バーチャルオフィスの必要性が謳われています。理由は単純で、リアルとバーチャルのバランスを保てるからです。リアルで集まるのは生活上の負荷が高いです。フルリモートやフルフレックスでは、上手く集まれずにエンゲージメントが高まりません。両者の間を取るのに、バーチャルオフィスは良い選択肢です。つまり バーチャル上で 集まるとの塩梅を取っています。
しかしバーチャルオフィスツールにも難点があります。ツールの動作が重たかったり、エンタープライズレベルのセキュリティを確保できなかったり、また操作や順応が純粋に難しかったり、仕事への接続もしづらかったりします。
たとえば世界的に有名なマイクラを考えましょう。マイクラを仕事の動線にできるでしょうか?動線というのは、普段多用している場所のことです。おそらく皆さんは Slack や Teams といったビジネスチャットを使っているはずです。マイクラに移行できるか?と考えてみてください。完全移行は非現実的なので、チームやプロジェクト内のみで結構です。答えはおそらく「いいえ」でしょう。
バーチャルオフィスの恩恵は、もう少し軽量なツールでも可能です。
たとえば Miro は、実はバーチャルオフィスと言えます。世界はボードですし、アバターもただのカーソルですが、バーチャルな世界でリアルタイムにやりとりできます。れっきとしたバーチャルオフィスです。あるいは Google ドキュメントや Box Notes、あるいは Notion や Cosense でもいいですが、リアルタイムに共同編集可能なノートもバーチャルオフィスです。ただ世界がノートで、アバターがただのカーソルであるというだけです。
また、まさに軽量なバーチャルオフィスに当てはまる製品もあります。日本の製品ですが、Remotty や Teracy です。Remotty はチーム全員の顔社員を並べた UI であり、顔写真は PC カメラにより 2 分ごとに更新されます。Teracy はスクロール不要な二次元の部屋上に各自のアイコンを表示、今何をしているかを自動で表示します(クライアントにエージェントをインストールし、アクティブウィンドウを監視することで特定します)。いずれもワンクリックですぐに会話を開始できるシームレスな会話体験を持っています。ただし本記事では割愛します。
このような軽量なバーチャルオフィスを 軽量バーチャルオフィス(Light-weight Virtual Office) と呼びます。
軽量バーチャルオフィスのメリットは、次のとおりです。
バーチャル上で集まる(Virtual Gathering)体験を現実的に実現できるため、リアル派またはバーチャル派のいずれかに偏る必要がなく、人材の多様性を保ちやすいこと。
軽量バーチャルオフィスにはノート型とボード型があると書きました。
では具体的に、これらを普段からどのように使っていけばいいでしょうか。私がおすすめするのは 共同分報(Daily Park) です。一言で言えば、
という営みです。
以下、順を追って説明していきます。
まず日本では Slack を使った 分報(Times Channel) の文化があります。一人一チャンネル(#xxxx-times)をつくって、X のようにあれこれポストするのです。誰でも見に来れますし、参加してコメントもできます。
欧米の方は理解しづらいかもしれませんが、日本はハイコンテクストな文化であり、率直なコミュニケーションが苦手です。意見も出づらいです。そこで各自のスペースをつくって、自由に書いてもらうことで、出してもらうのです。
単純な話、7 人チームの場合は 7 つのチャンネルが乱立することになります。マネージャーを覗くと 6 人です。マネージャーは 6 人分のチャンネルすべてに参加して、こまめにチェックしなければなりません。大変ですね。
これの進化系が、言うまでもなく X ですが、チーム内の範囲で X のような SNS を実現するツールはありません。さてどうしたものでしょうか。
軽量バーチャルオフィスの出番です。
次のようにします。
以下は擬似的な例ですが、🐶さん、🐱さん、🐏さん、🐵さんの 4 人のスペースがあります。
20251123.md
# 🐶
(🐶さんはここに何でも書き込む)
# 🐱
(🐱さんはここに何でも書き込む)
# 🐏
...
# 🐵
...
コメントを促進したいなら箇条書きが良いです。箇条書きは行指向的であり、行単位で割り込みできるようになるので便利です(★の部分)。
# 🐶
- 🐶さんのコメント
- 🐶さんのコメント
- 🐶さんのコメント
- 🐱さんのコメント ★
- 🐶さんのコメント
- 🐵さんのコメント ★
- 🐶さんのコメント
各行でも「誰が書いたか」が知りたいので、絵文字を割り当てましょう。以下は一例です。🐶さんのエリアでありながらも、どの行で誰が発言したかが一目瞭然です。
# 🐶
- This is the worst, I forgot to bring my lunch...
- 🐱 Oh my God
- 🐏 How about we have lunch together today?
- 🐶 Sounds good
- 🐱 Nice, can I join too?
- 🐏 Of course!
- I see potential in ChatGPT Atlas
- ......
いかがでしょうか?
このやり方なら、毎日デイリーエリアが動線になります。みんなが自然と集まり、各々書きたいことを書いて、それを皆が読むような世界観になります。リアルほど拘束が強くありませんし、バーチャルのように繋がりがないわけでもありません。リアルタイムな編集という形で各自の存在感と情報がわかる程度の塩梅であり、静かすぎず、うるさすぎない、バランスの良さだと考えます。
もちろんテキストとして残っているので、生成 AI に与えて洞察を導くこともできます!
軽量バーチャルオフィスとして、ノートやボードをバーチャルオフィスとして使う考えを紹介しました。特にノートによる例を深堀りしました。