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ASDはオープン就労とクローズ就労のどちらが良いか

📒まとめ

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まずはおさらい

どちらも ASD や発達障害に限った話ではなく、障害や病気全般を指します。ここでは ASD に絞って解説します。

オープン就労

障害者枠(障害者雇用)で働くこと です。

よくある勘違いが「カミングアウトしているからオープン就労だ」ですが、違います。障害者枠で働くためには障害の証明(≒障害者手帳)が必要であり、障害があることをオープンにせねばなりません。障害者枠で働いている=正式にオープンにしている、という意味です。

クローズ就労

オープン就労でない就労を指します。

カミングアウトしただけではオープンになりません。障害者手帳など正式な証明を会社に提出し、かつ障害者枠で雇用契約を結んで初めてオープン就労となります。それ以外はすべてクローズです。

メリデメ

厚生労働省の資料が端的 *1 ですので、引用します。

オープン就労のメリデメ

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クローズ就労のメリデメ

🐰ASD はクローズ就労で良い

上記メリデメを踏まえて、あらためて見解を述べます。

ADHD や低 IQ など他の特性が併発していたり、二次障害で心身的な不調が出ていたりでもしない限り、基本的に ASD はクローズ就労一択 だと考えます。別の言い方をすると、ひとりで日常生活をおくれないほどのハンデがあるかどうかが一つの目安でしょう。便宜上、デペンデント(不自立) と呼ばせてください。

主治医意見書を書いてもらうでも書いたとおり、ASD は多様性の一つとして尊重されるべきであって、デペンデントのカテゴリーに押し込めるのは乱暴です。むしろ、ASD は平均的な社会人よりも元気ですらあると思います。何ら問題はないのです。

よほど実力と態度に問題があるのなら、障害の有無にかかわらず処分できるはずです。それができない程度であるなら、扱い方が合っていないだけであり、マネジメントでカバーするべきことです。にもかかわらず、そこを怠けて、安易にオープンに押し込めようとするのには憤りすらおぼえます。

ASD 部下がデペンデントでない場合、上司の方はオープン就労を勧めない方がいいでしょう(肯定形で言い直すと「デペンデントである=ひとりで日常生活をおくれる程度ではあるならクローズ就労で良い」)。筆者として、デペンデントでないにもかかわらず、オープン就労を勧めてくるのはハラスメントとさえ感じます。

また、ASD 部下の方も、安易にオープン就労になびかないでください。デペンデントでない場合、2025 年現時点でもオープン就労のメリットはありません。少なくとも給料は確実に下がりますし、ホワイトワーカーとして行える仕事もキャリアも狭まります。このような生活水準の侵害を受け入れてはいけません。デペンデントでなく、かつ処分もされていないのなら何ら問題はありません。毅然と立ち向かってください。

友人の罠

ASD 部下向けの内容です。

一つ注意したいのは、友人など親しい人間が、安易にオープン就労を勧めてくることもあるということです。

言い方は悪いですが、所詮友人は責任を負ってくれません。もちろん善意で勧めてくれているわけですが、筆者のスタンスとしては、ここまで書いてきたとおり「デペンデントでない、かつ処分もされていない」ならクローズでいい、オープンにメリットはなし、です。

あるいは、すでにオープン就労で働いている障害者の友人から勧められることもあるでしょう。実体験に基づくこともあって、検討の価値はありますが、おそらくその人はデペンデントだと思います。もしあなたがデペンデントでないなら、状況が違いますのでスルーして構いません。

……と、強く主張しましたが、当然ながら筆者もあなたの責任を負うわけではありません。また、人によっては、多少水準を落としてでもクローズの方が案外快適に過ごせる可能性もあります。そこも含めて、結局はご自身で考えねばなりません。

オープン → クローズは可能か

ASD 部下向けの内容です。

場合によっては、一度オープン就労を試したいかもしれません。それで馴染めなかった場合は、やっぱりクローズで行こうと考えるでしょう。そのときに不利になってしまわないかが心配です。

場面として以下を設定します。

ChatGPT で Deep Research してみました *2。

軽く整理すると:

🐰セミオープン就労

提言として、私はもう一つカテゴリーをつくるべきと考えます。

もっと良い名前があるかもしれませんが、セミオープン就労 です。

オープン就労は、デペンデントのための措置でした(筆者の解釈です)。一方で、クローズ就労でありながらカミングアウトして尊重してもらうあり方もあります。ここに名前をつけて、もっと扱いやすくしたいのです。少なくとも安易にオープン就労に押し込めるのは到底許容できません。

実運用としては、以下のようなイメージです。

つまり、ASD の強みを活かした役割を定義して募集するのです。たとえば誰に対しても遠慮せず率直に言える ASD は、厄介な顧客との渉外やクレーム対処に使えるかもしれません。一字一句で読み込むほど夢中になれる ASD は、特定の製品や設備や技術のエキスパートになるかもしれません。また、テキストコミュニケーションだけで過ごせる人は、出社や会議の多いワークスタイルを変革する仕組みをつくれるかもしれません。

これは一例にすぎず、すべての ASD に当てはまることではないですが、他にも ASD の強みは様々あるはずです。ぜひ考えてください。何なら ASD 部下も一緒に巻き込んで、対話やブレストを行ってください。あなたがそれなりに権限や人脈を持つ人なら、OST(オープンスペーステクノロジー)のような対話イベントを開いて、みんなの知恵を集めてもいいでしょう。

参考文献