この記事の TEA(Target、Effect、Action)を示します:
採用は未だに一方的です。募集側が求人票(より形式的になるとジョブ・ディスクリプション)を書き、これと応募者をマッチングさせます。マッチングルートは「採用サイトに掲載された分からの応募」だったり「募集側からのアプローチ(スカウト)」しますが、ともかく 求人票という「定義」が存在します。この定義とのマッチングを見る、との構図は変わりません。
いつの時代も人材不足が叫ばれますが、その主因は明らかで、採用の仕方がこのように一方通行だからです。
アジャイルやリーンスタートアップに取り組まれた人は痛感しているでしょうが、事前の計画や設計が上手くいくことはほぼありません。だからこそ素早い仮説検証が重要とされていますし、今も生成 AI によりプロトタイピングが加速しています。採用も同じことで、募集側が事前につくった定義が正解であることなどまずない のです。大胆に言えば、ジョブ・ディスクリプションも仮説にすぎないのです。
さて問題です。仮説検証的でない、ウォーターフォールのようなヘビーなやり方で上手くいくでしょうか。答えはもちろんノーです。人材不足になるのも当然のことです。流動性の激しい欧米はまだマシですが、正社員の解雇がほぼ不可能な日本ではそれはもう悲惨です。
この問題を軽減する方法はシンプルです――双方向にするだけです。具体的には 「仕事を探している側」が自己アピールを書き、それを「人材を欲しがっている側」が読む との逆方向を追加します。
この逆方向の取り組みは色々ありますが、今回は HireMe タグを紹介します。
HireMe とは、その名のとおり「私を雇ってください」とのメッセージを込めたものです。タグと書きましたが、やり方はタグに限らず色々あります。
#HireMe タグをつけて投稿するでしょう#HireMe チャンネルをつくるでしょうエンジニアの皆さんなら、やり方は色々思いつくでしょうし、すぐにつくれると思います。現実的に HireMe を導入する場合、リードを行うのはエンジニアリングマネージャーでしょう。組織規模が大きいとスタッフエンジニアが良いと思います。
ともかく、重要なのはただ一点で、個人から自己アピールする との発想です。
メリットは一つで、マッチングの機会を増やせること です。一方通行の採用よりも桁違いにマッチングの機会が増えます。もちろん、機会が増えれば増えるほど出会いも増えますし、流動性も上がります。
言い換えると、雇用やアサインの 仮説検証 を実現できるようになります。双方向通信が通信の世界を変えたのと同じです。アジリティが上がります。
ここで、主な議論を Q&A 形式で整理します。
Ans: もちろんアリです。
むしろ、コンテキストとして「仕事を探している側の情報(HireMe)」だけでなく「人材を欲しがっている側の希望や状況」も用意した上で、AI に評価してもらうのが良いと思います。
セレンディピティというと大げさですが、意図しない出会いや思わぬダイヤの原石を大事にしたいのです。どうせ後半では我々人間がレビューするのですから、まずは可能性を広げておきたい。人間離れした生成 AI はまさに役に立ちます。
Ans: そのうち決まってくるでしょう。
HireMe は、私がソフトスキル・エンジニアとして開発した概念です。皆さんに使ってもらって、広めてもらうことを期待します。インフルエンスの力を持つエンジニアに期待します。オープンソースのように、そのうち標準化の動きが出てくるでしょう。
私としては、生成 AI による多様化かつ省力化が良いと思っています。そうなってくると重要なのは、人間向けの形式よりも情報量です。Markdown で書く程度を守ったら、あとはどれだけ情報を込められるかにかかっています。
Ans: 大した問題にはならないと思います。
HireMe は個人に結びつくものなので、誇張や嘘を書くような「信用できない人」はすぐに淘汰されます。それがわかっているので、HireMe を書く側も無茶はしません。
Ans: 良いです!むしろ推奨します!
前でも少し述べましたが、セレンディピティやインスピレーションを大事にしたいのです。別の言い方をすると、採用もまたクリエイティブな営みである(というより、HireMe によりクリエイティブになる) ということです。
ぜひ HireMe を書く側は思う存分に書いてください!HireMe を読む採用側も、常識にとらわれず、どう生かせるだろうかと頭を柔らかくして考えてみてください。もちろん、後の会話や選考の場でも、遠慮なく議論しましょう。
きっと、従来の一方向の採用では無かった体験がもたらされます!