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生成AIの出力をそのまま提出する

サマリー

背景

重要なのは形式よりも中身

私達はなぜか資料の形式にこだわります。プレーンテキストの箇条書き 5 行で済むものを、あれこれと太らせたり着飾らせたりするのです。その結果として、皆さんもよく見かけるであろうボリューミーでノイジーな文書やスライドができあがります。

近年ではブラウザだけで読み書きを完結させるパターン――ノートや Wiki やチケットといったページにラフに書いたメモを提出する機会も身近と思いますが、まだまだ通用しないことも多い。たとえばマネージャーや顧客に見せるときは、しばしばフォーマルな形式が要求されるでしょう。下手をすると、フォーマルな形式をつくれないというだけで無能の烙印を押されてしまいます。

文脈にもよりますが、正式な提出や発表でもない限り、形式は過剰です。重要なのは中身であり、中身を最低限伝えられたらそれでいいのです。

形式にもパラダイムがある

資料の形式にもパラダイムがあります。

第一パラダイムは Formal Style で、たとえば形式的なパワーポイントや文書が相当します。

第二パラダイムは Rough Style で、たとえばノートアプリ、Wiki、Markdown で書いたメモなどが相当します。利便性を考えるなら、ブラウザから HTML として読めて、かつページも独立して URL が備わっている形態がいいですが、エンジニアなど慣れた仲なら Markdown ファイルでも可能です。

しかし、パラダイムはここでは終わりません。

Mechanical Style

Mechanical Style とは資料形式の第三パラダイムであり、たとえば生成 AI による出力や会話ログが相当します。

つまり Mechanical Style で資料をつくるとは、生成 AI の出力をそのまま使うということです。出力をそのままチームなり、上司なり、顧客に提出します。

どちらかと言えば 生成 AI の会話ログを提出する と考えてください。会話ログを除いた成果物そのものだけでなく、それを生成するに至った指示も資料の一部だからです。

メリット

Mechanical Style により、資料を用いた意思決定をより加速させることができます。

Q&A

よくある疑問に答えます。

Q: 生成 AI の結果は信用できないのでは?

Ans: 人間の結果も信用できません。

基本的に人間だろうと、生成 AI だろうと、結果を絶対的に信用しなければならない場面は少ないです。あるいは、そういう文脈であるなら、もちろん人間による確認や洗練のプロセスを入れればいいだけです。

私達はエンジニアであり、デスクワーカーです。仕事の大半は「情報という名のヒント」を上手く使うもの であるはずです。情報はヒントにすぎず、その正確性やクオリティは必ずしも重要ではない。より重要なのはヒントの量と幅(種類の豊富さや多様さ)、そして何よりそれらを踏まえて、私達自身が具体的な意思決定を下すことです。

資料なんてものは、ある程度のクオリティをさっさとつくって提出すればいいのです。読み手も、情報という名のヒントだと割り切って、さっさと読んで活用すればいいのです。生成 AI は、精度の高さを除けば、すでに人間離れしています。情報という名のヒントをつくるという意味では、もはや人間は敵いません。人間が自力でつくるよりも、生成 AI と一緒にコラボレーションした方がはるかに高速かつ高品質です。

Q: Mechanical Style の資料を読むためには何が必要?

Ans: 意思決定と慣れです。

まずは意思決定です。言われたことだけをする受身人間ではなく、情報という名のヒントを活用して「自分で」何かを決断し、行動する、との前提が必要です。意思決定できない人は、Mechanical Style の資料は読めませんし、読んだところで「じゃあ何をすればいいの?」と当惑するだけです。

このような人間(私は Reactive person と呼んでいます)は、単純な仕事を命令に従ってやらせるのに便利ですが、それ以外ではポンコツですし、おそらく第一パラダイムすら越えないでしょう。相手にするだけ無駄です。おとなしく第一パラダイムに従うか、どうしても嫌なら離れましょう。

あとは慣れです。ナレッジ・アーキテクトとして断言してもいいくらいですが、私達は 思っている以上に形式にとらわれています。箇条書き 5 行で済むのに、それを受け入れようとせず、何倍にも何十倍にも膨らませたリッチな資料を好みがちです。これは特に合理的な経営者クラスの人達であっても例外無く当てはまります。

だからこそ 意識的に Mechanical Style な資料に触れることで、慣れていかねばなりません。といっても単純な話で、単に生成 AI を使う経験を増やしてください。ChatGPT のようなチャット型で構いません。一つの目安としては 検索エンジンへの問い合わせよりも AI に問い合わせる方が多い かどうかが挙げられるでしょう。それくらいメンタルモデルが変化したのであれば、Mechanical Style にも慣れていると思います。

Q: Mecanical Style でつくった資料が長ったらしくて、読むのが大変です

Ans: プロンプトを工夫してください。

それは Mecanical Style が悪いのではなく、資料の作り手(のプロンプトエンジニアリング)が下手なだけです。資料の作り方の問題にすぎませんので、作り方を変えてください、学んでください、鍛えてくださいという話になります。