パターン:QA部屋
サマリー
- ある話題について議論するための場所または時間を作り、その上でフォーマットを「質問」と「回答」に限定した上でコミュニケーションをすると、ASD 部下には非常にわかりやすい
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背景とアプローチ
- ASD 部下にとって、コミュニケーションとは情報を交換することである
- 非言語情報や暗黙的な文脈などはあまり読み取れないし、興味もない → それらこそ重視する日本式のコミュニケーションは全般的に相性が悪い
- 👉️形式的にやりとりする。特に Q&A はわかりやすい
アプローチ詳細
- QA 部屋では、
- 1: お互いが書き込めるページをつくるか、単に打ち合わせなど会話の機会を設定する
- 2: その上で、使える形式を「質問」と「その回答」のみに限定する
- 3: 進め方は、質問と回答を交互に行う(つまり ターン制)
- 人数と役割
- 1対1で行う(2人用)
- 質問役と回答役に分かれるが、回答役からの「質問していいですか?」により切り替えることもできる
- 質問と回答
- 質問:「~~ですか?」など質問を尋ねる・書く
- クローズド・クエスチョン(yes or no で答えるもの)でなくても良い
- 一度に複数書いてもいい
- 回答:質問に対して答えを喋る・書く
- すべての質問に厳密に答えなくてもいい
- 答えられない、答えたくないなどの旨を回答してもよい
- 進め方やファシリテーションもすべて質問によって行う
- 「質問してもいいですか?」( スイッチング =質問役と回答役の交代)
- 「議題2に移りたいのですがよろしいですか?」
- 「議論が長引きそうです。10分延長しますが、よろしいですか?」
進め方
- 開始前
- 質問役と回答役を適当に決める。開催者が質問役になるのがスムーズ
- 開始
- 以下1と2をぐるぐる繰り返す
- 1: 質問役のターン。質問を行う。終えたらターン終了を宣言
- 2: 回答役のターン。回答を行う。終えたらターン終了を宣言
- ただしスイッチングしたい場合は、ターン終了時にスイッチング質問も行う
- スイッチング質問は「質問いいですか?」など固定した方が良い
- スイッチング
- 回答役はターン終了時、質問いいですかと尋ねることで質問役になれる
- 1: 回答役、ターン終了時にスイッチング質問をする
- 2: 質問役、まずはスイッチング質問に答える
- 良い場合は、そこでターン終了(相手が質問役、自分が回答役になって、相手の質問ターン)
- 良くない場合は、その旨を伝えた上で、引き続き自分の質問ターン
- 終了
- 質問またはスイッチング質問により提案する
- 例: 「そろそろ時間ですので終わります。いいですか?」
会話で行うか、読み書きで行うか
どちらでも可能。
会話の場合:
- カードゲームやボードゲームのように、お互いターンを意識&明示的に宣言しながら進めていく
- ASD 部下側は、一度に複数の質問に回答できない可能性があるため、小さな質問&回答を一つずつ回していくといい
読み書きの場合:
- QWINCS をはじめ、何を使ってもいい
- チャットを例にすると:
- スレッドを一つつくる(個別チャットやグループチャットでは厳しい)
- 1-メッセージ 1-ターンとして、質問や回答を書き込んでいく
- ノートアプリを例にすると:
- ページを一つつくる
- 質問役から開始していく
- 質問には
Q
、回答には A
、ターン終了には ---
を記載する(他の文字や記号に変えてもいい)
- 特にターン終了は忘れず記載する。でないとターンが永遠に終わらない
例: 会話によるQA部屋
🐰さんがマネージャー、🐱さんがASD部下で、二人で口頭でQA部屋パターンを開始したとする。
- 🐰(質問者)
- 「タスクDについて聞きたいので、10分ほどお付き合いください」
- 「どうぞ」
- 🐱
- 🐰(質問者)
- 「お客様からクレームが来てるんだけど、D の結果について私はレビューを受けた覚えがない。レビューを出すルールだったはず。なぜ私に出さなかったのかを教えてほしい」
- 「どうぞ」
- 🐱
- 🐰
- 🐱(質問者)
- 「レビューを出すルールだったはず、という認識が誤っています。しなくてもいいとのやりとりを以前した覚えがあり、チャットログを探して提示したいのですが、構いませんか」
- 「どうぞ」
- 🐰
- 「構いません。1分待ちます。進展なければスイッチングします」
- 「どうぞ」
- 🐱
なお、QA部屋パターンという名前は比喩であり、物理的に部屋を確保する必要はない。
例: GoogleドキュメントによるQA部屋

この状態から以下を読み取れる:
- 現在は🐱さんのターンであり、回答を書こうとしている
- まだ回答は書いていない。あれこれ書いているが回答ではない(
A
がついてないため)
- まだターン終了でない。
---
を書いてないため
表札について:
- 🐰や🐱を書いているが、これを 表札 という。要はどちらの発言かを示したもの
- 視覚的に見やすいため、絵文字を適当に割り当てることを推奨する
(佐藤)
や<木村>
のように名前で書いてもいい
- 辞書登録などで入力しやすくしておくと、なお良い
議論
- Q: ターン制の会話は無線通信でも行っているが、あのイメージか
- Ans: はい
- まさに「こちら~~です、~~、どうぞ」のように区切りを明示的に発言することで、ターンをわかりやすくしています
- 普段のコミュニケーションではそこまでしませんが、QA部屋パターンでは Q&A を一つずつ処理していきたいのでそこまでやります
- Q: QA部屋は同期的に行うものか、それとも非同期的に行うこともできるのか?会話する場合は同期的だと思うが、チャットやノートアプリを使う場合などは非同期もありえるのではないか
- Ans: ありえます
- ですが、非同期だと何度もやりとりするのが面倒でしょうから、通常は同期か、非同期でも短期決戦が望ましいです
- Q: 質問や回答を見ながら、じっくり次の手を考えていくものと理解しているが、合っているか?
- Ans: はい
- ただの口頭会話やチャットとは違って、何を言うか・書くかを考えやすいのが特徴です
- ASD 部下にとってやりやすいのはもちろん、マネージャーその他相手側の立場でも、一つずつはっきりさせていけるためやりやすいと思います
- Q: Googleドキュメントの例で、
Q
やA
を書いてない行がありますが何なのですか?
- Ans: 補足情報と考えてください
- 自分が質問や回答を書く際の思考の断片として使ってもいいですし、質問や回答を理解するための補足として書き残してもいいです
- マネージャーとして:
- ASD 部下は、端的な質問や回答を見ても真意を理解できないことがあるので、理解できるよう積極的に補足情報を入れた方がいいでしょう
- ASD 部下として:
- 自身の思考を言語化・整理する意味でも、書きながら行うと捗ると思います
- しかし、いたずらに長くなりすぎても邪魔なので、程々にしてください。目安として10行以上長くなる場合は、書くのをやめるか、別の場所に書いてQA部屋からリンクを張るのがいいでしょう
- Q: 中々ターン終了してくれない場合の割り込みは可能?
- Ans: 可能です
- 現実的にターン終了を忘れるなどはありえます
- ただ、この QA 部屋として割り込みの仕方は定義していません。各自適当に行ってください