QoW(Quality Of Work)
はじめに
QoL という言葉はあるものの、その仕事版である QoW(Quality Of Work) という言葉は聞かない。
しかし仕事を成しているのは人であり、人は機械とは違って常に安定したパフォーマンスは出せない。たとえばいらつきが大きいと仕事どころではないだろう。中には仕事と割り切ってこなせる猛者もいるが、それでも快適にこなせる場合と比べればパフォーマンスは落ちる。そもそも、仕事だからといって辛い思いをする道理などなく、やはり快適に越したことはない。
本文書は、QoW なるものを筆者なりに整理して解説したものである。Quality Of Work を「仕事における “いらつきの無さ” の度合い」と定義した上で、いらつきを 7 の因子に分類し、各々を減らすための方法を論じている。
対象読者とその読後効果としては以下を期待している。
- QoL の考え方を仕事に持ち込もうとは考えもしない読者
- 持ち込むことができるのだというパラダイムシフトを提供する
- 既に QoW なるものを理解しているが、やり方や考え方がわからない読者
- いくつかのヒントを提供する
前提として、本文書が取る立場 ~Quality As A Stress-free~
QoL における Quality とは何か
まずはじめに Quality という言葉の意味を定義しておきたい。
Quality とは ストレスフリーの度合い を指すことにしたい。そもそも Quality という言葉には様々な意味があるし、ビジネスの文脈では「品質」を思い浮かべがちだが、(ここで扱う限りにおいては)誤解である。ここでは、Quality As A Stress-free(ストレスフリーとしての質)を扱おうというわけだ。
なぜストレスフリーに注目するか
それは QoL のカジュアルなニュアンスがストレスフリーだと思うからだ。
そもそも QoL という言葉に確たる定義はない。 医療用語として医療の良し悪しを測るために使われる概念 でもあれば、 WHO によって定義された指標 でもあるし、 「表紙に顔写真が乗っている本には手を出さない、これだけで QoL が上がる のようなカジュアルな使われ方もする。
本文書で扱いたいのは医療や社会といった大きな視点ではない。むしろ、各個人の日々のパフォーマンスを左右する要因にこそ着目したい。そこで目をつけたのが快適の度合いであり、これをわかりやすく表した言葉が「ストレスフリー」だろうと考えた。
QoW とは何か
QoW
QoW――Quality Of Workとは、 仕事におけるストレスフリーの度合い を指す。
ストレス
ストレスという言葉もまた様々な意味を持つ言葉だが、ここでは いらつきの度合い を指すことにしたい。いらつきとは「余計なことに対する腹立たしさ」であり、無いに越したことがないものである。無駄と言い換えても良い。
つまり余計なことや無駄なことが多ければ多いほどストレスが高い。逆に、そういったことがなければないほどストレスが低い。
ストレスフリー
ストレスフリーとは、いらつきの度合いが無いことを指す。もちろん、完全になくすことは不可能であるから、なるべくなくす方向に近づけるというニュアンスになる。
ストレスの 7 つの因子
QoW におけるストレスは、以下の因子から成る。
- 御せない といらつく
- 待たされる といらつく
- こだわりを守れない といらつく
- 許容を超える といらつく
- 向いていない といらつく
- 変えられない といらつく
- 疲れている といらつく
したがって QoW の増減は、これらの因子の増減によって決まる。これらのいらつきをなくせばなくすほど、QoW は高くなる。
この 7 因子は、「仕事のスムーズな遂行におけるストレス」という観点で端的に整理したものである。他の観点も考えられるだろうが、あまり範囲を広げぎても議論しづらい。本文書では、この 7 因子をベースに深堀りと整備を行っていく。
御せないといらつく ~コントロール感~
御するとはコントロール
例
- 家事のたとえ。家事は自分でコントロールできるから楽しい。もし仮にやり方を全部指示されたらどうだろうか
- 部下が指示に従ってくれない。
- メンバーが自分の意見に従ってくれない
- 上司が提言や提案に従ってくれない
- 隣人の生活騒音を止める(当該の行動をやめさせる)ことができない
- 同居人が靴下を放置するのをやめさせることができない
- つい酒や煙草やコーヒーに手を出してしまう
- つい SNS を見てしまう
- ついギャンブルしに行ってしまう
- つい A さんの反応が気になってしまう、言動が気になってしまう
- 立てた計画のとおりにいかない
一般化
- 変化性の度合い
- 必要に応じてさっさと変えたいマン
- 変えたくないマン
- 前者は変化できないといらつき、後者は変化があるといらつく
- 主体性の度合い
- 全部コントロールしたいマン
- 任せたいマン
- 前者は人から御されるといらつき、後者は人から御されないといらつく
- 計画性の度合い
- 計画を立ててそのとおり動きたいマン
- 臨機応変あるいは適当に動きたいマン
- 前者は計画を立てられないor計画のとおりにいかないといらつき、後者は計画を押し付けられるといらつく
- 断定性の度合い
- 誰であろうと~~については~~であるべきだ、という信念をたくさん持っているマン
- 信念のとおりにならないといらつく
- 信念の正当性を相手に説明しきれないところがまたいらつく
- 意思よりも強い何かに引っ張られる
- 対象への依存
- 対象からの支配
対策
- 制御ではなく委譲
- コントロールよりもマネジメント
- 任せる・頼る
- 変えられるものと変えられないものの見極め
- 情報過多や依存源を絶つ試み
- 居場所を変える
待たされるといらつく
例
- 赤信号(横断歩道)
- 赤信号(車道を走っている自転車)
- 病院の待ち時間
- レジの待ち時間
- 定刻になっても会議参加者が来ない
- Windows Update が終わらない
- ページや画面が切り替わる or 表示しきるのに数秒かかる
一般化
- 終わりが見えないこと
- 次の予定が押していること
- 進行が妨げられること
- 停止・発信の切替がだるいこと
- 一人ずつしか処理されなくてもどかしいこと
- 他の人を待たせているという焦り
対策
- 予定を抱えすぎない
- 挙動を軽くする(重い、をなくす)
- 軽いツールを使う
- 設定で軽くする
- ツールの性能を支える土台側をパワーアップする
- 切り替えない・切り替える頻度を減らす
- バッチ処理
- 集まる機会をそもそもなくす、非同期にする
- 一気に取得しておく
こだわりを守れないといらつく
★🤔、イベント的こだわり、やっぱり強引感がある。。。
こだわりとは
- 時系列的こだわりには習慣と日課がある
- イベント的こだわりには反応と対処がある
- 習慣とは、無意識レベルで身についてる定期的行動
- 日課とは、意思によって概ね守られる定期的行動
- 反応とは、こうくればこうするが染み付いてて半ば自動的に発動する行動
- 対処とは、こうすればこうしようと意思によって発動させる行動
例
- 時系列的こだわり
- 毎日三食食べる
- 毎日おやつを食べる
- 毎日朝は6:30、昼は12:00、夜は18:30に食べる
- 毎週月曜日はカレーを、火曜日はシチューを、水曜日はグラタンを、木曜日はポトフを、金曜日は豚汁を食べる
- 人参は近所のスーパーで買い、たまねぎは農家の通販で買い、じゃがいもは両親が栽培したものを取りに行く
- イベント的こだわり
- 生活騒音の例がわかりやすそう
- ★
こだわりを守れない例
- 時系列的こだわり
- 毎日三食食べる
- 多忙で昼飯を食べられなかった
- 毎日おやつを食べる
- 仕事が客先常駐になったが、その常駐先ではお菓子を食べられない
- 異動先オフィスに売店がなく、お菓子を調達できない
- 毎日朝は6:30、昼は12:00、夜は18:30に食べる
- 会議が長引いて昼休憩が 12:20 開始になった
- 毎週月曜日はカレーを、火曜日はシチューを、水曜日はグラタンを、木曜日はポトフを、金曜日は豚汁を食べる
- 豚肉を買い忘れたせいで豚汁をつくれない
- 人参は近所のスーパーで目利きして選び、たまねぎは農家の通販で買い、じゃがいもは両親が栽培したものを取りに行く
- 最近増えた客のせいで目利きに敵う人参が残らなくなった
- 通販サイトの障害が出ていて購入できない
- たまねぎ通販が一時休止しており、再開目処もわからないと書いてある
- 両親のモチベがなくなってじゃがいもが栽培されなくなった
- 毎日三食食べる
- イベント的こだわり
- ★
対策
- ルーチンの数を減らす
- 多ければ多いほど守る対象が増えて苦しいので、無闇に抱えない
- そもそもの背景や意義を見直して、別になくてもいいなら捨てる
- 怠ける日をつくる
- なくても平気なもの、ないと困るものなどがわかる
- とりあえず捨ててみる
hints
開発体験という言葉がある。クリエイターは自分のやり方でできたが、サラリーマンにはそれができない。が、プログラマーには共通因子がある。良いマシンを使う、良いツールを使う。
ミニマリズム。狭くする。知りすぎるとストレスも増える。こだわりが増えるとストレスが増える。考えることや守ることが増えるからだ。これをメンタルペットと呼んでいる。世話しなければならないペット。無論、ペットが多いほど大変。
護身。
影響の輪と関心の輪。
スルー力とか意識と反応とか観察者としての私とか。
ストーカーの本。
技術と実践に寄せる案
- 御せない といらつく
- 待たされる といらつく
- こだわりを守れない といらつく
- 許容を超える といらつく
- 向いていない といらつく
- 変えられない といらつく
- 疲れている といらつく
まずはこの文書のベースとなっている「開発体験」を深堀りする。
Developer Experience - stakiran研究所 こっちにまとめる
- 本質は以下3つ
- 開発者も UX を享受すべきユーザーの一人と考える
- 継続的に改善する度
- 「定められたタスク」以外のことのしやすさ度(あそび)
- 具体的な観点は DX Criteria などが詳しい
- 5テーマ、8カテゴリ、8項目(チェック観点)
- つまり計320の項目
- テーマ
- チーム(マネジメント、心理的安全性、目標と計画)
- システム(IaC、CI/CD、DevSecOps、MicroService、Observability)
- データ駆動(データ利活用前提)
- デザイン思考(仮説設定と検証の要領
- コーポレート(経営と事務のDX化)
- 筆者が持っていた印象
- エンジニアとしての働きやすさのこと
- 特に個人レベルでストレスなく働けること
- 自由なツール(椅子などハード含む)
- オープンな情報共有とコミュニケーション
- 十分な性能
- コントロールレス(管理職がいない)
- フルリモートデフォルト
- 遊びも大きいこと
- 本業の合間に、ふと思いついたツールをつくって展開して遊んでもらうとか
- 20%ルール的(週に一日くらいは好きに使える)
- チームレベル、インフラレベル、リリースレベルは見てない
上記を踏まえた上で、筆者が書きたいことは?
- 個人レベルの話
- 各個人がもっとうまくやるためのやり方
- 専門的技術よりは、汎用的な仕事方法論
- こういう概念やツールを使ってこんなCI/CD組みます ← これは専門的すぎる
- CI/CDという概念がある。その本質は「自動で回せるように組むこと(CD)」と「CDに必要なパーツを自動でつくること(CI)」。つまりまずはパーツを自動化し、その成果物達をもって全体を自動化しにいく。自動化は二段階である ← たとえばこんな感じで「ビジネスパーソンなら理解できるレベル」にまで落とし込む
- つまり、ビジネスパーソン各個人がもっとうまくやるためのやり方を提示したい
- それを qow、いらつきをなくすという切り口から体系化したい
- 体系化というと大げさだが、ある程度まとまりをもって展開したい
misc
言いたいことがぶれている。自己啓発みたいな一般論抽象論に行ってない?元々は「開発体験、というエンジニアの概念」をベースに広げて行きたさがあるんだけど。実践的な概念やツールもたくさんある。 / ジレンマ。一般論に寄せるか、技術と実践に寄せるか。前者だとたぶんふろしきでかくなりすぎるので、後者が良さそう。
「思い通りにいかなさ」みたいに、大局でくくれるのではないか?
構成 7因子それぞれ性質解説した後、主な方法論と「その方法論がどの因子を消せるか」を別々に取り上げる?
eigo zangai
- Uncontrolness …… 御せないといらつく
- Waitness …… 待たされるといらつく
- Persistence …… こだわりを守れないといらつく
- Allowance …… 許容を超えるといらつく
- Orientation …… 向いていないといらつく
- Changefullness …… 変えられないといらつく
- Restness …… 疲れているといらつく
QoW という視点
本質はストレスフリーである。苦しくないこと。無意味・無益でないこと。楽しいこと。 [知的生産の技術]では[いかにしていらつきをへらすか]
quality 質。ストレスフリーとしての質。Quality As A Stress-free
本質 人は気まぐれである。 人はいいかげんである。 人は怠け者である。
7つ
- コントロール感
- 御せないといらつく
- Working Experience
- 待たされるといらつく
- 待たない
- 1秒でも、0.1秒でも早く、思い通りにできること
- 何をどうすれば満たせるかは大体共通している
- メンタルペットを減らす
- こだわりを守れないといらつく
- Self Quantity Consideration
- 許容を超えるといらつく
- 日々目を通す・目に入る情報の過多
- 仕事量の過多
- 頭の中に留めている事柄の過多
- 減らせば良い
- 入ってくる量を減らす
- 同時に入れる量を減らす(書く)
- 同時に負う量を減らす(仕事を請け負いすぎない)
- Self Quality Consideration
- 向いてないといらつく
- トートロジーっぽくなっているが、ここでいう quality は「資質」
- 自分の向き不向きを自覚し、向いている事を近づけ、向いてないことは遠ざける
- メタワーク
- 変えられないといらつく
- 仕事の為の仕事
- なんでいらついているのか知らないと対処できないし、原因がわかってもどう変えればいいかわからなければいらついたまま
- 仕事の「やり方」に目をつけるということ。他のやり方に変えたり、自分で新たなやり方をつくったりすること
- 休む
- 疲れているといらつく
参考
- 知的生産の技術 (岩波新書) - 梅棹 忠夫 -本 - 通販 - Amazon
- ストレスフリーを「いかにしていらつきをへらすか」と定義している
更新履歴
- 2021/10/15 無理やりひねり出している感があるのでいったん中止
- 2021/10/14 開始