ASD はニューロ・ダイバーシティ(神経多様性)として扱うことができます *1。多様性の一種であり、むやみに矯正したり治したりせず尊重していくものだと考えることもできます。以下、経済産業省のページから引用します。
ニューロダイバーシティ(Neurodiversity、神経多様性)とは、Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)という2つの言葉が組み合わされて生まれた、「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方であり、特に、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、学習障害といった発達障害において生じる現象を、能力の欠如や優劣ではなく、『人間のゲノムの自然で正常な変異』として捉える概念でもあります。
医学的には病気の一種として扱われています。小児用ですが MSD から引用します *2。
自閉症スペクトラム症は,神経発達の正常標準との相違のうち,神経発達の病的異常と考えられる境界不明瞭な一定の範疇を指す。
神経発達症とは,小児期早期,典型的には就学前に現れる神経学的病態で,対人関係機能,社会的機能,学業能力,および/または職業的機能の発達が影響を受ける。一般的に,特定の技能または情報の獲得,保持,応用に困難を伴う。神経発達症は,注意,記憶,知覚,言語,問題解決,社会的交流などの機能障害を伴うことがある。
遺伝的要素の存在など、ある程度はエビデンスがあるようですが、まだまだ解明されてはいません。
これも MSD から引用します *2。
自閉スペクトラム症の治療
応用行動分析, 言語療法, ときに理学療法および作業療法, 薬物療法
自閉スペクトラム症の治療では通常,集学的治療が行われるが,交流と意味のあるコミュニケーションを奨励する集中的な行動ベースのアプローチで測定可能な効果が得られることが研究結果から示されている。心理士および教育者は,典型例ではまず行動分析に重点を置き,続いて家庭および学校でみられる具体的な行動上の問題に応じて,行動管理の戦略を決定していく。
基本的には、応用行動分析(ABA)でも示されているとおり、技能でカバーします。
🐰しかし大人の発達障害にはあまり当てはまらないと感じます。社会人として、すでに基本的な技能は身についていることが多いからです。少しイジワルなたとえをすると、育児により毎日 7:00 ~ 15:00 しか働けない人がいたとして、この人に「技能を身につけてそれ以外も働けるようになれ」と言うでしょうか。技能も重要ではありますが、論点は違うはずです。「7~15時でしか働けない or 働けなくなった人とどう仕事をするか」のはずです。ASD もこれと同じで、コミュニケーション・こだわり・コスパの3つの困難を持った者とどう仕事するか、を考えるべきです。
よく言われるのが「薬」ですが、ASD に効く薬は 2025 年現在でもほとんど開拓されていません。一方で、ADHD 的症状、不安・抑うつ、てんかんなど併存する症状には有効です *4。
したがって、治療よりも支援 と考えるのが自然であり、様々な団体が様々な支援プログラムや体制を開発しています。
『「成人期発達障害者のためのデイケア・プログラム」に関する調査について』では社会的には体系化が望まれると総括していますし *5、企業における支援体制についても、ニューロダイバーシティの企業取り組み事例をまとめたレポートがあります *6。
2025年現在でも、支援のあり方と手札を模索・拡充している段階だと思います。これらをキャッチアップし、もちろん ASD 部下当人との継続的な対話を行うことで、適切な支援を導いていきます。銀の弾丸は無いのです。