1. このドキュメントについて
    1. 注意事項
  2. タスク管理支援
    1. リストでまとめる
    2. 表でまとめる
    3. タスク管理支援で扱わないこと
  3. ●分解支援
    1. シューティング
    2. アウトライナー
      1. アウトライナーとは
      2. タスクを分解するためにアウトライナーを使う
    3. 時間管理マトリクス
      1. 時間管理マトリクスとは
      2. タスクの実行順序を決めるために時間管理マトリクスを使う
  4. ●集中支援
    1. 集中支援とそうでないもの
    2. シングルタスクとマルチタスク
      1. タスクとコンテキスト
      2. コンテキストローディング
      3. コンテキストスイッチング
      4. シングルタスクとマルチタスク
      5. マルチタスクは非推奨
    3. 割り込み
      1. 受動性と能動性
      2. 強い後回しと弱い後回し
      3. 割り込みに対処するための SWAP マトリックス
      4. SWAP - Active Strong
      5. SWAP - Passive Strong
      6. SWAP - Active Weak
      7. SWAP - Passive Weak
    4. ルーティンパフォーマンス
    5. ポモドーロテクニック
      1. 欲張りポモドーロ
    6. 非同期
    7. Zen Mode
    8. フロントローディング
  5. ●資料支援
    1. 資料支援概要
      1. 資料支援が扱う範囲
      2. 資料支援の必要性
    2. リンク
    3. TAAs
    4. ズーム
  6. ●操作支援
    1. スロット
    2. TET
    3. 文字入力の効率化
    4. ソート駆動整頓
  7. ●心理支援
    1. タスクリストの圧
    2. リーク
    3. サボタージュ
    4. 逃避の正当化
    5. やれたらやるよ
    6. 混ぜるな危険
    7. 割り込みのジレンマ
    8. 記述のジレンマ
    9. 作業興奮
    10. 初期摩擦
    11. VSRFW ステップ
  8. ●想起支援
    1. リマインド
    2. リマインドの 3 パラメーター
      1. 対象者
      2. トリガー
      3. 用件の伝達
    3. リマインダー
      1. 作用範囲
      2. 空リマインダー
    4. 空リマインド
    5. システムリマインドとヒューマンリマインド
    6. アクティブリマインドとパッシブリマインド
      1. アクティブリマインド
      2. パッシブリマインド
    7. リリマインド
    8. ロケーションリマインド
      1. ロケーションリマインドはリマインドではない?
  9. ●予定支援
    1. イベント
    2. カレンダー
      1. カレンダーの要件
      2. 表示形式
    3. 同期
    4. リマインダーとしてのカレンダー
    5. ルーチンタスク管理としてのカレンダー
  10. 参考資料
    1. 書籍
    2. Web
  11. 更新履歴

このドキュメントについて

タスク管理 を支援する周辺ハックの体系化を試みた文書である。

注意事項

タスク管理支援

タスク管理支援(Task Management Support)とはタスクを管理する上で取り入れると便利な概念、ハック、テクニックなどの総称。あるいはその総称が指すものを体系化したもの。タスク管理そのものの体系には含まれない。あくまでもタスク管理「を支援するための諸々」をまとめた体系である。

リストでまとめる

アルファベット順で記載。

表でまとめる

略語 英名称 和名称 キーワード
BC Breakdown Control 分解支援 細分化, 具体化, 実行順序
CC Concentration Control 集中支援 集中, 割り込み防止, モチベーション
DC Document Control 資料支援 資料, ファイル, URL, 整理
OC Operation Control 操作支援 文字入力効率化, Rich UI の排除, 操作に絡む効率省力自動化全般
PC Psychology Control 心理支援 心理, ジレンマ, あるある, 罠
RC Remindness Control 想起支援 リマインダー, 動線
SC Schedule Control 予定支援 カレンダー, 連携, 同期

タスク管理支援で扱わないこと

タスク管理支援では以下は扱わない。

タスク管理とは「既存のタスク」に対して何らかのアクションを行うものであり、それらタスク自体を新たに生み出すための諸々(タスク生成)を管理するものではない。ゆえに新たなタスクを集める 1 や、タスクをつくる際の指針を定めた 2 などはタスク管理支援の対象外とした。

同様に、タスクのメタなパラメーター(そのタスクの意味、価値、存在意義など)についてもタスク管理で扱うことではないため、 3 も対象外とした。

4 については、単に具体的な手段に言及してはきりがないため対象外とした。

●分解支援

分解支援とは粒度の粗いタスクを細分化し、また実行順序を変更することでタスクの実行をしやすくすること。細分化と実行順序に関する諸々のテクニックをもってタスクの分解を支援すること。

シューティング

【支援対象】順序制御

シューティング(Chuting)とはデイリータスクをリストの形で並べ、上から順番に実行していくこと。

シューティングにより「とにかく上から順にこなしていくだけでいい」状態が手に入り、余計な判断や雑念を廃して、タスク消化に集中できる。また各タスクに見積系のパラメーターを付与することで、今日一日の終了時間を知ることもできる。

シューティングの発祥は TaskChute。

※なお「シューティング」は TaskChute の公式用語ではない。TaskChute 開発者の大橋は 直列タスクリスト と名付けている。

アウトライナー

【支援対象】細分化、順序制御

アウトライナーとは

アウトライナー(Outliner)とは箇条書きのみを用いてテキストを書いていくライティング手法。

以下に例を示す。

-レベル1
 -レベル2
  -レベル3
  -レベル3
  -レベル3
-レベル1
 -レベル2
 -レベル2
  -レベル3
   -レベル4
    -レベル5
    -レベル5
   -レベル4

アウトライナーは以下性質を満たす。

一言で言えば、箇条書きによる快適なライティングを徹底的にサポートしている。これにより「(全体または部分的な)箇条書き」という単位で情報を扱い、階層的に整理していくことができる。無論ただのテキストエディタ等でも可能だが、アウトライナーならより効率的に操作できる。

タスクを分解するためにアウトライナーを使う

アウトライナーを使うとタスクを分解しやすい。

やり方としては、まず最上位に大タスクを配置した後、これに必要な中タスクや小タスク、その他気になることなどを雑多に洗い出していく。あとは部分的に肉付けを行ったり、並び替えや階層レベルを変更したりして階層構造を仕上げていく。

そもそもこのような階層的整理のプロセスは誰もが意識的あるいは無意識的に行っていることであるが、アウトライナーを使うと、その過程を可視化しやすい。頭の中でふわふわ抱えながらやりくりするのではなく、箇条書きという目に見える形で外出ししたものを操作できる(そして他のツールよりも操作しやすい)。ここにアウトライナーの意義がある。

時間管理マトリクス

【支援対象】順序制御

時間管理マトリクスとは

時間管理マトリクスとは「やること」を「重要度と緊急度で四分割したカテゴリ」のいずれかに分類する手法。またはそのようなマトリクス。

マトリクスは以下のようになる。

  緊急度「高」 緊急度「低」
重要度「高」 1 2
重要度「低」 3 4

重要度は「自分の人生(目的や価値観)において重要かどうか」を意味する。ただし主観的には重要であっても、娯楽など一部事項については重要とはみなさない(第四領域)。緊急度は「締切がきつく、かつ取り組まなかった時のダメージが大きいかどうか」を意味する。

領域については第一領域、第二領域、第三領域、第四領域と呼び、以下のように捉える。

ただし時間管理マトリクスは「7つの習慣」という体系を前提とした分類手法であるため、この体系を前提にしなければ合わないこともある。たとえばゲームやマンガといったコンテンツの消費に没頭することを人生に掲げた者には、(時間管理マトリクスがそれらを第四として切り捨てているため)全く参考にならない。

タスクの実行順序を決めるために時間管理マトリクスを使う

時間管理マトリクスは、タスク管理の視座で捉えると「タスクを 1~4 の 4 つの優先度に分類するもの」と言える。つまり時間管理マトリクスを「タスクに優先度を付ける手段」として使うことができる。

以下は優先度を三段階に定めている(重要でないものは同列に C として扱っている)例である。

これに従ってタスクを分類すれば、次は優先度「A」から取り組めばいいと結論付けることができる。実行順序をある程度決めることができている。

●集中支援

集中支援とはタスクの実行に集中すること、あるいは集中の発揮や継続を阻害する要因を軽減すること。集中に必要な考え方、理論、手段その他運用などを用いて集中を支援すること。

集中支援とそうでないもの

集中支援はあくまで「あるタスク A に取り組むという前提で、A にいかに集中するか」を扱う。直近取り組むべきタスクの塊(タスクリストなど)への集中は取り扱わない(こちらは「タスク管理」そのものである)。

シングルタスクとマルチタスク

シングルタスクおよびマルチタスクについて議論するために、いくつか用語を定義しながら言及していく。

最初に結論を述べておくと、マルチタスクは非推奨である。

タスクとコンテキスト

タスクにはコンテキストがついてまわる。コンテキスト(Context)とはタスクに関する諸情報(必要な知識、背景、現在の進捗や状況など付随する情報のすべて)のこと。

コンテキストローディング

コンテキストローディング(Context Loading)とは、あるタスクに関するコンテキストを自分の脳内に展開すること。展開はロード(Load)ともいう。

タスクに集中して取り組むためには、そのタスクのコンテキストをロードしておく必要がある。ロード方法には明示的ロードと暗黙的ロードがある。

コンテキストスイッチング

あるタスク A のコンテキスト ContextA から、別のタスク B のコンテキスト ContextB をロードし直すことコンテキストスイッチング(Context Switching)という。

コンテキストスイッチングは以下理由により、極力避けるべきである。

シングルタスクとマルチタスク

シングルタスク(Single Tasking)とは、タスクの一つ一つに対して十分なコンテキストローディングを行ってから取り組んでいく仕事の仕方。マルチタスク(Multi Tasking)とは、十分なコンテキストローディングを行わずに複数のタスクに並行して取り組む仕事の仕方。

マルチタスクは非推奨

マルチタスクは基本的に非推奨である。というのも、各タスクに対して十分なコンテキストローディングを行えないがゆえに生産性や効率も落ちるからである。逆に、コンテキストローディングを要しないタスクについてはマルチタスクでも(コンテキストという観点では)問題無いが、別の観点(短期記憶の限界など)で問題が生じるため、やはり非推奨である。

割り込み

あるタスク A に取り組んでいる時に、別のタスク B を行う必要性が生じることを割り込み(Interrupt)という。

割り込みの例:

受動性と能動性

割り込みには能動的な割り込みと受動的な割り込みがある。

能動的な割り込み(Active Interrupt)とは、自分以外の何らかによって一方的にもたらされるタイプの割り込み。割り込みという言葉は通常、こちらを指すことが多い。

特徴:

受動的な割り込み(Passive Interrupt)とは、自分からアクションを起こさなければ発生しないタイプの割り込み。脱線という言葉で表現されることもある。

特徴:

強い後回しと弱い後回し

割り込みが発生した時、元々取り組んでいたタスク A と割り込んできたタスク B のうち、いずれか一方の実行を切り捨てる必要がある。これを後回し(Suspend)という。

後回しには強い後回しと弱い後回しがある。

一般的に後回しというと弱い後回しを指すことが多い。

割り込みに対処するための SWAP マトリックス

SWAP マトリックス(SWAP Matrix)とは、割り込みの能動性と後回しの強弱とで四象限をつくったマトリックスであり、割り込みの対処は能動性と強弱の組み合わせに応じて別々に検討するべきと主張したものである。名前の由来は Strong-Weak、Active-Passive の頭文字から来ている。

  (A)能動的な割り込み (P)受動的な割り込み
強い後回し(S) Active-Strong Passive-Strong
弱い後回し(W) Active-Weak Passive-Weak

SWAP - Active Strong

Active Strong は能動的な割り込みそのものに対処を講じることを意味する。行動としては以下がある。

アタックは成功すれば割り込みを激減できるが、対人的な議論や主張が必要なことが多く、荒れやすい。

エスケープは多くの場合、一時しのぎにしかならないが、やらないよりはマシである。一時対処だけでは保たない場合は、永続的な対処(異動や転職など)をするか、アタックを行うことになる。

SWAP - Passive Strong

Passive Strong は受動的な割り込みそのものに対処を講じることを意味する。脱線の対処とも言える。行動としては以下がある。

たとえば以下の受動的な割り込みを考える。

物理的対処では、そもそもメールを見ないようにする。通知を切る、メーラーを終了する、メーラーを削除する等。

意志的対処では、メールはチェックするが、「着手したくなるようなメール」を目にしてもその場で着手しないように自制する。

実用上はなるべく物理的対処を用いるべきである。意志的対処は不安定であり、役に立たないことが多い。

SWAP - Active Weak

Active Weak は能動的な割り込みに対して弱い後回しを行うことを意味する。つまり割り込んできたタスクを優先する場合。

Active Weak として行うべきことは、元々取り組んでいたタスク A に後からスムーズに再開できるよう、タスク A のコンテキストを記録しておく(あとで思い出しやすくする)ことである。具体的には、以下のような観点に対して「あとで読んでわかるような表現で」メモを残しておく。

SWAP - Passive Weak

Passive Weak は受動的な割り込みに対して弱い後回しを行うことを意味する。つまり割り込んできたタスクを優先する場合。

Passive Weak として行うべきことは、Active Weak と同じである。ただし Active Weak よりも対処の猶予時間にゆとりがあることが多い。

ルーティンパフォーマンス

ルーティンパフォーマンスとは、特に集中したいタスクの前に行う一連の儀式(単体では何の意味もない物理的な身体行動)。儀式はある程度煩雑なプロセスから成り、また身体動作という運動も伴っているため、実施するには明示的な意識と短期記憶が必要であるが、そのおかげで余計な雑念を排除することができる。

ルーティンパフォーマンスは、言うなれば「雑念を排除できる程度の労力」が必要な儀式を明示的に行うことで、雑念を排除するテクニックだと言える。

ポモドーロテクニック

ポモドーロテクニックとは「25 分間仕事する」「5 分間休憩する」を交互に繰り返すことで集中を手に入れる手法。

特徴:

欲張りポモドーロ

欲張りポモドーロとは、ポモドーロテクニックの亜種で、休憩フェーズに掃除など家事雑務を割り当てること。

溜まった雑事を少しずつ片付けていくことができる。ただし片付けるべき雑事をあらかじめ数分で済ませられる単位に分解しておかないと、休憩フェーズで何十分も消費してしまい、続く仕事フェーズに至りづらくなることがある。

非同期

リアルタイムにやり取りすることを同期的と呼び、各自がバッチ的にやり取りすることを非同期的と呼ぶ。たとえば口頭コミュニケーションは同期的であり、メールは(リアルタイムにやり取りするシチュエーションでなければ)非同期的である。

※データをミラーリングすることも「同期」と呼ぶが、本節ではミラーリングの意は扱わない。

同期的な手段は以下性質を持つゆえに集中を削ぐ。

集中を担保するためには、同期的手段を非同期的手段に置き換えることが重要となる。非同期的手段を使うと、自分のペースで送信、受信、返信を行えるようにあり、やり取りそのものをタスク管理として扱うことができる(たとえばメールチェックを一日三回ほどルーチンタスクとして設定する等)ようになる。

ただし非同期的手段の活用には利用者側の高いリテラシーが求められる。

Zen Mode

Zen Mode とは今取り組んでいるタスク以外のすべてを遮断すること。

例:

Zen Mode により(雑念など思考的な要因を除く)一切の脱線が発生しなくなるため、高い集中を得ることができる。ただし、そのためには遮断作業をきっちり行う必要がある。これには場所移動や片付けなどを伴うこともあり数分、場合によっては 10 分以上かかることもある。

Zen Mode という名前の由来は GitHub の Zen Writing Mode 。これはエディタにおいて編集領域のみを表示する(メニューバーやステータスバーさえも隠す)機能である。

フロントローディング

フロントローディング(Front Load)とは前倒しのこと。

特に粒度が粗く不透明なタスクに対して、とりあえず前倒しで取り組んでみること。不透明なタスクは分解や見積もりがしづらいが、実際に行動してみれば色々なことがわかってくる。わかってくれば分解や見積もりもしやすい。仮に致命的な問題が判明したとしても、前倒ししておけば期限に余裕がある(ことが多い)ため対処もしやすい。

フロントローディングのコツは、リソースを惜しまず投入することである。全力で投入するからこそ「全力でやってみた結果、こうだった」という事実がわかり、以後の判断(タスクの解釈)に自信や安心感を持つことができる。

●資料支援

資料支援とはタスクの実行において必要となる資料群に素早くアクセスすること。タスクの関連資料へのアクセスを支援すること。

資料支援概要

資料支援が扱う範囲

資料支援が扱う対象範囲は タスク本体から資料にアクセスする範囲 のみである。たとえばタスク A を表す画面やデータがあったとすると、この画面やデータから、いかにして A の関連資料にアクセスするかを考えるのが資料管理である。別の言い方をすると、「タスク A 本体をスタート地点とした」「タスク A に関する資料へのアクセス」を扱う。

このような制限を設けている理由は、こうしなければ資料支援が整理術全般を扱うことになりかねないからである。

資料支援の必要性

タスク管理ツールには資料のすべてを収容できるほどの能力が無いため、資料はツールの外で保管することになる。これは言い換えると、ツール上でタスクを実行する際に、そのタスクに必要な資料にリーチする必要があると言える。リーチするための原始的な方法は、タスクを実行する度に、頭で思い出し、手作業で資料にアクセスすることだが、これでは手間である。

そこでタスク管理では「資料支援」と題して、いかにして資料に素早く、また漏れなくリーチするかを模索する。

リンク

リンク(Link)とはハイパーリンクやクリッカブルリンク等のこと。テキストに対して(資料の所在を示す)URIを付与しておく仕組みであり、ユーザーはクリック等の単純な操作で、その URI が示すファイルにアクセスできる。

例:

TAAs

TAAs とは Task As A Storage(ストレージとしてのタスク)の略で、タスク一件を表現するページ内にファイルをアップロードしてストレージ用途として使うこと。

例:

ズーム

ズーム(Zoom)とはタスクパラメーターの一種で、複数行の記述領域のこと。発祥はアウトライナー Dynalist であり、箇条書き一行の単位に対して、ファイル一つ分の記述領域を付与することができる。

例:

●操作支援

操作支援とはタスク管理ツール上におけるタスクの操作をより効率的かつ正確に行えるように支援すること。操作支援を実現する機能や概念は多岐に渡る。

スロット

スロットとは「~~のツールに従って作業する」という意のタスク。

タスク管理ではしばしば複数のツールを併用せざるを得ないことが多い。典型的なのはプロジェクトで使っている TTaM と、個人で使っている TaM である。ここで、もし個人で使っている TaM において「自身の行動のすべて」を管理している場合、TTaM で扱っているタスクについても、個人で扱っている TaM で扱う必要が生じるが、この時に転記作業が発生する。

転記作業は面倒である。この面倒を解消するのがスロットである。

スロットとは単に「TTaM に従って作業する」といった類のタスクであり、TaM 側につくる。一つのスロットはある程度の長さを確保し、またルーチンタスク化することで定期的な運用も可能となる。

たとえば毎日 4 時間ほど Project-A の仕事を行う場合、スロットは以下のようになる。

これなら転記作業は発生しない。TaM 上での記録精度は落ちる(具体的に何をしたのかが後でわからない)が、Project-A の仕事をしたことだけはわかる。

TET

TET(Text Editor based Task management)とはテキストエディタでタスク管理を行うこと。

タスク管理ツールは基本的に GUI であるが、これには動作が重たい、画面遷移が多い、データの再利用や加工がしづらいといったデメリットがある。これらデメリットを解消し、プログラミングや小説のように軽快にタスクを編集できればタスク管理の効率や生産性は上がるのではないか、というのが TET の思想であり、TET ではこれをテキストエディタを用いることで実現する。

TET の例:

文字入力の効率化

タスク管理はしばしば多量の文字入力を要するため、文字入力そのものを効率化できればタスク管理の効率化に繋がる。

方法として以下がある。

ソート駆動整頓

ソート駆動整頓(Sort Driven Ordering)とは、ソート(辞書順並び替え)を行うだけでタスクリストを適切に並び替えるという概念である。

ソート駆動整頓を取り入れると、ユーザーは手動でタスクを並び替える必要がなくなる。ソートするだけで(ツール側が意図した)並びに並ぶのである。ただし、ユーザーの意図した順序に並び替えたい場合は、各タスクのパラメーターを変える必要がある。

ソート駆動整頓を取り入れるツールに必要な要件:

ソート駆動整頓を実装したツール:

●心理支援

心理支援とはタスク管理における「陥りやすい心理」や「よく見られる傾向」を言語化し、これについて知ってもらうことでタスク管理に役立てようとする支援である。

主な心理や傾向を列挙する。

タスクリストの圧

つくったタスクリストによって示される「仕事量の多さ」のこと。ユーザーは面食らい、辟易し、現実逃避したくなる。特に TaskChute のような日ごとの見積時間まで導出するツールでは、終了時刻もはっきりと示されるため、圧が顕著である(たとえば終了時刻が日をまたいで 1:30 になったりする)。

しかしながら、圧をまとったリストは(精度はさておき少なくともユーザー自身が必要と考えて洗い出したものであるから)紛うことなき現実であり、逃げる訳にはいかない。着実に一つずつ対処したり、今やらなくてもいいものは後回しにしたり、と行動していくしかない。

リーク

リーク(Leak)とはタスクを読んだ後、すぐに対処せずにしばらく放っているうちにそのタスクを忘れてしまうこと。

用語のイメージは、穴の空いたグラス(頭)に水(タスク)を入れるところから来ている。水はしばらくすると漏れて、なくなってしまう。また、水が漏れきるまでの時間も(穴の大きさや数は人それぞれだが一般的に)案外早い。

サボタージュ

あるタスクに取り組もうとした段階で、そのタスクの実行を故意に放棄し、削除やスキップ等を行うこと。つまり実行をサボること。

状況や意思は常に変化するため、タスクを動的に更新すること自体はサボタージュ含め至極普通である(※1)が、サボタージュが頻発する場合は何らかの問題が潜んでいることが多い。

逃避の正当化

目の前の「しんどそうなタスク」から目を背けて、掃除など手頃なタスクに手を付けてしまうという心理がある。これを逃避という。

逃避の厄介なところは、逃避している自身を正当化しやすいところにある。逃避していても一応タスクを消化している事実があるため、「私は怠け者じゃない。だってタスクを消化しているもの」と正当化しやすい。

しかしながら、目を背けている「しんどそうなタスク」に全く手を付けていない、という事実にかわりはない。この正当化が癖になると、「とりあえず日常生活は上手く回してる」「でもしんどいタスクは洗い出しているが一向に行動しない」という頭でっかちになってしまう。頭でっかちになりたくなければ、しんどくても逃避をやめ、行動するしかない。

やれたらやるよ

「今日中にこなせるかどうかはわからないが、とりあえずデイリータスクリストにタスクを入れておく」という心理を指す。

この心理は「デイリータスクリストに入れておけば今日中に目に入る」という安心感と「今、このタスクをどう対処するかは面倒くさいが、後で目に入れた時には何とかするだろう」という先送りグセから成る。

この心理は、なまじやり忘れていない分、悪しき行動だという自覚を持ちにくいが、タスクを読んで判断するというコストが何度もかかっており決して効率的とは言えない。このコストも、積もってしまうと「(疲労ややる気に直結するほどの)脅威」になってしまうため要注意。

混ぜるな危険

あるタスクリストに用途や粒度の異なるタスクを無闇に混ぜてしまうことに警笛を鳴らした格言。

リスト管理の基本は次のとおりである。

これを遵守することでリストの読みやすさや扱いやすさを担保できる。しかし、この遵守には負担を要する(常に観点を意識してタスクを解釈・操作する必要があるがゆえに疲れる)ため、気を抜くと、すぐに観点に合わないタスクを追加してしまう。こうなるとリスト管理に大きな手間がかかってしまい、最悪管理が破綻することさえある。

ベストプラクティスは、この観点遵守を(負荷が高いことを認めた上で)最初から心がけることである。

割り込みのジレンマ

集中している最中に割り込みが発生した時のジレンマで、

という、どちらも選びづらい状態に陥ってしまうこと。

対処としては以下のとおりである。

一番最悪なのはジレンマに陥ってどちらの行動も行わず、両方とも失ってしまうことである。

記述のジレンマ

タスクを具体的に書いておけば後からでも理解しやすいが、書くのに手間がかかる。逆に、書く手間を端折れば手間は小さいが、後から理解しづらくなる。理解のしやすさと手間の少なさのどちらを取るかというジレンマ。

このジレンマに陥らないようにするためには、タスク各々に対する解釈や記述の瞬発力を鍛えるしかない。つまり「これは雑に書いても思い出せるから雑に書いていい」「これは超重要なアイデアで絶対失いたくないから詳しく書いておこう」など、都度配分を考えるのである。

この瞬発力は、タスク管理に取り組めば取り組むほど鍛えられていくが、近道はない。というのも、(判断の対象たるタスクも判断者たる自分自身も)極めて個人的であるがゆえに、実際に手や頭を動かすことでしか要領が得られないからである。

作業興奮

作業興奮とは、最初はやる気の起こらないタスクであっても、しばらく着手しているとやる気が生じてくる現象のこと。

初期摩擦

初期摩擦とは「タスクはやり始めが最も辛い」ことを表したたとえ。またはやり始めに要する負担量を指す言葉。

タスクはたとえ明らかになったからといっても一件落着ではなく、実際に取り組む必要があるわけだが、この取り組みに対する心理的抵抗感が強いことがしばしばある。これを「初期摩擦が大きい」などと表現する。

日々タスクを消化していけるかどうかは、初期摩擦を越えられるかどうかにかかっている。初期摩擦を越えれば、不明点が明らかになったり、作業興奮が発生したりして、以後は比較的スムーズに進む。この事実がわかっている者は強い。

VSRFW ステップ

VSRFW ステップとは「(タスク管理ツール上に記載された)タスクへの対処には 5 つのステップが働いている」と説いたものである。

タスク管理が上手くいかない場合は、この VSRFW ステップという観点でどのステップに問題があるかを点検してみると良い。たとえば以下のようなことがわかる。

●想起支援

想起支援とはリマインダーのこと。タスクの実行を忘れてしまわないように、適切なタイミングで思い出させることで失念防止を支援すること。

リマインド

リマインド(Remind)とは、対象者(Target)に対して、指定トリガー(Trigger)が発動した時に、指定用件を知らせる(Tell)こと。

リマインドの 3 パラメーター

リマインドを構成するパラメーターは 3 つある。これを 3T パラメーターと呼ぶ。

下位要素も網羅すると、以下のとおり。

対象者

対象者(Target)とはリマインドを受ける者。

リマインドを仕込む者と対象者は必ずしも一致しない。つまり自分で自分宛に仕込むだけでなく、自分で他者宛に仕込むこともできる(また他者が仕込んだリマインドを自分が受けることもある)。

トリガー

トリガー(Trigger)とはリマインドを発動させるための条件。

トリガーの例:

用件の伝達

用件の伝達(Telling)は以下パラメーターから成る。

用件(Remind Content)とはリマインドにおいて伝える情報。リマインド内容ともいう。

伝達方式(Remind Protocol)とは用件をどのように伝えるかを定めたもの。具体的な定義はないが、たとえば以下のような点について考慮する。

リマインダー

リマインダー(Reminder)とはリマインドを実現する仕組みのこと。あるいはそのような仕組みにおける「一つの設定」のこと。

作用範囲

「リマインダーが実施するリマインド」が「対象者」に及ぼすことのできる範囲や状態を作用範囲という。

例:

空リマインダー

空リマインダー(Empty Reminder) とは用件の無いリマインダーのこと。

例: 目覚まし時計

空リマインダーは仕様上、用件を指定することができない。複数利用する場合は、何の用件なのかがわからなくなることがあるため注意が必要。

空リマインド

空リマインド(Empty Remind) とは空リマインダーによるリマインドのこと。または空リマインダーではないリマインダーを用いて、用件を端折ったリマインドをセットすること。

後者の目的はもっぱら「用件を書く手間を抑える」である。たとえば 14:00、仕事に集中している時に上司から「15:00 から緊急の会議がある」と言われた場合、集中を削がないためにも、できるだけ早くこの会議のリマインドをセットするべきである。用件を書く場合、セット時に「緊急会議」といった文字列を記入する手間があるが、空リマインドを行う場合は、この手間を丸々なくすことができる。なくしたとしても、このリマインドが 15:00 からの会議であることにはおそらく気付ける。

ただし、空リマインダーの項でも述べたように、複数の空リマインドをセットしてしまうとどのリマインドがどの用件を示しているかがわからなくなるため要注意。

システムリマインドとヒューマンリマインド

システムリマインド(Systematic Remind)とは何らかの機械を用いてリマインドを仕込むこと。

ヒューマンリマインド(Human Remind)とは人に用いてリマインドを仕込むこと。

アクティブリマインドとパッシブリマインド

アクティブリマインド

アクティブリマインド(Active Remind)とは仕組みから対象者にはたらきかけてくれるリマインド。

対象者はリマインドを仕込み、そのリマインダーが及ぶ範囲内(作用範囲)で過ごしているだけで、リマインドしてもらえる。たとえば目覚まし時計は、目覚まし時計が聞こえる範囲で過ごしているだけで、目覚まし時計から音という形でリマインドしてくれる。

パッシブリマインド

パッシブリマインドPassive Remind)とは「用件を記した何かを対象者が読めば当該用件を思い出せる」「確実に読める場所に要件を配置しておけばいい」という発想のリマインド。

パッシブリマインドでは用件を動線に配置する。動線とは家のドアや毎日使うキーボードなど日常生活で一日複数回は経由する場所(目に入れる空間)のこと。

リリマインド

リリマインド(Re-Remind / Relentless Remind)とは対象者が用件に確実に気付けるよう、何度も執拗にリマインドを行うこと。

リリマインドにはリリマインドの挙動を抑止できる(リマインダー側で「設定」として提供されている)ソフトリリマインドと、挙動を抑止できない(リマインダー側で「仕様」として提供されている)ハードリリマインドがある。

ソフトリリマインドの例:

ハードリリマインドの例:

ロケーションリマインド

ロケーションリマインド(Location Remind)とは対象者が地図上の指定範囲に侵入した時に発動するリマインド。

実装例:

ロケーションリマインドはリマインドではない?

ロケーションリマインドをリマインドとみなさない解釈もある。というのも、リマインドとは時間差で用件を思い出させるものであり、一方でロケーションリマインドには時間という尺度が絡まないからである。

否定派の主張は以下のとおり。

もしロケーションリマインドを認める(時間差という前提を崩す)としたら、「パソコンのディスク領域が圧迫したら通知する」類のこともリマインドと呼べてしまうだろう。リマインドという概念が、「何らかの条件を満たした時にメッセージを出す仕組み」という汎用的すぎるものになってしまう。これは容認するべきではない。リマインドの価値は、あくまで未来の時間に仕込むというシンプルなコンセプトと操作性にあるからだ。いたずらに概念を煩雑にするべきではない。

●予定支援

予定支援とはタスク管理では扱いづらい「イベント」を時系列かつ統一的に俯瞰することで、イベントの管理をしやすくすること。特にカレンダーを用いてイベント管理を支援すること。

イベント

イベント(Event)とはオルタスクの一種であり、予定日パラメーターを持つ事柄のこと。

イベントはタスク管理できないこともないが、タスクの粒度が粗い、拘束時間が長い、場所移動など面倒な作業を伴う、スキップを行えないなど厳しい制約を持つことが多く、管理しづらい。そのためタスク管理とは切り離して、別の手段で管理するのが一般的。

カレンダー

カレンダー(Calendar)とはイベントを俯瞰的に管理するツールである。

厳密にはカレンダーツール(カレンダーアプリ、カレンダーソフトウェア etc)などと呼ぶが、単にカレンダーと呼ぶことが多い。しかしカレンダーという言葉の意味は多用であるため、注意が必要である。

以降ではカレンダーという言葉をカレンダーツールとして用いる。

カレンダーの要件

カレンダーには CRUD に関する以下要件が必要である。これを満たさないツールはカレンダーではない。

※1 たとえば以下のようなリストはカレンダーではない(2019/03/16 という領域が複数存在している)

- 2019/03/16(土) 13:00-      消防点検
- 2019/03/16(土) 18:30-      A氏と会食 in ●●ホテル
- 2019/03/17(日) 14:00-15:00 たんす設置
- 2019/03/18(月)             献本到着予定

表示形式

カレンダーの表示形式は以下に大別できる。

テーブル形式は一般的によく知られた形式で、テーブル(表)で並べるもの。

リスト形式は一行一日で並べるもの。つまりテーブル形式のうち 1 行 n 列あるいは n 行 1 列のものを指す。

同期

タスク管理ツールとカレンダーの両方を用いると、しばしばタスクの二重管理を引き起こす。

二重管理の例:

これを防ぐには、一方にタスクを登録した時に、他方にも自動的に登録させる仕組みを用いる。このような仕組みや処理を同期という。

ただし現実的には完全に自動で同期を取ることは難しく、また自動同期できたとしても同期により登録された内容に不備や不足が生じるという問題がある。そのため特定のタイミングで手動で他方にも反映するという手動同期を用いることも多い。

リマインダーとしてのカレンダー

カレンダーの中には各イベントにリマインド機能を持たせたものがある。

典型的なのはイベントに開始時間パラメーターを持たせ、かつその時間の n 分前にリマインドを行えるようにしたものである。

例:

ルーチンタスク管理としてのカレンダー

カレンダーの中には各イベントに定期性パラメーター(繰り返し頻度など)を持たせたものがある。これにより毎日、週一といった繰り返しの予定を実現できる。

この性質を利用すればルーチンタスク管理を実現できる。ただしタスクとは状態パラメーター(未完了 or 完了)を持つものであり、カレンダーにおけるイベントは状態を持たないため、厳密にはルーチンタスク管理とは言えない。

参考資料

書籍

Web

更新履歴

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