workhack2.0

今後さらにAIエージェントが盛り上がると、誰もがn人のAIメンバーを指示監督することになるでしょう。万人に経営者の資質が求められると言えます。

このような現象を、あるいはこのような資質を入手・鍛錬する取り組みをエグゼクティビゼーション(Executivization)と呼びます。

本質は意思決定

エグゼクティビゼーションの本質は、意思決定です。

己の信念と、己を取り巻く文脈を踏まえた上で、何をやらないかを決めます。捨てることの重要性は当サイトでも強調していますが、 かんたんなことではありません。本来は経営者が行う営みです。

人間にせよ、組織にせよ、リソースは非常に限られているので「何をやらないか」つまりは「何を捨てるか」が非常に重要です。意思決定とは、まずは捨てることなのです

※経営者は捨てることをマスターした冷酷な前進者と呼ぶこともできます。よって、経営者は超合理的で冷たいか、傲慢な人間に見えることが多いです。

つまり経営者の資質とは、捨てるための意思決定の資質と言えます。エグゼクティビゼーションとしても、まずはこれを入手・鍛錬することを目指します。

マネージャーとは違う

ここで「それはマネージャーではないか」と思われるかもしれませんが、マネージャーと経営者は違います。

マネージャーが行う意思決定は限定的で、必要なのは文脈だけです。自分の信念は要りません。

実際、自分の意思を介在させず、組織のプロセスに従うだけのプロセス原理主義者はよく見かけるかと思います。こうすると自分を出さなくていいし、「だって組織がそうなってるんだもん」の一言で責任も逃れられる、かつ権力も行使できるので楽なのです。そういう意味では、マネージャーは実は楽な仕事の一つです。

エグゼクティビゼーションを行う

経営者としての意思決定能力、特に捨てることを身につけるためには、どうすればいいでしょう。5点で整理します。

キーワード:軸、エージェント、余裕、ボトルネック

1: 軸の運用

軸(信念)をつくって言語化します。意思決定を行うには何らかの軸が必要だからです。捨てられない人は、単に軸がなくて何を基準にして捨てればいいかがわからないだけです。軸の言語化には内省が使えます。

かつ、言語化した軸は、エージェントに伝えなければなりません。継続的な啓蒙も必要です。

2: 権限委譲する(エージェント化)

権限委譲した対象をエージェントと呼びます。エグゼクティビゼーションでは自分で手を動かすのではなく、エージェントを運用します

よって、そもそも権限委譲できなければ話になりません。権限委譲とは管理を手放すことです。エージェントに仕事を任せて、自分はその結果や進捗をチェックし、必要ならフィードバックを出すだけです。

3: エージェントの役割分担を最適化する

エージェントには向き不向きがあるため、適材適所を推進する必要があります。無能な経営者は一律的なやり方を課しがちですが、これが機能するのは「単純な作業で通用する世界」と、あとは「搾取」だけです。

※資本主義的には搾取が正解なのですが、ここでは割愛します。

また、向き不向きは能力だけではなく、働き方も当てはまります。仕事と働き方の分離であり、それぞれに向き不向きがあるのです。働き方は一つしかないから何かしら決めて全員従わせればいい、は原始的な搾取的発想にすぎません。

AIエージェントを例にすると、モデルによって料金が違いますよね。ChatGPT で言えば、4o-mini モデルは安く、o1 pro モデルは非常に高価(月3万ドルのサブスク)です。

おそらくは、4o-mini のような安いモデルを普段はたくさん使って、o1 proのような高価なモデルはここぞで使うはずです。全部同じ使い方をする、なんてしないですよね。これは料金と性能のトレードオフに応じた役割分担をしている、ということです。

同じことです。料金と性能以外にも検討すべき因子はたくさんあるのです。無論、あらゆる因子を完全に理解して配慮するなど不可能ですが、その姿勢は諦めてはいけません。

4: 余裕をつくる

VUCAな時代への適応は生半可ではありません。軸のメンテナンスはもちろん、時代の動きもキャッチアップして備えていかねばなりません。そうでなくとも、緊急事態が生じることもよくあります。

こういった備えや緊急対応をするためには、物理的な余裕が必要です。当サイトではスラックと呼んでいます。

たとえば1日2時間、誰にも邪魔されずに考え事やインプットに耽けることのできる時間を取れるでしょうか。

5: ボトルネックを省く

エージェントの運用は、特に人数が増えて組織となってくると依存関係が複雑になってきます。組織には、構造的に「詰まっているポイント」があり、これをボトルネックと呼びます。

ボトルネックの解消は経営者の仕事です。組織全体を制御する権限を持ち、軸をもって運用もしている経営者にしかできないことです。

※もちろんボトルネックの解消自体はエージェントに任せた方が良いでしょう(権限委譲)。