ここで インフルエンス とは、具体的な影響を与えることを指します。売上が上がった、工数を減らした、顧客や社員の n 人に採用してもらえた等。
私は声を大にして言いたい――インフルエンスはエンジニアの責務ではない、と。
エンジニアリングマネージャーや上級エンジニアを除き、現場のエンジニアの責務はタスクに取り組むことです。トップダウンまたは合意形成で決めたタスクに取り組むことであり、したがって エンジニアの責務はタスクの完遂まで です。
そのタスクがどれだけインフルエンスを与えるかは、タスクを定義するマネージャーや上級エンジニア、あるいは経営者の責務のはずです。
皆さんの目標設定はどうしてますか。業績評価はどのように行われますか。
たぶん、高確率でインフルエンスに関する目標も組み込まれているでしょう。そして評価を下されます。もちろんインフルエンスなんて専門外ですし、権威を持たないエンジニアがこなすなんてそもそも無理ですし、達成できなければ低評価になります。最悪解雇の対象にすらなります。このような悲劇を避けるために、エンジニアなのにインフルエンスの活動に従事しなければならなくなります。アピールせよ、といわれたりしますね。政治ともいいます。
二点あります。
まずは、とにかく目標設定にインフルエンスを入れないようにします。
そもそもインフルエンスは相応の権威と権限を持つ役割の仕事です。それを与えられているエンジニアリングマネージャーや上級エンジニアの仕事であって、現場レベルのエンジニアがやることではない。にもかかわらず、目標に入れてくるのは放棄ですらあります。
主張してください。インフルエンスではなくパフォーマンスで勝負してください。
ここでパフォーマンスとは能力と成果のことです。たとえば、あるモジュール M の機能追加と品質に責任を負うエンジニアがいたとして、この人の責務は M の機能追加と品質確保までです。M がどれだけインフルエンスを与えたか、与えねばならないか、といったことは責務ではない。それはマネージャーや上級エンジニアが定義または調整することなのです。
加えて、インフルエンスはエンジニアリングマネージャーや上級エンジニアの責務である、と伝えてください。みんなでしつこく伝えてください。
ビジネスですのでインフルエンスは必要です。誰かがやらねばなりません。インフルエンスを行うのは、相応の権威と権限を持つ役割だけです。仮にインフルエンスを行うとの発想がなかったとしても、「持つ者」がやらなければなりません。
もし、どうしても彼ら管理職や上級職がやりたがらないのであれば、できる人に委譲するよう進言してください。もちろん権威と権限もセットで。これは通常飛び級レベルの抜擢になります。