『問いかけの作法』逆引きリファレンス
使い方: 「今こういう状態だ」「こういうことをしたい」から引いて、何をすればいいか・どう問えばいいかを見つける。
A. 場の空気がおかしいとき
A-1. 会議で誰も発言しない(お通夜ミーティング)
まず確認すること
- 自分が「意見を言って」と直接的な要求をしていないか → していたら、それが原因(孤軍奮闘の悪循環)
- 場の目的が共有されているか → されていなければ、そもそも何を考えればいいかわからない
やること
- 見立てる: 黙っているのは「考えがない」のか「言いにくい」のか「問いがズレている」のか観察する
- ハードルを下げる: 「正解じゃなくていいので」「生煮えの意見で大歓迎です」と前置きする
- 適度に制約をかける: 「この3つの中で気になるものは?」など、自由度を狭めて答えやすくする
- 遊び心をくすぐる: 「もし予算が無限だったら?」のように仮定法で気負いを外す
A-2. 賛成しか出ない・同調ばかり
まず確認すること
- 関係性の固定化が起きていないか(「この人に逆らえない」という構造)
- 逸脱の抑止が働いていないか(空気を読んで黙る癖)
やること
- ユサブリモード: 「あえて反対するとしたら、どこが気になりますか?」
- バイアス破壊: 「この案の最大の弱点は何だと思いますか?」
- パラフレイズ: 「それを別の言い方にすると?」で角度を変えさせる
- 煽動: 「このまま進めると全員が後悔する可能性もありますが、本当にいいですか?」と前提を揺らす
A-3. 議論が紛糾して収拾がつかない
まず確認すること
- 対話と議論が混在していないか → 今は「理解し合う時間」か「決める時間」かを明示する
- 見えない前提のズレが原因ではないか
やること
- 前提を補足する: 「いったん確認ですが、そもそも何を基準に判断していますか?」
- 未定義の頻出ワード に注目する:「”良い”って、具体的にはどういう状態のことですか?」
- 場の目的をリマインドする: 「今日のゴールに立ち返ると、この論点は今決めるべきことですか?」
A-4. 雑談ばかりで本題に入れない
やること
- 開始5分 を意識する:冒頭で「今日考えたいこと」を予告しておく
- 注意を引く技術: 数字や事実をひとつ提示して切り替える(「先週の数字を見たんですが」)
- 余白 を使う:すべて説明せず、「ここが気になっていて」と含みを持たせて引き込む
B. 相手の本音・深い考えを引き出したいとき
B-1. 表面的な回答しか返ってこない
やること
- フカボリモード に切り替える
- 素人質問: 「初歩的な質問なんですが、なぜそう思うんですか?」
- ルーツ発掘: 「そう考えるようになったきっかけって何かありますか?」
- 真善美: 「それは”正しい”からですか? それとも”美しい”からですか?」
- 学習者の姿勢 をとる:教える側に立たず、「教えてほしい」というスタンスで聞く
B-2. 本音を言ってくれていない気がする
まず確認すること
- 心理的安全性があるか → なければ、問いの技術以前の問題
- 自分が「正解を持っている人」として見られていないか
やること
- 共感 から入る:「自分も正直迷っていて」「これ難しいですよね」
- ハードルを下げる: 「批判じゃなく、直感でいいので」
- ポジティブなフィードバック: 少しでも出てきた意見に「それ面白いですね」と反応する(内容でなく姿勢を肯定)
B-3. 相手のこだわり・価値観を知りたい
やること
- こだわりの芽 を探す問い:「この仕事で”ここだけは譲れない”と思うところは?」
- ルーツ発掘: 「それを大事にするようになった原体験ってありますか?」
- 意味づけ を聞く:「あなたにとって、この仕事はどういう意味がありますか?」
- 1on1 で時間をかけて聞く(会議の場では出にくい)
C. チームの発想を広げたいとき
C-1. アイデアがマンネリ化している
まず確認すること
- 判断の自動化が起きていないか → いつもの思考パターンで処理していないか
- 認識の固定化が起きていないか → 「うちの業界ではこうだ」という前提に縛られていないか
やること
- ユサブリモード の問い
- 仮定法: 「もし競合がこの分野から撤退したら、何をしますか?」
- パラフレイズ: 「これを”サービス”じゃなくて”贈り物”だと考えたらどうなります?」
- バイアス破壊: 「”コストが高い”という前提は本当ですか?」
- 凝り固まった発想をほぐす 問い:「小学生に説明するとしたら、どう言いますか?」
- 比喩法・擬人法 を使う:「この商品が人間だとしたら、どんな性格ですか?」
C-2. 目的を見失っている(手段への没頭)
やること
- 場の目的 に立ち返る:「そもそも、誰のために何をしようとしていましたっけ?」
- 見たい光景 を問う:「半年後にどうなっていたら”やってよかった”と思えますか?」
- 目的の形骸化 を指摘する:「この会議、いつから”報告するだけ”になりましたか?」(ただし信頼関係が前提)
C-3. 新しい問題を発見したい
やること
- 問題を発見する ための問い:「今、見て見ぬふりをしていることは何ですか?」
- 素人質問: 「当たり前だと思っているけど、実は変なことってないですか?」
- 観察 を促す:「最近、お客さんの様子で気になったことはありますか?」
D. 問いかけを設計する(事前準備)とき
D-1. ミーティングの問いを事前に用意したい
手順
- 場の目的 を言語化する:「この場で何が起きれば成功か」
- 見たい光景 を描く:「終わったときにどんな状態になっていたいか」
- 未知数を定める: 「まだわかっていないこと」「明らかにしたいこと」を特定する
- 方向性を調整する: フカボリ(深める)か、ユサブリ(揺らす)か決める
- 制約をかける: 自由すぎず、考えやすい枠を設計する
- 谷型か山型かのプロセス を選ぶ
- 谷型:まず拡散→収束(アイデア出し向き)
- 山型:まず収束→拡散(課題特定→解決策探索向き)
D-2. 問いの言葉を磨きたい
レトリックの引き出し
- 焦点を強調したい → 誇張法(「これは存亡の危機かもしれません」)
- 印象を残したい → 倒置法(「大事なのは、スピードじゃない。方向です」)
- 具体性を出したい → 列挙法(「例えば価格、デザイン、使いやすさ、どれが最優先?」)
- 対比で際立たせたい → 対照法(「短期の利益か、長期の信頼か」)
- イメージを広げたい → 比喩法(「このプロジェクトを料理に例えると?」)
- 親しみを出したい → 擬人法(「このデータが話せたら何と言いそう?」)
- 感覚に訴えたい → 共感覚法(「この空間の”温度”はどのくらい?」)
- 柔らかく伝えたい → 婉曲法・緩叙法(「悪くはないと思うんですが」)
D-3. 1on1の問いを準備したい
やること
- 相手の個性を引き出す 問いを軸にする
- こだわりを尊重する: 前回話してくれたことを踏まえて問う(リマインド)
- 観察メモ を事前に見返す:最近の様子・変化・気になる発言
- フカボリとユサブリ を両方用意しておき、相手の状態で使い分ける
E. 問いかけた後の対応
E-1. 問いかけたが反応が薄い
やること(足場かけ)
- 前提を補足する: 「つまりこういう背景があって聞いているんですが」
- 意義を補足する: 「なぜこれを聞くかというと」
- 手がかりを渡す: 「例えば自分はこう思っていて」と先に少し開示する
- 組み立て直す: 問い自体が悪かった可能性 → 言い方や切り口を変えて再投入
E-2. 予想外の答えが返ってきた
やること
- 問い返し として受け止める:自分のとらわれに気づくチャンス
- 学習者の姿勢 で深掘りする:「それは思いつかなかった。もう少し聞かせてください」
- 自分の見立てを修正する(三角形モデルで再解釈)
E-3. いい意見が出たがそこで終わりそう
やること
- ポジティブなフィードバック: 「今の話、すごく大事だと思います」
- チームとしてのこだわり に昇華させる:「今の視点、チーム全体の方針にできないですかね?」
- 次のアクションにつなげる:「では、それを踏まえて次に何をしましょうか?」
F. 自分自身を点検するとき
F-1. 自分が孤軍奮闘している気がする
点検ポイント
- 直接的な要求(「もっと主体的に」「意見を言って」)を繰り返していないか
- 相手を受動的な態度にさせる問いかけをしていないか
- 他力を引き出す 発想があるか → 自分がすべてやる必要はない
切り替え方
- 孤軍奮闘の悪循環を自覚し、チームワークの好循環の入口(良い問いかけ)に戻る
F-2. 自分のとらわれに気づきたい
やること
- 4つの現代病 を自己チェックする
- 判断の自動化:考えずに処理していないか
- 関係性の固定化:「あの人はこう」と決めつけていないか
- 衝動の枯渇:自分自身の「やってみたい」が減っていないか
- 目的の形骸化:手段が目的になっていないか
- 固定観念 を疑う:「自分が”当たり前”だと思っていることは何か?」
F-3. ファクトリー型とワークショップ型、どちらで動いているか
判断基準
- 上から降りてきた正解を効率よく実行している → ファクトリー型
- 現場で問いを立て、試行錯誤しながら探っている → ワークショップ型
- 今の仕事はどちらが適切か? → VUCA的状況ならワークショップ型が必要
G. クイック逆引き一覧
| こういうとき |
やること/問い方 |
| 誰も話さない |
制約をかける・ハードルを下げる |
| 同調ばかり |
ユサブリモード・バイアス破壊 |
| 表面的な回答 |
フカボリモード・素人質問・ルーツ発掘 |
| 本音が出ない |
共感から入る・学習者の姿勢 |
| アイデアが出ない |
仮定法・パラフレイズ・比喩法 |
| 目的を見失った |
「そもそも」に戻る・見たい光景を問う |
| 問いへの反応が薄い |
足場かけ(前提・意義の補足、手がかり) |
| 議論が紛糾 |
前提のズレを確認・未定義語を特定 |
| 関係性が硬直 |
相手の個性を引き出す問い・こだわりを聞く |
| 自分が空回り |
孤軍奮闘の悪循環を自覚・直接要求をやめる |
| 衝動が湧かない |
遊び心をくすぐる・仮定法で想像させる |
| 会議の準備 |
目的→見たい光景→未知数→問いの設計 |