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お前はまだ本当のリトリートを知らない

背景

現状のビジネス・リトリート

ビジネスにおけるリトリートをご存知ですか。集中検討合宿またはリラックス多めの社員旅行を意味し、普段フルリモート寄りの働き方をする組織が、半年に一回くらいの頻度で集まるものです。

細かいやり方は組織次第ですが、唯一共通するのが 常にメンバーと一緒に過ごす ことです。通常は何らかのカリキュラムが組まれて、皆で部屋に集まってワークをします。あるいは自由時間でも他メンバーとの交流、会話、議論を行わねばならないとの圧があります。

たしかに非日常的な空間でリフレッシュできますし、一時的に仕事から離れてリラックスできますし、メンバーとの関係も深まるとは思いますが、それだけです。最も大切なことを忘れています。

本当のリトリートを取り戻したい

本来リトリートには「撤退」「避難」「隠居」といった意味合いがあります。宗教的には修行のために寺院や山中に出向くことを指します。

これらの本質は孤独な静寂 です。まず孤独でなくてはなりません。メンバーとの関係を育むことも大事ですが、リトリートはそんなしょうもない営みではない。次に、静寂である必要があります。この場合、静寂であるとは、仕事やプライベートから完全に離れていることです。たとえば 割り込みはありませんし、もちろん合宿や旅行のようなカリキュラムもありません。リトリートの価値は、普段ではほぼ手に入らないであろう、この二つを手に入れるところにあります。

真のリトリート

真のリトリート(True Retreat) とは、孤独な静寂を手に入れるための社員イベントを指します。

泊まり込みのイベントです。最低でも一泊二日、できれば二泊や三泊以上を確保します。

このイベントでは一切のしがらみがありません。仕事は一切しなくていいですし、従来のリトリートと違ってカリキュラムを組まされて、やりたくもないワークや交流を頑張る必要もありません。もちろんやりたい人は各自でやればいいですが、少なくとも強要はしないですし、むしろ非推奨です。では、何をするかと言うと、ただただ一人でくつろぎます。同時に、ただただ一人で内省をします。自分の仕事と、組織と、人生と向き合うのです。手段は問いません。仕事の PC を持ち込んで書き物をしてもいいですし、もちろん私物の PC を使ってもいい。とにかく、ひとりで孤独にくつろぎます

「だったら休暇と旅行費だけ渡せばいいのでは?」

と、そのように思われるかもしれませんが、違います。

真のリトリートはメンバー全員に孤独な静寂を課すものです。ですので、イベントとして対象者全員を参加させます。

リトリート内容の共有

真のリトリートで行ってきたことは必ず共有します。

やり方に正解はありませんが、タイミングとしては以下の三つがあります。

真のリトリートを完全に尊重したいなら、3: の事後で十分です。

しかし通常、何日も孤独でいると「飽きて」あるいは「辛くなって」停滞しますから、チェックポイントはあった方がいいでしょう。しかし、チェックポイントがあるということは、わざわざ集まらないといけないことを意味しますので結構な手間になります。ちなみに私も嫌いです。殺意すら湧きます。ですが、ナレッジ・アーキテクトとして、チェックポイントがあった方が現実的だとわかったので、こうして解説しています。

折衷案として、非同期的に共有できるノートやウィキやチャンネルを用意して、そこに放り込めるようにする手もあります。ただし、このやり方だと X その他 SNS で見られるように みんなの投稿が気になってしまう 弊害があります。真のリトリートは孤独に過ごしたいのに、情報に忙殺されてしまうわけです。

おわりに

あなたはまだ本当のリトリートを知らないと思います。私が教えてさしあげましょう――というわけで、「真のリトリート」をご紹介しました。本質は孤独な静寂であり、孤独にくつろぐことに価値があるのです。

関係性を深める手段としてのリトリートも重要ですが、それ以上に、孤独な静寂のもとで、とことん自分を掘り下げる体験も重要です。ぜひ検討してみてください。ではまた。