ASD 部下の IQ を知るのは難しいかもしれませんし、むやみに聞くのはハラスメントですが、もし IQ を知ることができればマネジメントもしやすくなります。
具体的には、次の二点を行います。
なお IQ についてこちらを参照してください。
このドキュメントでは、ASD 部下から診断書を提示されているという前提です。つまり ASD 部下は検査を受けているはずであり、おそらく IQ 検査も受けていると思います。
ですので、検査済の結果をいかにして聞き出すか、という問題になります。
このあたりの戦術は、マネージャーの皆さんの方が詳しいでしょうから割愛します。強いて言えば、ASD 部下の普段の言動やテキストなどから「IQ」「知能」といった言葉の言及があるかどうかを見てください。ある場合、本人は気にしていて、かつそれに基づいた配慮を欲しがっている可能性が(潜在的含め)高いので、IQ の話をしても問題ないと思います。
できれば数字で知りたいですが、それが難しければ、4つの指標を高い順に並び替えてもらうだけでもいいでしょう。
また、可能であれば、心理士による洞察レポートや、IQ 検査結果の詳細もあるはずなので、それも聞き出したいです。たとえば私の場合、VCI 言語理解指標については、
という具合でした。
ASD 部下の IQ を知れたら、強い指標を生かした立ち回りを考えます。逆に、弱い指標にはなるべく頼らずに済むようにします。
たとえば筆者の場合、次のとおりです。高い順です。
まず弱い指標に頼らないようにします。言語理解ですね。私は特に「簡潔な説明」と「暗黙のルール理解」が弱いので、これらを必要とする場面は向いていません。たとえば忙しい上位者向けの説明(十分な知識を持たず、確保できる時間も短く、組織の政治や文化にも染まった人達への説明)や、ドキュメントのない職場やプロジェクトなどは厳しいです。ワーキングメモリーも弱めなので、メモが許されないような「頭で覚えながら仕事する」場面も厳しいでしょう。
その上で、強い指標に頼るようにします。動作性が一番高いので、行動には抵抗がありません。また知覚推理も二番目なので「見ながら仕事をする」ならできそうです。弱い指標との兼ね合いも考えると、たとえば以下のようなスタイルが向いているでしょう。
つまり、資料などを見ながら自分なりに進めてもらい、また、その経過や成果をさっさとつくってもらうといったことです。コンピュータはインプットを与えて、実行させると、出力を出してきて、人間はその結果を見て、フィードバックの入力を入れて再実行させますが、それと同じイメージですね。
この性質上、既存の典型的な作業(ワーキングメモリと言語理解をフル活用した、素早くて柔軟な立ち回りが要求される)よりは、正解がなく、誰も手をつけていないような改善・調査その他検討などをやってもらうのが良いと考えます。
実際、私は今もそういう立ち回りで食べていますし、この方面では人並以上のパフォーマンスを出せます。ただ、私の成果を評価する上司側に評価できるだけの実力がないことと、そもそもそのような仕事が今の部門では少ないことなどが課題です。仕事のマッチング機会を部門の内外に広げていけば、いくらでもあるでしょうが、すでに述べたとおり、日本には階層主義があり、許されません。
……と、筆者の場合における濃い例をお届けしましたが、このように指標ベースで ASD 部下の「使い道」を工夫することができます。
ASD 部下の検査結果を知るのがベストですが、それができずとも推し量ることができます。
このドキュメントでは WAIS-IV をご紹介しました。IQ の構成要素として 4 つの指標があり、各指標もいくつかの観点があることを軽く取り上げています。これらを理解し、必要なら各自調べて深めた上で、あなたの ASD 部下の能力がどう分布しているかを推し量ってみてください。
動作性、知覚推理、ワーキングメモリー、言語理解――どれが高そうか。どれが低そうか。
むやみにレッテルを張れというのではなく、ASD 部下の傾向を、IQ の体系に基づいて、上司なりに分析せよということです。そうして仮説を立てた上で扱い方を立案・実施し、その結果を見て検証していく――と、仮説検証のサイクルを回すのです。