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チャットツールでは限度があります、そこで QWINCS の出番!

サマリー

背景

未だにチャットツールのみという悲しい現実

普段のコミュニケーションは エンジニアであっても チャットに頼っているのが現状でしょう。Slack や Teams などです。

チャットはわかりやすく、使いやすいですが、それだけです。対面口頭コミュニケーションの下位互換でしかないですし、その癖デメリットが多いです。たとえば通知が多い、ナレッジマネジメントやタスク管理ができない、チャンネルが乱立して混乱する、階層的かつ中央集権的でボトルネックが生じやすい、言及や参照がしづらい等です。

パンデミックが落ち着いた後、出社回帰が再燃しています。これも単にチャットツールしか知らないからです。コミュニケーションのあり方はツールで決まります。チャットしか使っていない人は、チャットのメンタルモデルから脱せません。

チャット以外のコミュニケーションツールはある

エンジニアの皆さんなら、すでにある程度は触れたことがあるはずです。

たとえば Wiki を読み書きした人は多いでしょう。GitHub で Issuses を日々書いているでしょうし、Issues にはコミュニケーションそのもののポテンシャルがあるわけで、GitHub は Discussions をリリースしました。Miro などデジタルホワイトボードを使う人もいるでしょうし、Google ドキュメントや Notion など同時編集型ノートもすっかり定着しました。

QWINCS

チャットへのとらわれから脱却するために、端的な概念をつくりました。

QWINCS です。これはアクロニムであり、以下の略となっています。

チャットは Chat に相当します。これ以外にも、あと 5 つの手段があるということです。

最後に、それぞれについてかんたんに整理します。

Q&A

たとえば Stack Overflow が相当します。

質問(Question)に対して、誰でも回答(Answer)を書き込むことができ、質問者がベストアンサーを決めます。コミュニケーションの大半は質疑応答に帰着できますから、優れた世界観と言えます。アンサー指向(Answer Oriented) と呼びます。

実はビジネスとしてはブルーオーシャンでもあります。企業レベルで、たとえばエンジニアのチームで使われている Q&A ツールを思い浮かべられますか?出来ないと思います。そのようなツールがまだ無いからです。

ですので、Q&A ベースのコミュニケーションをしたい場合は、他のツールを使ってフォーマットとファシリテーションで工夫しましょう。

Wiki

チャットよりも古い概念で、ブラウザでプレーンテキストで素早く編集できることや、ページ間をリンクでつないでネットワーク構造をつくれることが特徴的な手段です。wiki はハワイ語で「速い」を意味します。

実は Wiki の先進国は日本であり、特に Cosense はエンジニア界隈の歴史に残る素晴らしいツールです。どれだけ素晴らしいかは、Cosense のリンク記法が [] であることを見ればわかるでしょう。平凡な開発者は [[ ]] などとしてしまいますが、大胆に短くしています。サンプルを見たければ、日本語ですが私のページにお越しください

Wiki がいまいちだと考えている人は、単に昔の Wiki しか知らないからです。現代は色々技術も揃ってきて、かつての不便さも解消されつつあります。ぜひ現代的な Wiki を試していただければと思います。私は Cosense をおすすめしますが、他にもあるはずです。

ちなみに、Wiki は参加者全員に役立つナレッジを頑張ってつくるとの価値観があります。Wikipedia はまさにわかりやすいでしょう。これを ナレッジ指向(Knowledge Oriented) と呼びます。ですので、あまり個人的なことをたくさん書くのは好ましくありませんし、これを放置すると Wiki は形骸化します。皆にとって有益なナレッジを、皆で協力してつくらねばなりません。そういうわけで、実は少人数が適しており、Cosense も少人数での利用を推奨しています。

Issues

チケットと呼ぶこともできます。元々は BTS(Bug Tracking System)であり、Redmine、Trac、Backlog などが知られていますが、本質は違います。本質は 1-話題 1-ページ で管理できるという独立性であり、トピック指向(Topic Oriented) と呼びます。

ある話題 A について議論したければ、A のページに行けばいいのです。状態も管理できるのでタスク管理もできますし、メンションを撃って気づかせることもできます。

特に重要なのはクローズの概念で、用が済んだものを閉じることができます。何が終わっていて、何が終わっていないかも管理・可視化できるということです。

Notes

同時編集を行えるノートを指します。たとえば Notion、Google ドキュメント、Microsoft Word Online、Box notes、Dropbox Paper などです。

ノートは ギャザー指向(Gather Oriented) であり、皆で一つのノートに集まってコラボレーションする用途に適しています。発散的に書き込んでもらってもいいですし、テンプレートをつくっておいて埋めてもらうのも良いです。

その代わり、収束つまりは意思決定には弱いです。今のところ、意思決定者が自らの決定をサマリーとして書き、皆に読んでもらうようリマインドするくらいしか方法がありません。しかしながら、意思決定は難しいことではありません。最も難しいのはその前段階の、情報を集めきるところであり、ノートがまさに得意とするところです。ノートを知らない人は悲惨ですらあります。なぜなら、情報を集めるために、いちいち原始的に会議を繰り返すことになるからです。会議過多から抜け出せるかどうかは、ノートを使ってギャザー指向的にコラボレーションできるかどうかにかかっています。

今後は生成 AI により、「AI メンバーによる書き込み」も盛り上がってくるでしょう。ノートには今のうちにぜひ慣れておくことをおすすめします。それもただのドキュメント用途ではなく、ギャザー指向的なコラボレーションとして、です。

Chat

Slack や Teams などビジネスチャットを指します。

まずビジネスチャットとは、LINE その他単純なメッセージアプリとは違って部屋の概念があるものです。ワークスペース、チャンネル、スレッドなどですね。組織構造を反映するために、階層的に部屋をつくる機能があるわけです。これにゆえにビジネス用途にも耐えることができ、ビジネスチャットと呼ばれます。

ビジネスチャットは 時系列指向(Timeline Oriented) であり、メッセージを時系列に表示するだけです。人間にとっては一見するとわかりやすいですが、それだけであり、デジタルなコミュニケーションや非同期なコミュニケーションを行うには明らかに力不足です。ビジネスチャットから脱却しない限り、デジタル前提で、非同期も想定したコミュニケーションは行えません。

そういう意味で、ビジネスチャットからの脱却は CX(Communication Transformation)と呼ぶことができます。DX と同様、変革(Transformation)であり、根本からあり方を変えないといけないわけです。よくエンジニアは DX すらできない非エンジニアを下に見ますが、私に言わせれば、未だにビジネスチャットしか使えないエンジニアも同じ穴のムジナです!

Sticky boards

名前付けは強引ですが、デジタルホワイトボードを指します。たとえば Miro です。

無限に広がったボード上にいくらでも付箋を貼れるという世界観ですが、付箋以外にもオブジェクトを扱えます。それこそパワーポイントのようなビジュアルな成果物もつくれます。

しかし本質は資料づくりではありません。デジタルホワイトボードは 空間指向(Space Oriented) であり、建物や住所が存在する現実世界と同じような、空間的な世界観です。ゲームが好きな人はマインクラフトを思い浮かべてください。マイクラは 3 次元ですが、デジタルホワイトボードは 2 次元です。

大胆に言えば、デジタルホワイトボードは 2 次元的なバーチャルオフィスです。Miro の場合は、アバターではなくただのカーソルですが、見た目に騙されないでください。本質は空間指向であり、バーチャルオフィスです。デジタル上で一緒に過ごすものであって、系統としては Gather のようなバーチャルオフィスツールだと思ってください。

おわりに

ビジネスチャットから脱却するために、QWINCS という形で 6 つの手段を整理しました。

仕事のボトルネックはコミュニケーションであり、コミュニケーションはツールが司ります。チャットしか使えない人は、それ自体がボトルネックになるわけです。エンジニアも例外ではありません。だからこそ、QWINCS を参考にして、チャットからの脱却を目指してみてください!