Rapid Q&A
サマリー
- 社内の Q&A は数の力で解決しましょう
- 全社員が参加するチャットチャンネルを一つつくり、誰でも質問・回答できるようにします
- これだけで解決します。ね、簡単でしょう?
- 細かい実装や運用は手強いですが、どうとでもなります
- ただし大企業の話です。従業員は少なくとも 1000、できれば 10000 以上欲しいです
背景
Q&A は未だに開拓されていないジャンル
コミュニケーションツールとして QWINCS があります。Q&A、Wiki、Issues(Ticket)、Notes、Chat、Sticky boards(Digital Whiteboard)の略です。
この中で唯一、ビジネスレベルで成功していないのが Q&A です。Q&A というと Quora、エンジニアであれば Stack Overflow を思い浮かべるでしょうが、to C 向けのサービスにすぎません。たとえば to B 向けに、社内に導入するとのジャンルはまだありません。
Q&A がなぜ難しいかというと、「質問」と「それに回答できる者」とのマッチングが難しいからです。事実上、多くのユーザーを集められるインターネット上で、多くの人が回答できる「くだらない」ネタでインプレッションを稼ぐことになります。ビジネスモデルとしても広告に頼ることになるので、なおさらです。
しかし Q&A は強力……
しかし Q&A は強力なソリューションです。質問に対する回答がぶら下がり、質問者がベストアンサーを選ぶことでクローズする――とのモデルはシンプルながら明瞭です。この概念で社内の、多くの社員を救えることは間違いない。ただマッチングが難しいだけです。
この難題を解決するために、私はシンプルな解を出しました。
Rapid Q&A
Rapid Q&A とは、全社員が参加する Q&A チャンネルです。
ポイントは三点あります。
- 単一のチャットチャンネルに 全社員を 参加させる
- 誰でも、いつでも、何でも質問してもいいし、回答してもいい
- 質問は重複しても良い
- 過去に行われた質問かどうかは関係がありません
- わからないことがあったらとりあえず質問すればいいですし、聞いても反応がなかった質問もまた投稿していい
これだけです。これだけで全社員という数の力に頼った Q&A を実現できます。
なぜ実現できるか
なぜかいうと、このチャンネルは面白くなるかです。
全社員の質問と回答が集まる唯一の場所であり、流速も速いので 気になって覗きます。質問の大半は(人によっては)初歩的なものであり、答えたくもなります。そうして盛り上がって、さらに面白い場所になります。むしろ 仕事をサボって入り浸ってしまうのを警戒したいくらいです。
より具体的な実装
Rapid Q&A を始めるのはかんたんです。Slack にせよ、Teams にせよ、Q&A チャンネルを一つつくって、全従業員を参加させればいいだけだからです。そこさえクリアできれば、あとはどうとでもなります。エンジニアの皆さんならなおさらです。
とはいえ、無駄に遠回りするのも馬鹿らしいので、論点を置いておきます。
- Q: Rapid Q&A のチャンネルの通知がノイジーです
- Ans: 各自の設定で工夫してください。別にミュートしてもいいです
- ミュート等の設定を知らない社員がいるのなら教育してください
- Q: チャンネルから勝手に抜けた人はどうすればいい?
- Ans: 放っておいてください
- チャンネルが面白くなってきたら、どうせ後から入ってきますし、たぶん面白くなるのでどうせ入っています
- Q: 質問する内容に制限は設けるべき?
- Ans: はい
- すぐに答えが得られるような質問に絞ってください。何らかのトラブルシューティング、不明な用語、設定や設計や実装上の疑問点、あるいは社内固有の質問などです
- 逆に Quora のように議論が盛り上がるようなトピックはダメです。DEV Community でいう #discuss のようなトピックもいけません。Rapid Q&A はあくまでも質問者の議論を迅速に(数の力で)解決するものなので、議論や対話やエンターテイメントは要りませんし、むしろ排除するべきです。
- モデレーターが欲しいところです。Rapid Q&A が成功するかどうかは、実はここを死守できるかどうかにかかっています
- Q: ベストアンサーはどうやって実現する?
- Ans: 実装は色々考えられます
- たとえば「質問者が✅のようなリアクションをつける」、かつ「Bot などで “✅のついたメッセージ” をアーカイブし、元のメッセージは削除する」などです
- この感覚はわかりづらいかもしれませんが、Rapid Q&A の目的は 質問者が迅速に回答を得ること ただ一点です。質問と回答というナレッジが貯まる、なんてことは考えません
- Q: 社員の規模はどのくらいを想定する?
- Ans: 少なくとも 1000、できれば 10000 以上欲しいです
- まず組織力学として、1000 人未満の会社だと「Q&A チャンネルを見る暇すらないほど忙しい人」がマジョリティになります。Rapid Q&A は機能しません。一方、10000 人に近づくほどの規模になると、組織に余裕もでてきて、むしろこのようなチャンネルがあった方が全体最適が働きやすくなります
- ただし、テキストコミュニケーションに慣れた組織(たとえば数日くらい一度もミーティングせずにテキストだけで仕事を進められる組織)であれば、数百人以下でも機能します