性的指向として、アセクシュアル(誰にも性的に惹かれない)、パンセクシュアル(性別を問わず惹かれる)、デミセクシュアル(親しい関係を築いた相手にのみ惹かれる)などがある。

性自認としては、ノンバイナリー(男女どちらにも当てはまらない)、ジェンダーフルイド(性自認が流動的)、Xジェンダー、クエスチョニング(模索中)などがある。


第2部:神経多様性にSOGI的な枠組みを導入できるか

ASDとスペクトラムの類似性

ASD(自閉スペクトラム症)も、かつては「自閉症」「アスペルガー症候群」など個別のカテゴリーに分かれていたものが、スペクトラム(連続体)として捉え直された。これはLGBTからSOGIへの視点の転換と似た動きである。

ニューロダイバーシティはSOGIに当たるか?

半分イエス、半分ノー。

ニューロダイバーシティ(神経多様性)は「人間の脳・神経のあり方は多様であり、それは自然な差異である」という考え方で、ASD・ADHD・ディスレクシアなどだけでなく、定型発達(ニューロティピカル)の人も含む。この点ではSOGIと同じく「全員が当事者」という枠組みになっている。

ただし、SOGIが「性的指向×性自認」という明確な分類軸を示しているのに対し、ニューロダイバーシティは「思想・理念」に近い言葉である。SOGIのようなすっきりした分類フレームワークはまだ確立されていない。

「頭の性能」というテーマ

ASDM(ASD部下を持つ管理職のためのマネジメントガイド)では、ASDの困難を以下の3つに整理している。

  1. コミュニケーション困難(社会性の障害)
  2. こだわり困難(こだわりが強い)
  3. コスパ困難(燃費が悪い)

一言で言えば「運動神経ならぬ認知神経が先天的に悪い」であり、IQが高ければエミュレーション(模倣)でカバーできるが、IQが並以下の場合はこだわりによる自衛が不可欠となる。

重要な比喩として「汚部屋のたとえ」がある。汚部屋でも機能できる人は、それだけの処理性能を持っている。汚部屋では処理が追いつかない人が潔癖になる。こだわりは性能不足の裏返しである。


第3部:SOGIの明快さの正体

なぜSOGIはわかりやすいのか

SOGIの明快さは以下の構造に由来する。

  1. 「性」という誰もが知っているパラメータが出発点にある — 日常的に使われ、社会制度にも組み込まれた概念
  2. そこに入る値として「男/女」の二値が当然視されていた — 長い間の暗黙の前提
  3. 現実にはそれだけでは記述しきれないとわかった — 解像度を上げる発見の物語
  4. 「性」を分解したら独立した2つのパラメータだった — 性的指向と性自認
  5. 各パラメータの値も二値ではなく連続的だった — スペクトラム

この構造が強いのは、出発点に「性」という一語があるからである。既知の概念を「実はもっと複雑でした」と解像度を上げていく話なので、理解の足場がある。

なぜ神経多様性側は明快になりにくいのか

  1. 「性」に相当する一語がない — 「頭」「脳」「認知」はどれも「性」ほどの日常的な手触りがない
  2. 方向の多様性 vs 量の多様性 — SOGIは「どっち向きか」を扱い、方向には優劣がない。神経多様性は「どれくらいか」を含まざるを得ず、量にはどうしても有利・不利が生じる
  3. パラメータの独立性が弱い — 認知性能と認知燃費は互いに絡み合っており、SOGIの2軸ほどきれいに分離できない
  4. 値を日常語で表現しにくい — 「高い↔低い」の一次元になりがちで、質的なバリエーションが見えにくい

第4部:IOOO(Input Orientation and Output Orientation)の提案

着想

「聞き話し」と「読み書き」は、「性」と同じくらい誰にとっても身近で、全員が日常的に体感している。しかも、社会が口頭(聞く・話す)ベースで設計されているという暗黙の前提がある。これは「性別は男女の二種類」と同じくらい無自覚に共有されている前提である。

ところが現実には「人生で書いた量 > 人生で喋った量」の人がいる。口頭では処理が追いつかないが、テキストなら十分に能力を発揮できる人がいる。これは「男/女では記述しきれない人がいる」と同じ構造の発見である。

IOOOの定義

IOOO = Input Orientation and Output Orientation

パラメータ 意味 値の連続体
Input Orientation(入力指向) 情報をどう受け取るのが得意か 聞く ↔ 読む
Output Orientation(出力指向) 情報をどう出すのが得意か 話す ↔ 書く

SOGIとIOOOの対応

  SOGI IOOO
略語の構造 4文字・2単語 4文字・2単語
第1のパラメータ Sexual Orientation(性的指向) Input Orientation(入力指向)
第1の値の例 同性、異性、両性、無性… 聞く寄り、読む寄り、両方、状況次第…
第2のパラメータ Gender Identity(性自認) Output Orientation(出力指向)
第2の値の例 男性、女性、ノンバイナリー… 話す寄り、書く寄り、両方、状況次第…
前提とされる「普通」 異性愛・シスジェンダー 聞く・話す(口頭ベース)
構造的不利を被る人 上記に当てはまらない人 読む・書く寄りの人

IOOOの強み

  1. 「性」に匹敵する日常性 — 聞く・話す・読む・書くは誰もが毎日行っており、「自分はどっち寄りか」を直感的に答えられる
  2. 方向の違いであって量の優劣ではない — 「IQが低い」は不利に聞こえるが、「入力が読む寄り、出力が書く寄り」は単なるスタイルの違いである
  3. 社会構造の偏りを可視化できる — 会議、電話、面接、雑談など社会の仕組みが口頭ベースで設計されていることを、SOGIが異性愛前提の社会構造を可視化したのと同じ方法で指摘できる
  4. 全員が当事者 — 口頭寄りの人も、テキスト寄りの人も、全員がIOOO上のどこかにいる

今後の課題