ガントチャートの諸悪の根源
それは以下をいっしょくたにしていることだと思う。
- WBS
- いつからいつまでという「幅を持った」期限情報
- 担当者や進捗具合などのパラメータ
この性質上、以下の制約が生じる。
- ガントチャートは Excel レベルの高機能ツールでなければ実現できない
- ガントチャートは縦長にも横長にもなり、俯瞰するためには大きな画面が必要となる
この制約により、以下の弊害が生じる。
- WBS 構造の修正に手間がかかる(テキストエディタのような手軽さがなく「修正めんどくさ」となる)
- 各自が各自のペースで状況を更新できない(複数人編集ができないため調整作業が必要となる)
この弊害により、ガントチャートは「みんなが頼るべき唯一の拠り所」という役割を失う。どころか「とりあえず更新しなければばならないもの(しかも編集が面倒くさい)」として時間を奪う存在にもなる。
どうすればよいか
いっしょくたにした役割を分離すれば良い。
以下のようにする。
- WBS には「幅を持った期限情報」と「パラメータ」を持たせない
- 各タスクの細かい状況は、BTS などの別システムで管理する
- ブラウザから使えるものが望ましい
- GitXub Issues、Trello、Microsoft Planner など
- 管理者または全員が把握するべき状況は「端的に」別途まとめる
順に例を見ていく。
どうするか > WBS
WBS の例を以下に示す。
- 製品A ver3.0をリリースする
- 開発
- 自動テストのつくりこみ
- 自動ビルドのつくりこみ
- 機能1
- 機能2
- 機能3
- ==== ここまで 2/14 までに ====
- テスト
- モンキーテスト一回目(チーム内で)
- ガイドラインに従って手動テスト
- モンキーテスト二回目(外部から有識者呼ぶ)
- [努力] 性能改善
- 改善ネタ1
- 改善ネタ2
- ==== ここまで 3/14 までに ====
- リリース作業
- リリース物件のアップロード
- 各種宣伝文句作成
- 広報部隊に提出
- 広報部隊からのレビュー指摘反映
- 広報部隊からOKもらうところまで指摘と反映を繰り返す
- [努力] 開発ドキュメント刷新
- ==== 4/1 公式 Twitter にて告知 ====
- 開発
WBS はあくまで「全体を俯瞰する」用途に留める。進捗共有や議論時に使う「共通言語」と言い換えても良いだろう。ここに余分な情報は書かない。書くから混乱する。
ただし、見やすさのために少しだけ反映するのはアリだ。
- 製品A ver3.0をリリースする
- 開発
- x 自動テストのつくりこみ
- s 自動ビルドのつくりこみ
- > 機能1
- > 機能2
- 機能3
- 開発
上記は終わった(x)、いったんスキップ(s)、着手中(>)を付与している。
どうするか > 各タスクの細かい状況
BTS で管理するのが好ましい。
BTS を使えば 1-Task 1-Page を実現でき、あるタスクに関する事柄はそのページ内にまとめておくことができる。タスクの担当者はここで検討ややりとりを行いつつ、適宜要約もアップデートする。
BTS にはタスクを一覧表示したり、かんばんで視覚的に並べられるものもある。用途に応じて活用することになるだろう。
個人的には GitXub Issues をおすすめする。GitHub Issues や GitLab Issues などがある。どちらもエンジニア向けに高度に最適化されたツールであり、使いやすさと動作の軽さは他の追従を許さない。ただし「かんばん」機能にはあまり強くない(かんばんはなくても一覧があれば問題ないと私は思うが)。
しかし、GitXub 系は(知らない人には)ハードルが高いため、もうちょっと優しいツールが欲しいならば、Trello や Microsoft Planner など「かんばん」を推したツールを使うのが良いだろう。
どうするか > 端的なサマリー
管理者または全員が把握するべき状況は「端的に」別途まとめるのが良い。
たとえば以下のようにする。
■サマリー
last updated: 2020/02/04
状況:
- スケジュールの遅れは無し
- 懸念
- 機能3が技術的に難しいかも(2/6までに見解展開予定)
- Aさん、祖父入院によりインパクトあるかも
- 開発用 AWS アカウントの請求料金が高い(既に上から怒られてます)
- 事業部内向けモンキーテストはそろそろ打診すべきでは?
この程度で良い。サマリーは本当に端的で良い。余計な詳細は一切要らない。詳細は各自が BTS なりコミュニケーションツール(健全な企業なら Slack が使えるはず)を見る、また各担当者はこまめに記入していく、とすればよい。つまり非同期的な共有を基本とする。
管理者については、そもそも詳細を知る必要さえない。必要ならヒアリングして(高度な判断を下すための)情報収集をすることはあるが、常に行うことはない。まして定例会議などで毎回説明させるのは愚の骨頂だ。貴重な時間を、実作業者でない管理者のために費やすなど(基本的には)馬鹿げている。
おわりに
今回はアンチガントチャートを掲げ、三つの役割に分割した代替案を提示した。
とはいうものの、この代替案を運用するのは簡単ではないだろう。私であれば、どういうツールやフローを使っていけばいいかがわかるし、試行もしていけるが、おそらく大半の方はそうではない。
このあたりの「手段や運用の話」も別途必要そうか。