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フルリモート

概要

フルリモート(Full Remote) とは、常にリモートワークで過ごすことです。

出社や出張は無いか、あっても稀です。ある場合でも定期性は無く、必要に応じて計画されます。頻度に指定はありませんが、 四半期に一回未満 が目安と考えてください。これより高い頻度で出社や出張がある場合、フルリモートではありません。

勤務先は自宅である必要があります。会社が許すならカフェでもコワーキングスペースでも構いませんが、いずれにせよ 働く場所を完全に自分で選べる必要があります。これを満たせない場合はフルリモートではありません。たとえば最寄りのサテライトオフィスへの出社を命じるパターンがありますが、これはフルリモートではありません(ただの分散拠点です)。

メリット

フルリモートのメリットはプラスを得るというよりも、マイナスを減らせること にあります。

同じ時間帯に出社させることは極めて暴力的です。冷静に考えてほしいのですが、これだけ技術と方法が整った現代で、なぜ時間も場所も拘束されねばならないのでしょう?この感覚を理解できていないことに私は危機感をおぼえます。日本に限らず、欧米もアジアも BRIC も世界的に例外ではありません。

単一の時間と場所へのとらわれから解放する手段がフルリモートなのです。フルリモートにより、まず私達は移動や関係義務から解放されて、圧倒的に時間的・精神的・体力的余裕が生まれます。この分を仕事に費やせます。当然ですが仕事には勉強、練習、内省、休息も含みます。

デメリット

フルリモートのデメリットは次の三点です。

これらをフルリモートで満たすのは難しいです。2: のサボタージュについてはカバーできますが、1: と 3: はどうしようもありません。

ですので、実際は 働き方の多様性(Workstyle Diversity) を受け入れねばなりません。つまり、出社する人とフルリモートワーカーが共存できなくてはなりません。そうなると、全従業員はデフォルトでリモートワークの術を習得する必要があります。オンサイトとリモートとの情報格差などあってはならないわけです。

実装

フルリモートはどのように実装すればいいでしょうか。

結論を言うと、「コミュニケーションツール」と「ライティングツール」と「シームレス・ミーティングツール」です。

コミュニケーションツール

まずはコミュニケーションツールです。先日 QWINCS について書きましたが、チャット以外のツールも使わねばなりません。

皆さんは QWINCS のうち、いくつを知っていますか?また使っていますか?エンジニアであっても、普段のコミュニケーションツールはチャットだけだという人は多いですが、残念なことです。これはプログラミング言語で言えば「C 言語しか書けません」と言っているようなもので、昔ならさておき、現代では時代遅れにも程があります。危機感を持ってください。

フルリモートは出社をしないわけですから、その分リモートでコミュニケーションを済ませねばなりません。そのためにはチャットだけでは明らかに力不足です。料理するときは多数の小さな道具を使い分けますし、エンジニアも普段は小さなコマンドを使い分ける(KISS 原則)はずです。コミュニケーションも同様 なのです。そのためには様々なコミュニケーションツールを、純粋に知っておくこと、また使えることが肝心なのです。

正直言って、QWINCS くらいは当たり前に使えるようにしたいです。開発プロセス中の限定的な利用じゃないですよ。普段の日常的なコミュニケーションの用途で使えるようにしたい という意味です。

ライティングツール

次にライティングツールです。

エディタでも IDE でもウェブアプリでも構いませんが、とにかく言語を読み書きするための手段です。フルリモートでは対面で非言語コミュニケーションをする代わりに、リモートで言語でコミュニケーションをします。文字通りのリテラシー――言語の読み書き能力が絶対に必要です。

そしてそれを支えるのがツールです。私達エンジニアはすでにコードを書くために、エディタを含めとことんこだわり抜いているはずです。コミュニケーションも同様 です。言語でコミュニケーションをするために、自然言語を読み書きするツールにこだわらなくてはなりません。

もう少し具体的に言えば、プレーンテキストの読み書きと共有のスキルです。Excel や Word や重たいウェブアプリを使わず、プレーンテキストで書けるでしょうか。読めるでしょうか。Markdown はわかるでしょうか。文章における「見出し」や「リンク」や「コードブロック」の概念はわかるでしょうか。そもそも段落と箇条書きと空行は使い分けられるでしょうか。そもそもタイピング(あるいは音声入力とその修正でも良い)はできるでしょうか、たとえば 1 日 5000 文字以上打てるでしょうか。

ここで文章の作法や言語化の素養について取り上げるつもりはありませんが、ボトルネックは常にツールです。言語の読み書きが苦手あるいは遅い人は、十中八九ツールが未熟です

キラークエスチョンを一つお出しします。

「コーディングではなくライティングの用途で、愛用のエディタはあるでしょうか?」

ない場合、おそらくあなたはライティングに関して未熟です。フルリモートはできないでしょう。ライティングについても、コーディングと同等にこだわってみてください。

シームレス・ミーティングツール

そして シームレス・ミーティング のツールです。

シームレス・ミーティングとは、その名のとおりシームレスに、つまりはスムーズにミーティングに移行できる様を指します。たとえば Slack にはハドルミーティングがあり、ワンクリックで会話を開始できます。このレベルで滑らかに開始できるものを指します。また軽量バーチャルオフィスにも同様の機能があります。

フルリモートでもできるだけミーティングは減らしたいのですが、現実的にはそうはいきません。だからこそ、ミーティングを開始する手間は出来るだけ落としたいのです。

※だからといって、ペアプログラミングやモブプログラミングのような高密度な働き方はおすすめしません。こういった働き方は「働き方の多様性」を削ぐからです。無論、ミーティングの一環として、必要なときに一時的に行うのは良いです。