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主治医意見書を書いてもらう

📒まとめ

主治医意見書を書いてもらうまでの流れ

背景

ASD部下との対立は しばしば平行線になります

ASD部下は固有の配慮がほしいが、上司としては認められず、まず平行線になります。らちがあかないので人事部、産業医などを巻き込むわけですが、ここでも結局会社の既存のルールや制度頼みとなります。

ASDとしては、ルールや制度にかかわらず、自分に合った配慮がほしいと望みます。ふざけていると思われるかもしれませんが、曲げることはありません。明確に違反しているのならば処罰すればいい(障害の有無は関係ない)ですが、そうではないし、しかし上司や会社としても体裁のために曲げられませんから、やはり平行線になります。

第三者として医師の見解をもらう

折衷案として、第三者である医師の見解をもらおう、との結論になります。

具体的にどうやるかについては、すでに厚生労働書のマニュアルがあります。

厚生労働省の「企業・医療機関連携マニュアル」 *1

かんたんに整理すると:

🐰個人的にこのやり方には反対します

これは「治療中の病気や怪我を抱えている従業員」の就業可否を判断する措置であり、ASD に対して行うのは不適切と考えます。

まず ASD はニューロ・ダイバーシティとも表現されるように、多様性の一つ です。脳の特性が少し違うだけであり、治す治さないというものではありません。性的マイノリティ――たとえば LGBTQ を例にするとわかりやすいです。ゲイだから、レズビアンだから就業可否を判断するのでしょうか。治療しろと通院を求めるのでしょうか。

※ただし二次障害として症状が出ている可能性はあります。たとえばうつ病や不安障害が生じているかもしれません。

次に、会社や従業員の事情を医者に伝えて、意見をもらうこと自体も難しいです。医者はそういう職業ではないからです。あるいは、やるにしても、かかりつけ医のレベルで何度も通って、お互いに信頼関係と十分な情報を育んでから、となります。何度も通うなら時間もお金もかかりますし、会社の休暇も消費します。そもそもすでに述べたとおり、病気と決めつけて要治療要通院とみなすこと自体がナンセンスです。

※発達障害は医学的には神経発達症であり、ASD もこのカテゴリーに入ってはいますが、まだまだ未解明な領域です。ASD については薬もほとんどありませんし、現状の見解は治療よりも支援です

一つ例を挙げましょう。

たとえば、会社制度としてフレックスとリモートが使えるとします。「6:00~15:00で、基本的にリモートで働きたい」とこだわる ASD がいたとしましょう。部門やチームでは暗黙的に 8:30~17:00 が標準となっています。このとき、あなたならどうしますか?

「うちは 8:30~17:00 で時間が合わないから就業不可能だ」「主治医の意見を仰ごう」と判断するのでしょうか。違います。ホワイトワーカーなのですから、フレックスやリモート、その他ツールや仕事の工夫などで、その程度はカバーできるはずです。まさに合理的配慮ですね。仮に、この程度で要通院扱いしたり、あまつさえ就業不可能に倒して解雇に追い込もうとするのなら、訴えられても仕方がないとさえ思います。

他の反論にもお応えしておきましょう。

制度としてサポートされてないから知りません、ではないのです。私はむしろ、この程度のリテラシーを持たず、仕事もできない者がマネージャーでいること自体が問題だと考えます。言うまでもなく制度は大事ですが、制度の奴隷にマネージャーは務まりません。もしご自身にその能力やモチベーションがないのであれば、他の人に頼ってください。

実際、マネジメントにも色々あるわけで、たとえばプロジェクトマネジメントでは「ASD 部下への合理的配慮」は扱っておらず、したがって有能なプロジェクトマネージャーであってもまともな配慮はできないでしょう。筆者の知る限り、このようなマネジメント体系そのものがないと思いますし、ニューロ・マネジメントなる新しい体系として整備するべきとさえ思っています。

既存の体系として書籍『エンジニアのためのマネジメント入門』のマネジメントドメイン(*2)の言葉を借りるなら、ピープルマネジメントとチームマネジメントが必要でしょう。もう一つ、同書にも出てきませんが、働き方や過ごし方そのものに関する知識と、必要に応じて新たにつくったり調整したりするエンジニアリング領域も必要と感じます。この部分は、このドキュメントにて原則やパターンの形でたっぷり示しますので、ぜひお立ち寄りください。

と、ここまでマネージャー側の意識不足、能力不足として論じてきましたが、もちろん ASD 部下側の能力や意欲が明らかに足りない場合や、ハラスメント以上の問題行動を何度も起こしている場合もあります。その場合は障害の有無にかかわらず、ルールや規則に基づいて解雇その他処分ができるはずです。

逆を言えば、処分できない以上は、上手い扱い方を探すのがマネージャーであるあなたの仕事です。大変ですし、運が悪いとも言えますが、それも仕事です。

参考