1. ルーチンタスクの底力: やり忘れとストレスをなくす仕組みと実践
  2. はじめに
    1. 本書の構成
    2. 本書の読み方
    3. 対象読者
    4. 注意事項
  3. <第一部>ルーチンタスク管理の概要
  4. 第1章 ルーチンタスク管理とは
    1. ルーチンワークとは
    2. ルーチンタスクとは
    3. ルーチンタスクの制御
    4. ルーチンタスクを管理することのメリット
      1. やるべきことを漏れなくこなせる
      2. 余計な心配や雑念がなくなり、ストレスフリーになる
      3. 時間が浮く
      4. 目標に向かって進んでいける
    5. ルーチンタスク管理の運用イメージ
      1. 秘書でたとえる
      2. もう少し詳しく
    6. まとめ
    7. おわりに
  5. 第2章 ルーチンタスク管理のコアコンセプト
    1. ルーチンタスク
    2. システム
    3. マスターリスト
    4. チェックリスト
    5. リスト駆動生活
    6. 実行日
    7. 実行頻度
    8. 再配置
    9. セクション
    10. (参考) マスターリストを二段階で分ける
    11. スキップ
    12. まとめ
    13. おわりに
  6. 第3章 ルーチンタスク管理のまわし方
    1. ルーチンタスク管理に必要な 4 つのフェーズ
    2. フェーズ(1):洗い出し
    3. フェーズ(2):ツール選定
    4. フェーズ(3):入力
    5. フェーズ(4):運用
    6. おわりに
  7. <第二部>ルーチンタスク管理環境の準備

ルーチンタスクの底力: やり忘れとストレスをなくす仕組みと実践

© 2018 吉良野すた

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電子書籍 ルーチンタスクの底力: やり忘れとストレスをなくす仕組みと実践 の一部コンテンツ(第 3 章まで)を公開しています。

はじめに

ルーチンとは「やることが毎回決まりきっていること」を意味します。たとえば野球のイチロー選手やラグビーの五郎丸選手など、スポーツ選手が精神を落ち着かせるために毎回同じ動作を辿ることも一種のルーチンですし、毎日三食ご飯を食べたり、数日に一回掃除をしたりするのもルーチンです。本書が扱うのは後者の方、「ルーチンワーク」と呼ばれるものです。

仕事にせよ、私生活にせよ、人は一日に何十ものルーチンワークをこなしています。食事、排泄、睡眠など基本的な行動については、何も意識せずとも毎日こなせますが、すべてがそう順調には行きません。私たちはとても忙しく、仕事中に発生する雑務や、私生活でやらなければならない家事雑事をたくさん抱えています。これらを毎日毎日、やり忘れることなく実施できているでしょうか。また、「あれをやらないと」「これをやらないと」と常に意識を持ち続けることはストレスにもなります。仕事や趣味への集中を削ぐこともあるでしょう。かといって放置するわけにもいきません。

本書では、これらルーチンワークをシステマチックに取り扱い、やり忘れとストレスを軽減するための考え方や方法について説明します。肝となるのが ルーチンタスク という考え方です。タスクとは「やることが具体的に定まった一つの手順・作業・仕事」を意味する言葉ですが、ルーチンタスクとは「やることが具体的に定まったルーチンワーク」のことです。

自分が抱えるルーチンワークをルーチンタスクとして洗い出し、洗い出したそれらを専用の考え方と仕組みによって制御することで、日常が見違えてきます。いつ、何のルーチンワークが行えばよいかがすべて適切に制御され、自分のペースで、最小限の手間で、やり忘れることなくこなしていくことができるようになります。

本書をお読みいただき、ルーチンタスクの底力を実感してください。やり忘れとストレスから解放され、日常生活が、そして人生が、より快適で楽しいものとなることを願っています。

本書の構成

本書は四つの部(パート)から構成されています。

第一部では、ルーチンタスク管理の概要について見ていきます。ルーチンタスクとは何なのか、なぜ管理が必要なのか、どのように管理するのか――背景や意義から仕組みまで、ざっとまとめます。

第二部では、ルーチンタスク管理を運用するために必要な準備について扱います。ここでは実際にみなさんが抱えるルーチンタスクを洗い出したり、管理に用いるツールを選んだりするための方法や考え方を取り扱います。他、手を動かしていただくエクササイズも用意しています。

続く第三部では、より実践的な話に入り、ルーチンタスク管理を運用する際のポイント――特に運用例や TIPS などについてまとめていきます。

この第三部までがルーチンタスク管理に関する解説となります。残る最後のパート、第四部では少し趣向を変えて、筆者が実際に運用しているルーチンタスクを数十個以上、紹介していきます。

本書の読み方

基本的に第一部から順に読み進めていただくことを前提としていますが、説明だけではわかりづらいところがあり、実際に手を動かしてみてはじめてわかってくることもあります。無理にすべてを理解しようとはせず、「とりあえず先に進んでみる」「とりあえず手を動かしてみる」「迷ったら読み返してみる」くらいの、軽い気持ちで望まれるのが良いかと思います。

また、本章では第二部以降にて、実際に手を動かしていただくエクササイズも用意していますが、「本書を読むこと」と「本書の内容を試すこと」をむやみに混ぜると慌ただしくなりますので、「まずは一通り読んでみる」「次にエクササイズをやってみる」「詰まった時は適宜読み返す」といったように、読解と作業を上手く分けてから取り組まれることをおすすめします。

それから、これはすでにライフハックやタスク管理などに習熟された方向けの話ですが、拾い読みでも構いません。ただし、本書で扱う「ルーチンタスク管理」は本書独自の理論であるため、既存の知識では読みこなせない部分があるかもしれません。適宜前の章を読んで、必要な知識や前提を補完しながら、読み進めていくことになるでしょう。

対象読者

本書は、タスク管理についてご存知でない初心者の方から、趣味レベルでバリバリ取り組んでいる上級者の方まで、広く対象としています。

対象読者は、たとえば以下のとおりです。

初心者の方は、自分が抱える日々のタスクをどうやって効率的に管理し、運用していくのかという、一種のシステマチックなやり方や考え方について知ることができます。タスク管理という言葉についても、具体的なイメージが湧くようになるでしょう。もちろん、実際に手を動かし、取り入れていただくことで、このような運用を手に入れ、日常を改善することも可能です。

中上級者の方については、「そんな考え方をするのか」「そんな仕組みを使うのか」「そういうルーチンタスクをつくるのか」といった風に、新たな刺激や発見が得られることを期待します。

注意事項

<第一部>ルーチンタスク管理の概要

本パートではルーチンタスク管理に必要な予備知識について一通り説明していきます。

第 1 章では、ルーチンタスク管理の概要について見ていきます。

第 2 章と第 3 章では、ルーチンタスク管理について理解を深めるための説明を行います。第 2 章では基本的な用語を紹介し、第 3 章では管理に必要な行動を 4 つのフェーズに分類します。

第1章 ルーチンタスク管理とは

本章ではルーチンタスクという言葉の意味に始まり、ルーチンタスク管理とは何か、なぜ必要なのか、またどのように運用していくのか、といった概要を一通り説明します。

ルーチンワークとは

ルーチンワークとは、やることが毎回決まりきった作業や仕事を指します。人は一日に何十から何百ものルーチンワークをこなしています。ルーチンワークの例を挙げてみましょう。

例 2 の「ごはんを食べる」は誰もがこなしているはずです。頻度は一日三回がメジャーですが、もっと少ない方、あるいは多い方もいるでしょう。また、同じ人でも日によって「忙しくて昼食を食べられない」といったことがあります。例 1 と 例 3 は、家事を行う必要のある方はこなしていると思います。

突然ですが、上記の例をもう少し細かくしてみましょう。

たとえば上記のように細分化できます。例 7 の「朝ごはんを食べる」はおそらく毎日行っているでしょう。例 6 の「朝ごはんをつくる」については、毎日行う人もいれば、数日分を作り置き、あるいは買い置きしている人もいるでしょう。例 8 と例 9 の片付けについては、毎日律儀に行う人もいれば、数日分の食器を放置しておいて、あとでまとめて処理する人もいるかと思います。例 3 と例 4 の購入や収納についても人それぞれで、毎日買う人、数日に一度買う人、一週間分あるいはそれ以上をまとめて買う人と様々です。さらに言えば、普段は数日に一度買う人でも、状況によっては二日連続で買いに行くケースがあるかもしれません。

細々と書きましたが、何が言いたいかというと、ルーチンワークには性質があるということです。

ルーチンワークの性質を以下にまとめます。

ルーチンタスクとは

では続いて、ルーチンタスクについて取り上げます。

ルーチンタスクとは やることが具体的に定められたルーチンワーク のことです。もっというと 具体的に定まるほどに細分化された、小さな粒度のルーチンワーク だとも言えます。

先ほどの例で言いますと、

これはルーチンタスクとは呼べません。粒度が大きすぎて、具体的に何をすればいいかが定まっていないからです。

逆に、ルーチンタスクと呼べるものは、たとえば以下の様な細かさになります。

ですが、これもまだ大きいでしょう。さらに細かくすると、以下のようになります。

これは朝ごはんとして白米を食べる時の例です。白米だけでもこんなに細かくなりました。しかし、具体的でもあります。これなら何をすればいいかが明確です。そして、これらは毎回やることが決まっており、かつ特定の頻度で行うものです。よって、ルーチンタスクと言えます。

ルーチンタスクは、なぜ細かく具体的でなければならないのでしょうか。次節で見ていきましょう。

ルーチンタスクの制御

ここまでルーチンタスクについて見てきました。ポイントは やることが具体的に定まるほど細分化する ことでした。なぜ、こんなことが重要なのでしょうか。

それは ルーチンワークを制御するため です。もっと言うと、自分が抱える多数のルーチンワークをやり忘れることなく消化し、かつ、できるだけ少ない負担で消化するためです。人は多数のルーチンワークを抱えています。何十と存在することも珍しくありません。これを何の考えも無しに、その場のノリや思いつきでこなしていくことは、極めて非効率的です。中には問題無くこなせてしまう猛者もいらっしゃるかもしれませんが、少数だと思います。「あ、あれするの忘れてた」とやり忘れてしまったことはありませんか。また「今日はあれもしなきゃ」「えっと、あれも」「これもしなきゃ」と、やることの多さに混乱し、辟易した経験はないでしょうか。私はあります。それも一度や二度ではありません。

時間は貴重です。人生は一度しかありません。ルーチンワークごときに費やし、また振り回されていたのでは溜まったものではありません。やり忘れは防ぎたいですし、かかる時間や精神的な負担もできるだけ減らしたいものです。

ルーチンワークのやり忘れを防止し、かかる負担も軽減する――これが本書の目指すゴールです。

これを実現するためには、ルーチンワークを制御するしかありません。自分がどんなルーチンワークを抱えているかを把握し、いつ、何を、どの順番でやればいいかを掌握するのです。そうすれば必要最小限の手間で、確実にルーチンワークを消化していけます。

「そんなことが可能なのか」と思われるかもしれません。私もそうでした。

可能です。可能にするためには、ルーチンワークを飼いならす手段が必要となりますが、それが ルーチンタスクシステム です。ルーチンワークをルーチンタスクという単位で捉え、ルーチンタスクを専用のシステム(仕組み)で制御する――つまり自分の頭で適当にこなすのではなく、システマチックに賢く運用していくということです。

このような運用を便宜上、 ルーチンタスク管理 と呼ぶことにします。

ルーチンタスクを管理することのメリット

ルーチンタスク管理を行うことで、一体どのようなメリットがあるのでしょうか。改めて整理しておきます。

やるべきことを漏れなくこなせる

ルーチンタスク管理を行うと、いつ、何のルーチンタスクを行えばいいかが漏れなくわかるため、 やり忘れがなくなります

余計な心配や雑念がなくなり、ストレスフリーになる

ルーチンタスク管理では、いつ、何のルーチンタスクを行うかは全てシステムが教えてくれます。自分の頭で意識しておく必要はありません。私たちに必要なのは、毎日システムにアクセスすることだけです。

したがって、ルーチンタスク管理をしないことで発生していた「あと何をすればいいんだっけ」「今日はこれとこれもやらないといけないな」といった心配や雑念に振り回されることがなくなります。ゆとりを持って日々を過ごせますし、仕事や趣味にも打ち込みやすくなります。

常に頭で意識しておかなくてもいいという解放感と、システムさえ見ればすべてわかるという安心感。この二つは、一度体験すると病みつきになります。ルーチンタスク管理の暴力的恩恵です。

時間が浮く

ルーチンタスク管理を行うと、今日行うルーチンタスクのみを漏れなく把握できます。明日以降のルーチンタスクは明日になってからまた把握すれば済みます。これは言い換えると システムが教えてくれた「今日行うべきルーチンタスク」のみを消化すればいい ということです。もっと言うと、「何をすればいいんだっけ」「他にやり残しはなかったっけ」などと判断や思い出しに要する時間がありません。

このような時間は、一日では数分から十数分程度かもしれませんが、積み重なると何時間にも何十時間にもなります。ルーチンタスク管理をすると、この時間は省けますから、結局トータルで見ると時間が浮くと言えます。

目標に向かって進んでいける

これはルーチンタスクの応用例「プログレッシブルーチン」の話です。詳細は後述しますが、簡単に述べておきます。

自分がやりたいことや、目標にしていることに近づくためには継続的な行動が必要ですが、これをルーチンタスクで後押しすることができます。「毎日 5 ページずつ読もう」「毎日 10 分時間を取ろう」といった行動を、ルーチンタスクとしてシステムに登録しておくのです。そうすると、忘れることなく取り組むことができます。

ルーチンタスク管理をしていないと、これら行動を思い出せなかったり、思い出したとしても「今日はもういいか」と安易にサボったりしてしまいます。ルーチンタスク管理を行えばやり忘れを防げますし、ルーチンタスクとして示されていることで、やってみようかという気にもなります。

このように、ルーチンタスク管理を使うと「成長するための継続的行動」をアシストすることもできます。

ルーチンタスク管理の運用イメージ

ここまでルーチンタスク管理の概要について説明しましたが、いまいちピンと来ません。そこでルーチンタスク管理の運用イメージを紹介することで理解の促進を試みます。

秘書でたとえる

まずはざっくりとした理解のために、ルーチンタスク管理を秘書にたとえたいと思います。

ルーチンタスク管理は自分専用の秘書を育てるようなものです。私たちは秘書に尋ねるだけで、自分がやるべきルーチンタスクを知ることができます。以下にイメージを示します。

hisyo_meirei_01 \

ただし、この秘書は所詮はシステムなので、人間の秘書ほど有能ではありません。自分がいつ、どんなルーチンタスクを抱えているかは事前にすべて教えておく必要がありますし、ルーチンタスクに変更があれば、やはりすべて教える必要があります。以下にイメージを示します。

hisyo_meirei_02_concrete \

上図はあくまでたとえです。上図では、あたかも秘書に命令するだけで、あとは秘書が設定を変更してくれる――という風に見えますが、実際はそうではありません。実際の登録・変更作業自体は私たち自身が行う必要があります。作業として何をするかはシステム次第ですが、アナログとデジタルに大別できます。

hisyo_meirei_03_realwork \

アナログだと、システムとは紙やノートに書いたリスト(箇条書き)を意味します。デジタルだと、システムとはテキストや専用ツール上に書いたリストを意味します。そういう意味で、ルーチンタスク管理とは「ルーチンタスクの書かれたリストの管理および運用」だと言えます。TODO リストに代表されるように、所詮はリストなのです。ただし、管理や運用には専用の考え方や工夫があり、これらを取り入れてルーチンタスク管理を実現できれば、まるで秘書を手に入れたかのような利便性と快適さを手に入れることができます。

もう少し詳しく

続いて、もう少し現実の手段に寄せて説明します。ルーチンタスク管理を運用する、とはどういうことでしょうか。

まずはシステムにアクセスします。これは手帳でもデジタルツールでも構いません。ここには何十何百というルーチンタスクがすべて登録されています(もちろん登録するのは自分自身です)が、「今日行う分」のみがきちんと分けて表示されているため、そこだけを見れば済みます。

「今日行う分」のルーチンタスクは、空いている時に消化していきます。朝、会社に出かける前。夜、会社から帰ってきて夕食を食べる前。あるいは食べた後など。いつ、どのルーチンタスクをこなすかはその人次第、また状況次第です。ただし、いつやるかを固定した方が捗ることもあります。たとえば「持ち物チェック」や「ゴミ出し」は朝、出かける前に行うのが最も自然でしょう。

こなしたタスクは、システムに記録させます。アナログな手帳の場合は横線を引いたりチェックマークを付けます。デジタルなツールの場合は「このルーチンタスクを終了する」のような操作がありますから、それを実行します。そうやって「今日行う分」を消化していき、すべて消化し終えたら今日はおしまいです。

ただし、おしまいにする前に、消化したルーチンタスクを明日以降の「適切な日」に再設定しておく必要があります。毎日行うルーチンタスクなら明日に、一週間後に行うタスクなら一週間後に再設定します。たとえば「ゴミ出し」が毎週月曜日と木曜日で、今日実施した時が月曜日だとしたら、次は木曜日に再設定しておく必要があります。

まとめましょう。

つまり、システムを見る → ルーチンタスクを消化する → システムを見る ……というライフスタイルになります。

このようなスタイルはスマホを常用することに似ています。手元にスマホを置いといて、メールやら SNS やらニュースやらをこまめにチェックする――そんなイメージです。ただし、チェックする対象が受信メールや通知やタイムラインではなく、システムというルーチンタスクの並んだリストだという点が違います。

まとめ

本章の内容を改めて簡単にまとめておきます。

人は何十というルーチンワークを抱えており、頭の中だけで処理するのは困難です。やり忘れも起きますし、また絶えず意識したり頻繁に心配したりするといった負担も発生します。

これら弊害を軽減するためのアイデアとして、ルーチンワークを ルーチンタスク という「やることが具体的に定まったタスク」単位に細分化し、このルーチンタスクを専用のシステムによって管理することを述べました。これにより、頭で抱え込むことから解放され、日々のルーチンタスクを確実に、最小限の負担で消化していけるようになります。これを ルーチンタスク管理 と呼びました。

ルーチンタスク管理というと難しく聞こえますが、要するに「自分が抱えるルーチンタスク」のすべてをシステムに集約し、このシステムを見に行くことで「今日やるルーチンタスク」を把握できる――という一元集約を実現したいだけです。そうすれば、システムに従うだけで必要なタスクを消化していけるというシンプルな生活が手に入ります。いつ、何をやればいいかを頑張って意識し続ける必要はありません。システムがすべて教えてくれます。さしづめ、自分だけの秘書を育てるようなものです。

おわりに

本章ではルーチンタスクの概要について見てきました。

次章では、ルーチンタスク管理についてイメージを掴むために、コアコンセプトと称して用語説明をしていきます。

第2章 ルーチンタスク管理のコアコンセプト

本章ではルーチンタスク管理を運用するために必要なアイデアやコンセプトについて取り上げます。ルーチンタスク管理に関する用語集と捉えても差し支えありません。一通り目を通していただくと、ルーチンタスク管理のポイントやイメージを掴んでいただけます。

とはいえ、実際に手を動かしてみないとわからない部分もありますので、無理に押さえる必要はありません。まずは「なんとなくそういうものがあるんだな」程度で軽く読み流していただいても結構です。後の章を読んだ後で、改めて戻ってきても良いでしょう。

ルーチンタスク

ルーチンタスク とは「何をすればいいかが具体的に定まった」ルーチンワークを表します。

人は数十個以上のルーチンワークを抱えていますが、まずはこれをルーチンタスクの単位に分解して、はっきりと洗い出すことが大事です。洗い出すことができれば、あとは システム で管理するだけで済みます。

システム

本書において度々言及する システム という言葉は、ルーチンタスク管理を実現するシステム(仕組み)を意味します。

システムは以下の要素から構成されます。

ちなみに [1] は マスターリスト と呼びます。

マスターリスト

マスターリスト とは、すべてのルーチンタスクを書き記したリストのことです。

リストの記録方法は様々です。アナログからデジタルまで色んな方法があります。いくつか例を挙げます。

マスターリストには何十、何百という項目が並びますので、使い方は工夫する必要があります。

ここで「え?何百もあるの!?」とビックリされるかもしれませんが、これは特に珍しいことではありません。極端な話、毎日行うルーチンタスクを 1 年分記述すれば、それだけで 365 個の項目になりますし、「薬を飲む」のような些細な行動(しかし忘れたくない行動)もルーチンタスクにしてしまうと、 1 日のルーチンタスク数は平気で 20、30 を超えてきます。

鋭い方はさらに「え?毎日行うルーチンタスクは毎日項目を書かないといけないの?」とうんざりするかもしれません。これは後に述べる「再配置」という作業であり、ルーチンタスク管理において避けられない障壁の一つです。しかしながら、工夫次第でこの手間は最小限に抑えることができます。

チェックリスト

チェックリスト とは、読者のみなさんが想像するであろう、一般的な意味でのチェックリストだと思っていただいて間違いありません。

このチェックリストですが、実はルーチンタスク管理においては重要な役目を果たします。具体的に言うと、 複数の作業を毎回同じタイミングで一気に行っている ようなルーチンタスクの場合、その各作業をチェックリストという形で記述しておく、という使い方をします。

また、詳しくは後述しますが、アナログな手段でルーチンタスク管理を行う場合は、チェックリストという形でルーチンタスクを先に書き並べておき、日々の「今日やるルーチンタスクのリスト」には「このチェックリストのこの項目をやる」という指示を書き並べる……という運用をします。

わかりづらいので例を出します。

たとえば「2日に1回、トイレ掃除を行う」というルーチンワークがあったとします。この作業は、以下のように複数の作業から成り立っています。

これをルーチンタスク管理する場合、どうすれば良いでしょうか。

[1] ~ [5] の各項目をルーチンタスクとみなして、マスターリストに記入しますか?しかしそれだと記入量が多く(2日に1回、上記 5 項目を記入する必要があります)、大変です。

そこでチェックリストの登場です。上記 [1] ~ [5] を、紙切れでもテキストファイルでも何でもいいので、あらかじめ「トイレ掃除用リスト」として書いておき、ルーチンタスクとしては 「トイレ掃除用リストに従って掃除する」 というタスクを記入します。これなら記入は 1 項目で済みます。

まとめます。チェックリストを使うと、ルーチンタスクという「リストに記入しなければならない項目」を減らすことができます。ルーチンタスクは、ただでさえ項目数が多いので、この考え方は(特に記入に手間がかかるアナログなやり方では)地味に重要です。

(余談) ちなみに「わざわざチェックリストにしなくても何すればいいかはわかるよ」という場合は、無理してチェックリスト化しなくても構いません。ただし、頭だけで処理するとやり忘れが発生しやすい、ということは覚えておいてください。

リスト駆動生活

リスト駆動生活 とは、「リストに始まり、リストに終わる」生活を指します。もっと言うと、

このような生活をするということです。

リスト駆動生活はルーチンタスク管理において、欠かすことのできない要素です

ここまでルーチンタスク管理の肝がマスターリスト――ルーチンタスクを書き並べたリストであることは何度も述べてきました。このマスターリストですが、 いくら書き並べたところで、普段から目を通さなければ意味がありません。なぜかというと、書いた項目をすべて頭で覚えていて、一つずつ漏れなく消化していくという離れ業は、常人にはできないからです。もしそんなことができるのなら、そもそもルーチンタスク管理など不要でしょう。それができないからこそ、リストという形でタスクを外に出し、意識的に繰り返し読んで、一つずつ消化していく、というシステマチックなアプローチが必要なのです。

また、リストは一日一度だけ見れば良い、というわけでもありません。一度見ただけで今日やるべきルーチンタスクのすべてを頭に入れて、漏れなく消化していくことも、やはり難しいからです。

結局、マスターリストに書かれたルーチンタスクを日々消化していくためには、マスターリストを日々何度も何度も確認する 他はありません。つまりはリスト駆動生活です。

実行日

実行日 とは「そのルーチンタスクはいつ実行するべきなのか」という、ルーチンタスク各々が持つ属性値のことです。

たとえば今日が 2018 年 10 月 28 日だとして、明日が(一週間に二回行っている)ゴミ捨ての日だとしたら、この「ゴミ捨て」というルーチンタスクの実行日は 2018 年 10 月 29 日です。

ルーチンタスク管理においては、各ルーチンタスクを実行するタイミングは そのルーチンタスクの実行日当日 です。この原則を守ることで、いつの日であっても、私たちが行うべきことは「今日の分のルーチンタスクをすべて消化するだけ」となります。何十何百と並ぶマスターリストを毎回上から下まで読み返す必要はありません。今日やる分(実行日が今日になってる分)だけ見れば良いのです

言い換えると、各ルーチンタスクは実行日ごとに配置される とも言えます。図で示すと、以下のイメージです。

tasklist_per_day \

話は変わりますが、このような性質上、マスターリストは 日ごとに記入エリアが分かれているものが望ましいです。アナログな手段で言うなら、ただの A4 ノートよりは、日ごとにページが確保されている手帳や日記帳のようなものが望ましいということです。なぜなら「実行日を設定する=その日のページに書き込む」ですし、「指定した日のルーチンタスクを見る=その日のページを見る」となり、操作が単純で済むからです。

実行頻度

実行頻度(あるいは単に頻度) とは「そのルーチンタスクを何日単位で繰り返すのか」という、ルーチンタスク各々が持つ属性値です。

頻度として、たとえば以下があります。

図による例もいくつか示しておきます。

freq_01_rep1 \

freq_02_monthu_trash \

freq_03_twitter_check \

最も単純な頻度は「n 日毎」ですが、中には「毎週水曜日と金曜日」や「毎月 3 日、13日、23日、30日」といった複雑な頻度もあります。(ただし複雑な頻度はシステム側で扱いづらいので、極力単純な頻度で済ませるべきです)

ルーチンタスク管理においては、この実行頻度を上手く設定することが重要です。というのも、実行頻度が多すぎると「面倒くさい」「こんなに高頻度でやらなくてもいいのでは……」となりますし、逆に頻度が少なすぎると「一気に作業するのは大変だなぁ」「もうちょっと頻度を増やしてこまめに作業した方がラクできるかも……」となります。 頻度はなるべく多めに、でも必要最小限に。そんなバランスが理想です。

たとえば掃除を例にすると、毎日掃除(頻度=毎日)した方が良いに決まっていますが、正直言って面倒ですよね。掃除場所にもよりますが、もっと頻度を減らしても済むはずです。しかし、逆に頻度が少なくすぎると、いざ掃除する時に「うわ、ほこりが溜まっている……」「汚れがこびりついて取れない……」なんてことになります。できるだけ頻度は減らしたい、でも掃除や快適さに支障が出ない程度には掃除したい――そんなバランスを模索していくことになります。

再配置

再配置 とはルーチンタスク管理に横たわる障壁の一つで、消化したルーチンタスクを、次に実施するべき日に再び配置する 作業を指します。

たとえば毎日実施する「メールソフトを起動してメールをチェックする」というルーチンタスクがあったとします。今日が 2018 年 10 月 28 日として、今日これを消化したとしましょう。

この時、何もしなければ 明日以降にこのルーチンタスクが登場しなくなります。そうなると、翌日はメールソフトの起動を忘れてしまいます。これではルーチンタスク管理の意味がありません。毎日実施させるためには翌日、10 月 29 日にもこのタスクを登録しなければなりませんし、翌日に消化した後は、その翌日、10 月 30 日にも登録が必要です。

reentry \

このように、消化したルーチンタスクを翌日以降の「次に実施する日(次の実行日)」に再配置する必要があるのです。

再配置はとても面倒くさい作業です。仮にルーチンタスクが 1 日平均 30 個あったとすれば、30 回分の再配置作業が必要になります。もしアナログな手帳でシステムを運用しているとしたら、30 個分の記入が必要です。もっと言えば、「これは毎日やるルーチンタスクだから次の日に」「これは 3 日毎にやるから 3 日後に、えっと 3 日後は何日だっけ……」のような日付計算も必要です。とにかく大変です。

この再配置については、後のパートで詳しく取り上げます。一言で言っておくと、スマホアプリや PC ツールなどデジタルツールを使えばこのコストは極限まで短縮できます。アナログなツールであっても、ダブルリスト方式という工夫によってそこそこ短縮できます。

セクション

セクション とは 時間帯 を意味する言葉で、「そのルーチンタスクはどの時間帯で実行するべきなのか」という、ルーチンタスク各々が持つ属性値です。

「実行日」の項と同じ例で説明します。たとえば今日が 2018 年 10 月 29 日月曜日だとして、ゴミ捨てをしなければならないとします。ゴミ捨ては、地域にもよりますが、朝の 8 時前までに所定の場所にゴミ袋を置く必要があります。なので、このゴミ捨てという作業は、朝にやらなければならないことです。やるべき時間帯が決まっている と言えます。

セクションは、このような「やるべき時間帯が決まっている」ルーチンタスクについて、「この時間帯にやるべきだよ」ということを明示するためのものです。上記のゴミ捨てをルーチンタスクにするとしたら、

このようになるでしょう。もし、この「朝 8 時までに」の記入が漏れていたとしたら、いざリストを見てルーチンタスクをこなす際に、「これはあとでいいや」と飛ばしてしまう可能性が高くなります。なぜかというと、ルーチンタスクは 1 日に複数個、いや 10 個や 20 個を超えることも珍しくない ので、日々運用する時は「ざっと眺めて、できそうなものから消化する」というやり方になることが多いからです。

このセクションですが、これまた地味に重要です。無くてもルーチンタスク管理は行なえますが、あればもっと管理が捗ります。詳しくは後のパートで書きますが、 ルーチンタスクの大半は「どの時間帯に実行するべきかが大体決まっている」ので、そこも含めて管理してやると、「この時間帯ではこれをやればいい」がわかり、何十個と存在する「今日やる分」の中からどれをやるかを判断する手間が減ります。

マスターリストに存在する多数のルーチンタスクは「実行日」で分けることにより、今日やる分のみに集中すれば良い、と書きました。同様に、まだ多数存在する「今日やる分」のルーチンタスクについても、「セクション」で分けることにより、今の時間帯で行うもののみに集中すれば良い、となります。判断する手間を減らせて、サクサクと消化していけます。

(参考) マスターリストを二段階で分ける

ここまでで「マスターリスト」「今日やるリスト」「セクション(時間帯)」と三つの言葉が登場しています。わかりづらいので、これらの関係性――特にマスターリストを二段階ほど分けてやることで、今日やるルーチンタスクを確認・判断しやすくなるという点について図で示します。

まずマスターリストですが、これだけでルーチンタスク管理を行うのは、タスク数が多すぎて非現実的です。

tasks_01_many \

なので「今日やるもの」と「それ以外(明日以降やるもの)」に二分します。ルーチンタスクは、各々が実行日を持っていますから、「今日やるもの」とは単に「実行日が今日となっているルーチンタスク」です。

tasks_02_today_and_else \

これだけでもだいぶタスク数が減りましたが、まだ多いです。そこで「セクション(時間帯)」の登場です。ルーチンタスクの大半は、いつ行うかが決まっている(あるいは決めることもできる)ので、これに従い、ルーチンタスクをセクションで分けます。

tasks_03_section \

そうすると、朝は「朝やるもの」だけ見ればいい、昼は「昼やるもの」だけ見ればいい、また「いつでもいい」は空いた時にでも確認すればいい……というふうに、その時その時において確認すべきタスクの数が(「今日やるもの」とひとくくりにするよりも)少なくて済みます。

スキップ

スキップ とは、今日実施するつもりのルーチンタスクを先送りすることです。

日常は何かと慌ただしいですから、毎日「今日やる分」のルーチンタスクすべてを消化できるとは限りませんし、気分次第でやりたくない時もあります。

私の場合ですと、飲み会や懇親会に参加した時は、この傾向があります。普段は午後 9 時にはすべてのルーチンが終わるのですが、参加した日は帰宅時点で午後 9 時を超えています。そこでスキップです。別に厳しい営業職のようにノルマが課せられているわけではないので、やりたくなければ思い切ってスキップします。

スキップとは、具体的に言えば 実行日を翌日以降に設定する ことです。たとえば「今日やるつもりだった掃除、今日はもうだるいから明日にしよう」といったことです。ちなみに、必ずしも明日にする必要はなく、数日後や一週間後に設定することもあります。いずれにせよ、スキップされたルーチンタスクもシステムに保持されていますから、忘れることはありません。

まとめ

本章のまとめとして、ここまで登場した用語を用いて、ルーチンタスク管理というものを再度説明してみます。

私たちは数十個以上のルーチンワークを抱えていますが、頭の中だけではとても対処しきれません。そこで、よりシステマチックな対処を考えます。それが ルーチンタスク管理 です。

ルーチンタスク管理では、まずルーチンワークを ルーチンタスク という単位で捉え、これを一箇所にまとめて記載していきます。手段はアナログでもデジタルでも構いませんが、リスト形式で書き並べていきます。このようなリストを マスターリスト と呼びました。

ただし、このマスターリストだけでは項目が長大すぎて管理運用が大変なので、少しでも負担を和らげるために、色々と工夫をします。大きく分けて三つありました。

工夫の一つ目は 実行日 です。各ルーチンタスクに「いつ実施するか」を定めることによって、ルーチンタスクを日単位で分類することができ、「今日はこれだけやればいい」を可視化することができます。

工夫の二つ目は セクション(時間帯) です。これはルーチンタスクの実行タイミングを明示的に指定するものでした。たとえばゴミ捨ては朝です。ルーチンタスクの大半は実行タイミングが定まっていることが多いです。セクションを上手く洗い出し、ルーチンタスクを配置してやれば、「今はこのセクションだからこのルーチンタスクをやればいい」と、タスクの選択(判断)を楽に行えるようになるのでした。

工夫の三つ目は チェックリスト です。毎回決まりきった複数の行動については、行動の一つ一つを一つずつルーチンタスクにしていては管理が面倒です。それよりも、ルーチンタスクは「~~のチェックリストに従う」の一つのみをつくっておき、「~~のチェックリスト」を別につくっておきます。そうすれば、ルーチンタスクの管理は一つだけで済みます。

これでマスターリストの運用はだいぶ楽になりますが、そもそもの前提がありました。このマスターリストですが、日常生活に溶け込ませるためには、一日に何度も何度もチェックしなければならないのでしたね。仕事でメールを見るように、あるいはプライベートで SNS を見るように、です。そのようなライフスタイルを リスト駆動生活 と呼びました。

さて、そんなルーチンタスク管理ですが、一つ大きな課題がありました。それが 再配置 です。ルーチンタスクを実行し終えたら、次の実行日に再設定しなければなりません。仮にルーチンタスクが 1 日 30 個あったとしたら、30 個分の再配置を毎日行うことになります。これは大きな手間です。この再配置という労力をいかに削減するかは重要なテーマです。

以上がルーチンタスク管理の全体像です。

おわりに

本章ではルーチンタスク管理において欠かせない重要コンセプトについて見てきました。

第3章 ルーチンタスク管理のまわし方

第 2 章では用語ベースでルーチンタスク管理を紐解いてみましたが、本章では「ルーチンタスク管理のまわし方」と称して、ルーチンタスク管理の全体像を示します。

結論から申し上げると、4 つのフェーズに取り組むことになります。少し詳しく見ていきましょう。

ルーチンタスク管理に必要な 4 つのフェーズ

ルーチンタスク管理に必要な行動は計 4 つのフェーズに分けることができます。準備フェーズが計 3 フェーズ、運用フェーズが計 1 フェーズの計 4 フェーズです。

フェーズ フェーズ名 内容
フェーズ(1) 洗い出し 自分が抱えるルーチンタスクを洗い出す
フェーズ(2) ツール選定 ルーチンタスクを管理するためのツール(≒何に記入するか)を決める
フェーズ(3) 入力 ツールにルーチンタスクを入力(記入)する
フェーズ(4) 運用 ツールを使ってルーチンタスク管理を行う

フェーズ (1) ~ (3) が準備フェーズで、フェーズ (4) が運用フェーズです。

準備フェーズ では、ルーチンタスク管理に必要なシステムを整えていきます。具体的にはフェーズ (1) にてルーチンタスク(を文章で書き記したもの)を準備し、フェーズ (2) にて登録先のツールを準備します。そしてフェーズ (3) にて、フェーズ (1) で準備したルーチンタスクを、フェーズ (2) で準備したツールに入力します。

準備フェーズは大変な作業ですが、行うのは一度だけです。また、いきなりすべてのルーチンタスクを管理するのは大変でしょうから、まずは少なめに入れて スモールスタート するのがベターでしょう。むしろ最初はスモールスタートでルーチンタスク管理に慣れつつ、少しずつ(システムに任せる)ルーチンタスクを増やしていく、というアプローチが有効です。

準備が終えたら、実際にルーチンタスク管理を運用する 運用フェーズ に入ります。運用フェーズでは、前述したリスト駆動生活に基づいて、日々マスターリストを見ながら、ルーチンタスクを一つずつ消化していく――という流れになります。

以下、各フェーズについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

フェーズ(1):洗い出し

ルーチンタスク管理を行うためには、そもそも管理対象であるルーチンタスクが必要です。

人は多数のルーチンワークを抱えていますが、そのすべてを意識的に把握しているわけではないので、まずは意識的に洗い出す 必要があります。手段は何でも構いません。

そうやって洗い出したルーチンワークですが、まだ不十分でしたね。システムで管理するためには、もっと細分化し、具体化しなければなりません。その作業によって生まれるのがルーチンタスクです。一つのルーチンワークから、複数のルーチンタスクが生まれることも多々あります。

ルーチンタスクはその性質上、リスト一行で済むくらいの具体的な文章になっているはずです。つまりルーチンタスクの洗い出しとは、ルーチンタスクという項目が並んだリストをつくることに等しいと言えます。

ルーチンタスクを洗い出したら、併せて付加情報も加えておきます。具体的には、ルーチンタスク各々について (一番直近の)実行日実行タイミングまたは頻度 を記述しておきます。たとえば「朝のゴミ捨て」は、実行日が 2018 年 10 月 30 日の木曜日で、実行タイミングは毎週月曜日と木曜日です。

このようにルーチンタスクを洗い出していくことは大変な作業ですが、ルーチンタスク管理をまわすためには必要な情報ですので、省略することはできません。

洗い出しができたら、このフェーズは終了です。

フェーズ(2):ツール選定

ルーチンタスク管理には、ルーチンタスクを管理させるツールが必要となります。

ツールの候補としてアナログとデジタルがあります。アナログとしてはA4ノート、日記帳、手帳などがあります。デジタルとしてはテキストファイル、日記アプリ、タスク管理ツールなどがあります。

どのツールを使うかは自由です。一般的には、以下の特徴があります。

ただし(特にデジタルツールについては)様々なコンセプトのツールがあるため、特徴をひとくくりでまとめることは、実はできません。上記に当てはまらないツールもあります。

フェーズ(3):入力

フェーズ (1) にてルーチンタスクを洗い出し、フェーズ (2) にてツールも決めました。いわばデータの準備と管理ツールの準備が済んだ状態です。

フェーズ (3) では、管理ツールにデータを投入する作業を行います。

アナログツールの場合、ペンなどでルーチンタスクを記入していくことになります。デジタルツールの場合、キーボードでルーチンタスクをタイピングしていくことになります。あるいはスマホでメモアプリやタスク管理ツールを使う場合は、フリック入力などを使って入力することになるでしょう。

もちろん、ルーチンタスクには実行日がありますから、適切な日付(を表す記入先)に記入する必要があります。

フェーズ(4):運用

準備フェーズを終えると ルーチンタスクのデータが入力されたツール が出来上がっているはずです。

あとは、これを用いて日々のルーチンタスク管理を行います。つまり、毎日ツールを使い、今日やる分のルーチンタスクを確認して、一つずつ消化していくという流れです。

ルーチンタスクを消化した時は、何らかのチェックを付けます。アナログツールの場合、打ち消し線を引いたりチェックマークを付けたりするでしょう。デジタルツールの場合は、完了を表す操作があると思いますので、それをします。そうやって今日やる分のすべてを消化できたら、今日は完了です。

なお、消化したルーチンタスクは、翌日以降に再配置しなければなりません。アナログツールだと、これがとても面倒くさいのですが、デジタルツールだとツール側で再配置してくれるものもあり、とても便利です。実際、私はデジタルツールを使っています。

おわりに

本章ではルーチンタスク管理には 4 つのフェーズがあることを説明しました。イメージを掴んでいただけましたでしょうか。

次章では、各フェーズの詳しいやり方や注意点などについて、細かく見ていきます。実際に手を動かしていただくエクササイズも用意しましたので、適宜活用してください。

<第二部>ルーチンタスク管理環境の準備

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参考までに、以下は本書の目次です。(リンクは機能しません)