社員ウォレット(Employee Wallet)とは、社員ひとりひとりに月n円の予算を与えることです。社員各自が好きなSaaSを契約できます。
シャドーITは難しい問題です。
これをシャドーITのジレンマと呼びますが、社員ウォレットなら軽減できます。
まず使えるツールは自由に選べるので、ツールの利活用を当たり前とする人材も生きながらえます。しかし、ウォレットとして全社的に可視化はされているので、悪さに関する抑止力も働きます。
仕事道具が重要であることは言うまでもありませんが、現代はITの力で成り立っています。よってIT的な道具が重要です。
一方で、このような視座を持てず、未だに原始的な対面口頭会議や昔ながらのプロセス・ルール・ツールへの現行踏襲が蔓延しています。
社員ウォレットを導入すると、誰が・どこが、どんなツールを使っているかがわかるので、ツールを使うという視座に立ちやすくなります。
ツールにどれだけ頼るかは、多様性と言えるほどあり方が分かれるものです。
使う派の人に使わせないのも、逆に使わない派に使わせるのも、どちらもハラスメントと呼べるほどのキツイ行為です。
※生産性はツールを使った方が出るので、生産性向上の観点からは使うことが推奨されます。が、この議論は次の 4: でします。
ですので、どちらの側か(どちらの比重が重いか)を知ることは多様性の面では重要です。社員ウォレットを使えば、誰が何を使っているかが見えるので、データとして把握できます。
たとえば「これとこれを使える人」とか「ツールの指定は無いので各自上手くやってください」といった形で要員をフィルタリングすれば、ミスマッチを防げます。
いきなりこんな事を言われても意味がわからないと思いますが、社員ウォレットを導入した後なら通じます(2: の視座ですね)。
道具に頼った方が生産性は出ますし、快適(QoW(Quality of Work) 仕事の質が上がる)なので満足度も上がります。
デスクワーカーも同じです。古典的な人はピンと来ないでしょうが、すでに様々なSaaSが出ており、これらを知っていて使えるかどうかで大きな違いが生まれます。
スマホを使っている人は、すでにアプリの形でその恩恵を受けているはずです。仕事も同じで、要は色んなアプリを使えた方が良いのです。ビジネスに関する有償のSaaSは数多いですが、まさにそういう理由です。
社員ウォレットを使えば、全社的に「使ってもいいんだ」との啓蒙も進みますから、控えめに言っても生産性とQoWが底上げされます。
別の言い方をすると、上司承認を回避してください。
大前提として、個人の道具は個人が自由に使えるべきです。上司やその他マネージャー等の承認など要らないはずです。
しかしガバナンス上、何も管理しないのもマズイですから、全社的に一元管理します。
管理するという意識では、いたずらにきつくなりがちです。たとえば「使ってもいいSaaS」の選択肢が狭くて事実上役に立たない、はあるあるです。
管理というよりは、可視化の意識で望んでください。
基本的に何を使っても許します。ただし、全部可視化はしているので状況はわかりますし、見えてもいるので社員視点でも抑止力になります。
また、可視化のメリットは他にもあります。
1: でも述べましたが、社員ウォレットは「各社員が自分個人の道具を使う」ためのものです。
ですので、プロジェクト内で共通的に使うようなツールは、社員ウォレットではなくプロジェクトの予算などで買ってください。ここを混同してはいけません。
月n円分を必ず使えとか、使用料をKPIにして促進させるといったことは絶対にNGです。
メリットの項でも述べたとおり、ツール利活用にも多様性はあります。使わないという選択肢も尊重してください。
半期ごとに申請して以後切り替えできない、といった運用もあるあるですが、極力避けてください。
ツールの変更はよくあることなので、自由に切り替えられるようにするのが望ましいです。
ここからは、この社員ウォレットなる仕組みをどうやって実現していくかを扱います。
現状そのようなシステム、ツール、アプリは無いと思いますので構築が必要です。
小規模な組織であれば、手作業的な運用でもカバーできるでしょう。たとえば Excel やスプレットシートは言うまでもなく使われますし、社員ウォレット自体はただの「利用状況の可視化」ですから、正直どうとでもなります。
しかし、手作業が面倒くさいと、それだけでハードルとなってしまって利用が遠のきます。いちいち帳簿に記入して、なんてやってられないですよね。なので、できるだけシステム面はきちんと整備して楽をしたいです。
昨今のSaaSはそれなりに高いこともあり、最低でも1500円、できれば2000円欲しいです。500円や1000円では、正直使えるSaaSが少ないと思います。
全社的な定性アンケートやエンゲージメント調査をします。定性というのは、具体的な改善金額や時間などを問うのではなく、主観的な満足感を問うというものです。
社員ウォレット導入前に一度実施します。そして、導入後にも定期的に実施します。導入前後で如実に増加するはずです。
メリットの項で述べたとおり、純粋にメリットが大きいので、基本的に増加すると思います。増加しない場合、おそらく以下が当てはまります。
上手いやり方としては動的な更新一択です。
許可リスト的か拒否リスト的かは本質ではありません。日々、色んな社員が色んなツールを使いますので、それらの可視化を常にウォッチして、その都度許可リストや拒否リストを更新します。そんな動的なあり方で運用せよ、ということです。
というのも、動的な更新にしない限りは融通が利かないからです。ツールの多様性を舐めてはいけません。誰が何のツールを使うかは想像以上に多様であり、事前に把握しきるなど不可能ですし、いたずらに狭めるべきでもありません。
社員ウォレットの成否は、この動的な更新を実現できるかどうかにかかっています。
動的な更新ですが、特定部門が承認を抱えるとボトルネックになってしまいますので、全社員の数の力を使います。
システム上を全社員誰でも読み書きできるようにして、議論できるようにするのです。それを踏まえて、意思決定権を持つ代表部門が許可 or 拒否を出します。あるいは、意思決定者のバイアスが不安なら、多数決で取る、クリティカルな否定的材料が出なかったら原則許可する等が良いでしょう。
会社のクレカ or 個人のクレカで立て替えの二択ですが、後者が良いです。
現状、後者でないと、社員ウォレットレベルの融通は確保できないと思います。前者だと経費を司る部門やシステムがボトルネックになってしまいます。
SSO(シングルサインオン)など、セキュリティ機能の整ったSaaSを使えば良いでしょう。
ただし、すでに述べたとおり、だからといって「これこれのツールだけ許可します」のようにすると多様性が損なわれます。バランスが難しいところです。
以下が望ましいです。
基本的には社員の裁量に任せます。チェックポイントとしては「精算時」と「使用前の相談」の二つを用意しています。
すでに述べたとおり、下手に管理を利かせるとそこが必ずボトルネックになってしまい、社員ウォレットは容易に形骸化します。
動的な更新もそうですが、この「融通の聞きやすいやり方」は、絶対に押さえてください。そんなことガバナンスとしてできるわけないでしょ、ではなく、このやり方で上手くやるには、を考えてください。それだけの価値がツールにはあります。
後者で良いです。
社員ウォレットとして、よほど利用者が多いものがあれば、前者のエンタープライズ向けプランを検討します。。この場合、社員ウォレットからは外して、全社員誰でも使える標準の道具という位置づけにします。
いくらセキュリティが高かろうが、最終的に情報を出し入れするのは社員本人です。この部分のガバナンスは不可能です。
一般的にはツールをそもそも使わせない方向できつくしますが、社員ウォレットでは想定していないので割愛します。そもそも、この場合も結局は後述の本質に帰着されます。
現状、契約や誓約(特に罰則)を課すくらいしかありません。
ツールの例としてわかりやすく、また大半が当てはまるということでSaaSという言葉を使っているだけです。それ以外のツールももちろん問題ありません。
ただし、サブスクリプション的な課金のツールだけ扱ってください。特にアナログなツール(文房具)などは買い切りが多いですが、買い切りも含めてしまうと経理側が苦しいと思います。