ASDと合理的配慮
📒まとめ
- 合理的配慮の対象として、ASD含む発達障害者も含む
- 合理的配慮は 2024/04/01 から義務化されており、圧力がさらに増している
- 合理的配慮は建設的対話により行っていく
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合理的配慮とは
定義
法律に基づき、事業主が講ずべき措置を指します。
この指針は、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下「法」という。)第36条の5第1項の規定に基づき、法第36条の2から第36条の4までの規定に基づき事業主が講ずべき措置(以下「合理的配慮」という。) *1
発達障害も含む
合理的配慮には発達障害も含みます。
障害者差別解消法の対象
【障害者】 本法における「障害者」とは、障害者手帳を持っている人のことだけではありません。身体障害のある人、知的障害のある人、精神障害のある人(発達障害や高次脳機能障害のある人も含まれます)、その他心や体のはたらきに障害(難病等に起因する障害も含まれます)がある人で、障害や社会の中にあるバリアによって、日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人全てが対象です(障害のあるこどもも含まれます)。 *4
合理的配慮の義務化 2024/04/01~
合理的配慮は努力義務でしたが、2024/04/01 から義務化されました *5。
🐰罰則はありませんが、法的にも世間的にも対応の圧力が増したと言えると思います。
具体的に何を行えばいいか
建設的対話が重要とされています。
合理的配慮の提供に当たっては、社会的なバリアを取り除くために必要な対応について、障害のある人と
事業者等が対話を重ね、共に解決策を検討していくことが重要です。このような双方のやり取りを「建設
的対話」と言います。 *3
合理的配慮の提供に当たっては、社会的なバリアを取り除くために必要な対応について、事業者と障害のある人との間で対話を重ね、共に解決策を検討する「建設的対話」が重要です。障害のある人からの申出への対応が難しい場合でも、障害のある人・事業者の双方が持っている情報や意見を伝え合い、建設的対話に努めることで、目的に応じて代わりの手段を見つけていくことができます。 *6
具体例はリーフレットで紹介されていますので、そちらをご覧ください。
🐰合理的配慮の例
例として発達障害に絞って 生成 AI にていくつか例を挙げさせた後、筆者目線でコメントしてみましょう。
合理的配慮の例
まずは生成 AI にて合理的配慮の例を挙げます:
- 1 フレックスタイム・テレワークの選択可:通勤ラッシュを避ける,環境調整しやすい自宅で作業。
- 2 静かな個室ブースやパーテーション席:周囲の雑音や視覚的刺激を抑えられるスペース確保。
- 3 ノイズキャンセリングヘッドホン貸与:聴覚過敏や集中力維持のため。
- 4 作業マニュアルの明文化・可視化:手順書やフローチャートを用意し,口頭だけでなく文書でも確認。
- 5 タスク管理ツールの導入:ToDoリストや進捗管理アプリでリマインド,優先順位付け支援。
- 6 こまめなフィードバックと目標設定:週1回程度の短い振り返りミーティングを設定。
- 7 メンター/バディ制度:経験者とのペアワークで不安軽減,質問しやすい環境づくり。
- 8 業務量調整・納期延長:初期はタスクを小分けにする,必要に応じて期限を柔軟化。
- 9 会議時間の短縮・アジェンダ明示:事前に資料と目的を共有し,「発言はチャットでも可」とする。
筆者コメント
次に、一部について、筆者目線でコメントします。
1 フレックスタイム・テレワークの選択可:通勤ラッシュを避ける,環境調整しやすい自宅で作業。
- 1 は非常にありがたいです
- 私は過敏で疲れやすく、燃費も悪いです。プライベートでも交友関係はゼロですし、現在は 5:00~21:00 の朝型で生活していますが、これも人混みを避けるためです。この朝型だと昼食が 9~10 時、夕食が 15~16 時となるため混雑を回避できます
- また、私は ASD としてこだわりが強く、この生活リズムは休日、旅行先、年末年始などでも崩しません。残業などで乱れそうになる場合は、必ず抵抗します
- そんな私にとって、たとえば「10~19 時を勤務時間」とし、かつ「通勤」も行わせるような典型的なスタイルは非常に消耗します。ですので私はフルフレックス・フルリモートを要請します。
2 静かな個室ブースやパーテーション席:周囲の雑音や視覚的刺激を抑えられるスペース確保。
3 ノイズキャンセリングヘッドホン貸与:聴覚過敏や集中力維持のため。
- 出社する場合は、2 と 3 があるとありがたいです
- 周囲に雑音があると集中できないからです。私は普段はなるべく無音で過ごしています。テレビをつけっぱなしにするなどは考えられませんし、私生活でもピアノやペットの鳴き声や風鈴や Wii Fit などの騒音にはクレームを入れます。オフィスでも、過去は貧乏ゆすりやEnterキーをターンと強く叩いてうるさい人に直接注意したり、その人の上司に進言したりしました
- 耳栓やイヤーマフを使うのが最適ですが、使いすぎて耳の中がただれているので最終手段にしたいです。耳鼻科で薬はもらえますが、根本原因は「使いすぎ」であり、使いすぎをなくさない限りは解決しません。ですので、騒音源をなんとかしようと挑みに行きます
- 私はこのように敏感ですから、2 や 3 のような対処は必須です
- あるいは、出社するときは仕事を諦めて、出社時≒人と会って話す時、と割り切るのもアリです。最近はもっぱらそうしており、顔合わせ、1on1、発表や登壇、その他イベントへの参加時にのみ出社しています
4 作業マニュアルの明文化・可視化:手順書やフローチャートを用意し,口頭だけでなく文書でも確認。
- 4 については、必ずテキストでも残すと捉えていただければいいと思います
- 私は普段から必ずすべての打ち合わせについて、事前と事後の整理を行います。整理は書いて行い、打ち合わせもこれを見ながら行いますし、何なら授業のようにノートとして書きながら進めます。また議事録や録画が残っていたとしても、改めて(自分用に)自分の言葉でまとめなおしたりします
- 理由は二つあって、一つは暗黙的に理解する力がないので、明示的に言語化して書いて確定していかねばならないこと、そしてもう一つは脳内で複雑かつ瞬発的に処理できず、書いた言葉を見ながら考えるというスタイルにならざるをえないことです
- ですので、私が要請することは以下の二点です
- 1: 私が「こういうことですよね」と言語化して報連相しますので、応えてください。フィードバックをもらえない場合、私は自分の(おそらく精度の悪い)解釈のまま進めるしかありません
- 2: メモを取ったり、ノートを書いたりする時間と余裕を確保してください。少なくともこれが許されないほど慌ただしい場面では戦略になりません(ただし登壇・講師・その他発表などは事前に練習すればいいだけなので問題ありません)
5 タスク管理ツールの導入:ToDoリストや進捗管理アプリでリマインド,優先順位付け支援。
6 こまめなフィードバックと目標設定:週1回程度の短い振り返りミーティングを設定。
- 5 と 6 の部分、タスク管理は問題ありませんが、優先順位づけを間違うのでフィードバックはほしいです
- 問題はフィードバック頻度ですが、高頻度すぎたりアットランダムだったりするとマイクロマネジメントと感じられて、集中できません
- 私の場合、朝会や夕会といった「毎日」会議があることや、ペアプログラミングやつきっきりの OJT のような「常時拘束」は失敗の兆候です。このようなプロジェクトを完遂できたことは一度もありません。研修は問題ありません
- 経験的には週に一度会議をする + チャットなどで非同期的に随時報連相をする、くらいがバランスが良いです
- ですので、 たとえば朝会を行うプロジェクトがあって、私が参画したときに、私を朝会から免除できるかどうかは一つの目安 となります。頭ごなしに参加を強要すると、十中八九こじれます。私が ASD として朝会が苦手であることはわかりきっているので、プロジェクト側が折れねばならないのです
7 メンター/バディ制度:経験者とのペアワークで不安軽減,質問しやすい環境づくり。
- 7 はありがたいですが、ペアワークはやめてください
- ペアワーク(OJTもそうですが)は、言ってしまえば指導者側の働き方と過ごし方を強要されることであり、私におそらくそれに合わせられるだけの力はありません
- あるいはそれを合わせることが目的になってしまい、仕事どころではありません
- たとえば私はトイレは自分のタイミングで行きたいです。これを許容されなかったことが過去あり、仕方がないので私は自席でおならをしていました
- 詳しく解説すると、まず私にとってオフィスに集まるような場面はそれだけ大きな緊張を生みます。通勤によるストレスや、生活リズムの軽微な乱れなどもあって、お腹の調子は基本的に悪いです。普段は至って健康的であり、単にストレスフルというだけです
- 無論我慢はできますが、これの我慢をしながら、仕事も問題なくこなし続けられるほどの性能は私にはないようです。一方で、研修など受動的で、終わりや休憩が保証されている場合は何とか耐えられます。研修でも演習の多いものは危ないですが、こういう時間帯は抜けてトイレに行けたりするので困りません。メンバーは不審がったり、素直に伝えると苦笑したりします
- トイレ以外にも、私にはじぶんルールが多数あり、これらは仕事を成立させるために必要なことです
- ですので、ペアワークのように働き方と過ごし方や強要される営みそのものが筋違いなのです
- また「質問しやすい環境づくり」は、ひと工夫必要です
- たとえば、安易に「毎日出社して一緒に過ごす」だと、上述したとおり、働き方と過ごし方が強要されているので論外です
- また、私は自分から声をかけるのは苦手です。上手いタイミングを読めないらしく、物理的に声をかけないと進まないシチュエーションでは必ず揉めます。最終的に「75分に1回の頻度で声かけてるのに何がダメなんですか」「75分がダメならパターンを言語化して教えてくださいよ」「かけていいタイミングなんで読めません」「では、そちらが立て札で示すのはどうです?」なんてことになったりします
- 典型的には(多すぎない頻度の)定例会議にてまとめてQ&Aすることと、テキストコミュニケーションの手段を用意して随時非同期的に処理することの二点が重宝します
- つまり、私の場合、一言でまとめると「私の働き方と過ごし方を侵害しない形で Q&A をサポートしてほしい」です。侵害してくるメンターやバディは敵です
8 業務量調整・納期延長:初期はタスクを小分けにする,必要に応じて期限を柔軟化。
- 8 については、可能であればベストエフォートがほしいです
- 仕事は一般的に「締切」が存在し、締切までに終わらなければ残業をしてでも終わらせねばなりませんが、私にその適性がありません。長時間泥臭く立ち回ることで打開するのが苦手です。実際、普段プライベートでは泥臭さの定番「人付き合い」を廃しています。アラフォーですが、友達もパートナーもひとりもいません。そうしないと消耗しすぎて生活できないからです。泥臭さは性能に優れる健常者ができることであり、私は違います
- 代わりに、私は「毎日定時間の範囲で働く」「それでもできなければマネジメントが悪い」と考え、高頻度な共有や報連相を行うことでチームやマネージャーに情報提供をします。その情報を受けて、ベストエフォートの範囲内で活用してもらうことを期待します。締切を守るのは、それができる人達がやればいいのです。私は向いてません。代わりに、ベストエフォートでできるところまで支援します
- アジャイルと相性が良いです。アジャイルとは、方針程度は決めるが、必達の目標や締切は決めずに、できるところまでやって、その結果を振り返って次どうするかを決めていく(数週間など指定スプリント単位で回す)ものです。つまりベストエフォートなスタイルですね。私は迅速な行動と言語化、およびそのアウトプットの共有が得意なので、特に正解や予測が見えない中、探索的に明らかにしていく場面で重宝します
……いかがでしょうか。
改めて合理的配慮とは
そんな配慮なんてできるわけがないと思ったでしょうか。これはあくまで私の場合です。
私は自分の特性をよく理解していますし、仕事のやり方や考え方にも詳しい上に、必要に応じて「つくれる」ので、お互い探るまでもなく「私が出す配慮案になるべく応えてください」とのスタイルになります。マネージャーのあなたがやることは、私の案にどれだけ歩み寄れるかを検討することです。無論、私も自分が完璧などとは思っているはずもなく、議論する前提でいます。お互いがすり合わせていくのです。それが対話だと思います。
「うちはこういうやり方なんだから、いいからお前も従え」は論外なのです。むしろ逆で、それで済まないわけですから、「いいから配慮しろ」なのです(Consider or Conflict(CoC原則))。無論、私側(ASD 部下側)の言い分を常に全部認めるわけにもいきませんから、配慮する前提で、どこまでやるかをすり合わせます。それが合理的配慮です。
といっても、私の場合は特殊です。通常はマネージャー側も、ASD 部下も、どちらもここまで詳しくはないと思います。お互い何もわからないまま、手探りですり合わせていくことになります。しかし、それだと時間がかかりすぎますし、パワーバランスや階層的価値観から考えても、良くて平行線、悪ければ衝突にしかなりません。
手段を知ってください
このドキュメントは、そんな膠着を何とかするためのものです。
合理的配慮――個別の特殊な対応がそもそも必要である点を述べた上で、それをするために必要な道具を多数紹介します。
このページでもヒントは書いていますね。フルフレックス、テキストコミュニケーション、非同期的、タスク管理ツールなどいくつかの言葉が出ていますが、あなたはこれらの意味を理解できますか?理解しているとして、ではどう適用すれば良さそうかを検討できますか?
できねばなりません。
多様性全般にも言えることですが、結局ただ単に「こういう特性があります」「配慮してね」だけでは何もできないのです。マネジメントを行うあなた自身が抽象的な概念や方法も含めて理解し、検討して、具体的な配慮として落としていかない限りは、何も変わりません。
何度もいうように、合わせられるのなら ASD だの発達障害だのというラベルなんて要らないのです。それができないからこその ASD であり、障害という名がついているのです。仕事と同じで、やるしかない。やるための力を、知識を、経験を積んでいくしかないのです。
参考