できる人はできない人を理解できませんが、それはインプットも同じです。
「なんで概要理解だけでウン時間もかかるの?」 「スキルあるって聞いてたんだけど?」 「これ読んでこのとおりにやるだけですけど……」 などはあるあるだと思います。
プロジェクトや何らかの作業における「インプット」を素早く理解できない人達がいます。これをタイニーヘッド(Tiny Head)と呼びます。
タイニーヘッドの概要と対処法を見ていきましょう。
その名のとおり、頭が小さいというニュアンスです。
もっというと脳が小さい、さらに言えば記憶や処理の性能が乏しいというニュアンスです。
わかりやすさを優先した用語であるため、使う場合は注意してください。
特性と知能によるものと考えられます。
ASDはあると思います。
ASDはコミュニケーションの機微がわかりません。機微を悟るための回路が壊れているようなものです。この力は物事の理解全般でも使えるもので、これを使えないというのは大きなハンデとなります。
他にも、このように脳の特性上、特定の処理に関してハンデを負ってしまう例はよくあります。
知能もあります。端的にはIQでわかります。
※IQは短絡先だと捉える人は多いですが、純粋に知能の良し悪しを見るなら端的な指標です。
要は知能が高い人はインプットも楽に行えますが、知能が低い人は時間がかかります。
これは会話をどれだけそつなくこなせるか、特に上手いことを瞬時に言えるかで推し量れます。人付き合いが苦手な人でも、知能が高い人はできます。
一方で、経験やスキルは関係がありません。
なので、経験もスキルもない新人でもインプットはスムーズにできますし、逆にどちらも豊富なベテランであってもインプットが壊滅的に遅いこともあります。
できる人はかんたんにこなしてしまいますが、そもそもインプットという営みは難しいものです。
というのも、私たちが思っている以上に、プロジェクトや作業のインプットは「情報量が膨大」だからです。
人付き合いと一緒ですね。できる人や慣れた人は難なくこなせますが、出来ない人はとことんできません。
別の言い方をすると、機械で代替できないのと一緒です。なぜ代替できないかというと、情報量が膨大すぎて、それらすべてを機械に落とし込めないからです。
PC上の手作業をプログラムコードで自動化する潮流もありますが、多くの場合、専門的なエンジニアが顧客の事情も踏まえて念入りにつくりこむことで、ようやくで、部分的にできるかどうかというのが現状です。
余談ですが、だからこそDXではそもそも「デジタルの流儀」に、「私たちが」合わせることを要求します。私たちが抱える複雑な状況をそのままインプットにするのではなく、そもそもデジタルで扱える程度の単純な世界に、私たちが合わせろよというわけです。
もちろん小手先で行えることではないので、どかっとやらねばなりません。この点は『仕事術2.0』でもすでに述べたとおりです。
よくある疑問が「勉強できる人なのにインプットが遅いのはなぜか」ですが、これもインプットの難しさを軽視しすぎです。
勉強とインプットは全然違うものです。
勉強は「マイペースに落ち着いてできる」し、「そもそも偉い人達によって理論的にわかりやすい整備されている」ので、ある意味かんたんです。
一方、インプットは状況も慌ただしく、締切や管理もきついですし、インプットにあたる人達や資料も「素人が」「片手間で」整備したものです。ひどい場合、その場の口頭で思いつきで喋ることもよくあります。
全くジャンルが違うのです。格闘ゲームと現実の殺し合いくらいに違います。
以降ではタイニーヘッドを扱う人向けの、扱い方の話をします。また、タイニーヘッドである皆さんに向けての立ち回り方も話します。
扱い方は大まかに以下の 3 通りに分かれると思います。
### 1: とりあえずインプットを全部与える、をやめる
新人に仕事を教える際、マンツーマンで高密度に教えるか、インプットを与えてしばらくやらせてみるか、をすると思います。
※マンツーマンの場合は取り上げません。インプットの与え方が違うだけで本質的には同じです。
しかし、そもそもタイニーヘッドはインプットを現実的な時間で受け付けるだけの能力がありません。能力がないので、経験を積んで何とかなるものでもありません。正直言って不毛です。
「インプットを全部汲み取って上手く動いてくれる戦力」になることを期待するのはやめましょう。
代わりに、インプットをあまり使わずに仕事ができるように、仕事を切り出して渡すようにします。
たとえばコンビニなど慌ただしいフロアでの接客員を想定して、タイニーヘッドに従来の接客員になってもらうことを期待するのは無謀でしょう。なので「接客だけしてもらう」「接客は免除して品出しなどの作業だけしてもらう」などの工夫をします。
特に日本では平等主義が強く、全員が一人前にならねばならない的な強迫的な信念がしばしば発揮されますが、アンチパターンです。
※かといって海外だとジョブ型的で「与えられたことしかしません」で融通が利かなかったりします。
タイニーヘッドには通じないので、そこは飲み込んで融通を利かせましょう。1の活躍は諦めるのです。0.5でも、ないよりはマシではないですか。1の活躍を強要して、上手くいかずにお互い高負荷になるという被害よりは断然マシです。そういう状況になるのだと受け入れてください。
むしろ、特定の仕事に集中させることで、結果的に1以上の貢献に繋がるかもしれませんし、せっかくなのでこれを狙ったほうが建設的です。
タイニーヘッドはインプットに時間がかかりますが、完了しさえすれば人並以上にバリバリ働けるかもしれません。
もし、そのような素養が感じられるなら、辛抱強く待つのも一つの手です。平均的な新人なら2日でインプットを終えるのに、1週間経ってもまだ立ち上がらない……なんてことがあったとしても、待つのです。素養があるなら、あとからいくらでも挽回できます。
このやり方を取る場合に、重要なのはマンツーマンで付き合おうとしないことです。タイニーヘッドはそれぞれ自分独自のインプットの仕方を持っており、指導や監視などの拘束の強いスタイルは邪魔になります。
管理したい気持ちはわかりますが、そこはグッと堪えて、待ちましょう――と、言葉で言うのはかんたんですが、これは非常に難しいです。とんでもなく難しいです。
たとえば「毎日進捗確認しよう」くらいは当たり前に考えるかもしませんが、これも管理過多である可能性があります。タイニーヘッドの感覚を舐めてはいけません。当人とちゃんと対話して、当人にとってストレスのない負荷で進捗を見る必要があります。
そもそもそれだけの素養を持っていることは稀なので、安易にこのやり方を使うのは控えた方が良いでしょう。素養があるなら、わかります。明らかに周囲とは比較にならない、何らかの突出した能力を観測できるはずです。そのような場合に、その人を生かしたいというときに、この 2: のやり方が使えます。
たとえば、ゼロからイチをつくるような創造的な仕事を与えましょう。任せましょう。無いのであれば、その捻出から任せてもいいでしょう。
当サイト『仕事術2.0』では、様々な「仕事のやり方や考え方」を扱っています。参考になると思います。
つまり仕事のやり方や考え方を洗練させることもまた仕事だということです。直接お金になる作業をすることだけが仕事ではありません。
とはいえ、そんなことをさせるほど余裕がないのが現状でしょう。ですからタイニーヘッドを使うのです。タイニーヘッドはどうせ役に立ちません。だったら、このような仕事のための仕事をやらせてみようではありませんか。
結論を書くと、自己理解とアピールが重要です。
自分の武器があるとなお良いでしょう。「インプットが必要な従来の仕事はできないけど、武器を使ったことならできそうだ」という自然な体裁が整います。
タイニーヘッドの立ち回りも三点ほどあると思います。それぞれ見ていきます。
※転職など合わない場所からさっさと移る案は扱いません。そもそも、どの職場であっても「インプットは誰でもできる・するべき」は存在するので、タイニーヘッドとしての立ち回りを開拓しない限りは上手くいきません。
すでに述べたとおり、タイニーヘッドはインプットを現実的な時間で受け取るのが困難です。向いていません。特性なので経験でどうにかなるものでもないと思います。
諦めてください。まずはそこから始まります。
自分の特性を理解し、言語化し、伝えられるようになりましょう。 「タイニーヘッド」という言葉も、まさにその一つです。
とはいえ「タイニーヘッドです」と言っても通じないので、自分なりに説明しましょう。この記事を見せても構いません。
他にも、当サイトでは様々な仕事術(仕事のやり方や考え方)を扱っています。自身の特性を理解する上でのヒントになるはずです。
言語化ができたら、それを伝えることができます。
伝えられたら、対話や議論ができます。
ここまで来てようやくスタートラインに立てます。インプットができる人達にはできませんから、タイニーヘッドであるあなた自身がやるしかありません。
自分の得意や好きを磨きましょう。そして、それをアピールしましょう。それでメシを食えると最高です。
一つ言えるのは、周囲にはまず伝わらないので、くどいくらいにアピールしましょう。
提案の余地は意外と色々あります。
たとえば配信が得意な人なら「社内で配信で困っている人達を助けられますよ」「配信エバンジェリストになります」「日々情報発信しますし、相談にも答えられます」「私自身もデモしましょう」のようなアピールができるでしょう。実際、それなりの大きな会社であれば、イベントを配信する機会はそれなりにありますが、素人が行っているのが現状であり、配信者としてバリバリやっている人であればもっと上手くやれる余地があります。
配信の力は仕事には役に立たないと思われがちですが、このとおり、考え方次第でどうとでもなります。あなたが本当に配信が得意なら、これくらいはすぐに気付きます。そういう意味で、自分の目で見てすぐに「もっと上手くやれる」と気づいたものは武器候補になります。
アピールの必要性をもう少し補足しておきます。
大前提として、インプットを難なくこなせて仕事する大多数の人達は(その代償として)このような考え方が苦手です。
仕事のやり方や考え方が様々存在することや、これらを変えたりつくったりするという視座がわからないのです。インプットをこなせるほど性能が高いので、そもそもそういったことを意識する必要がありません。やり方や考え方にずぼらな、いいかげんな人達です。天才というと、細かいことにこだわらない汚い感じをイメージしますが、まさにあんな感じです。
だからこそ、そんないいかげんでずぼらな人達にわからせるために、しつこいくらいアピールする必要があるのです。
ちなみに、現実的には自分の提案が100%通ることはほぼなく、「この人達何もわかってないよなぁ」とうんざりするような、見当違いの配慮が来ることがほとんどだと思います。
そういうものだと、受け入れてください。あなたがインプットを上手くこなせないように、皆さんもあなたの提案をすんなり理解することなどできないのです。これも特性です。
見当違いの配慮であっても、少なくとも何の配慮もなかった頃よりはマシなはずです。マシであればまあいいか、と考えます。現実はそういうものです。
それでもアピールを続けたり、配慮された仕事で結果を出すことによって、事態は変わってきます。組織なのですぐには動きません。年単位、あるいはそれ以上かかることもあるでしょう。どうか焦らずに、のんびり過ごしましょう。