ノウハウでもノウフーでもない、第三の「情報共有の仕方」あるいは「仕事のマッチング」の仕方について見ていきましょう。
ナレッジとしての自分(Self As A Knowledge)とは、自分が持つナレッジをしっかりとアピールすること、特にそうしたものを指します。
採用の文脈では職務記述書(Worker Decription)を書きます。仕事(ジョブ)に関する記述であり、要は求人票ですね。一方、ナレッジとしての自分では、労働者自身が自分のナレッジをアピールしたものを書きます。
あえて言うなら人材記述書(Worker Description)です。
社内転職含む社内の「仕事のマッチング」を盛り上げることです。
ここで既存との違いを深堀りしておきましょう。
Ans: ナレッジとしての自分は「ナレッジ」を表現します。
ナレッジとは、アピールできそうな知識・経験・所有物・肩書やステータス・趣味など何でも含みます。形式にも指定はありません。つまりアピールできそうなものは何でも詰め込めていいです。
一方、履歴書や職務経歴書は、何をどう書くかがほぼ決まっており、極めて形式的なものです。
Ans: 違います。
まずノウハウとは How(どうやるか)を言語化、特に手順化や文書化したものです。手順やマニュアルと呼ばれることが多いですが、要はやり方を言語で整理したものですね。
次にノウフーとは、「ある問題Xの解決にはナレッジKが必要である」が見えている前提で、Kを持つ人を探す or 探せる仕組みを整えるものです。人材管理システムの類で試みられることが多いですが、まともな成功事例は聞いたことがありません。現代でもまだまだ口づてベースです。
さて、ナレッジとしての自分ですが、どちらでもありません。ノウハウのようなただの「やり方の言語化」ではないですし、ノウフーのように「問題Xを解決するためのKを持っているかどうか」を見るものでもありません(ノウフーとして使うことはできる)。もっと開放的で、限定しないものです。
ナレッジとしての自分をどう運用するか、を軽く整理します。
役割は以下の二つです。
ワーカーが自分のナレッジを表現して公開し、シーカーがそれを見ることでマッチングを考えます。必要なら対話もします。
再言及になりますが、ワーカーがつくった「自分のナレッジをまとめたもの」をワーカー・ディスクリプション(Worker Description)と呼びます。
ナレッジとしての自分は、とにかく幅広くリーチすることを大前提に置いています。
たとえばワーカー・ディスクリプションは社内全体に公開しますし、社員全員がシーカーです。
誰もが志願者であり、誰もが採用担当なのです。もちろん、マッチング自体は然るべき人物が然るべきプロセスを踏むでしょうが、それ以前の情報共有、対話、調整などを活発化するために、こうして幅広くするのです。
ワーカー・ディスクリプションは、記事や動画のように公開しておきます。
また、シーカーはいつでも読むことができますし、生成AI経由で要約や検索をしてもらっても構いません。むしろ推奨します。
どんなナレッジがいつ誰の役に立つかなんてわからないのですから、とにかく情報をたくさん詰め込み、好きに読むことを前提につくりあげてください。
典型的には、以下のようにするといいでしょう。
仮に従業員1000人の会社なら、1000個分のワーカー・ディスクリプションが並ぶことになります。もちろん、全社員は誰でもいつでも見に行けます。
細かい運用は各自整備してください。
たとえばシーカーが「気になるので話を聞きたい」と思ったときの連絡先はどうするか。ワーカー・ディスクリプションとして必ず書いておくように定めるといいでしょう。
###
フォーマットやテンプレートといった形で書き方を指定する例はよくありますが、いけません。ナレッジとしての自分の最大の価値である「ナレッジの多様性」が削がれてしまいます。
形式をなくして、本人に、自由に書いてもらうからこそ多様になり、面白くなり、読まれて、対話も生まれて、と盛り上がっていくのです。形式の指定は、絶対にやめてください。
連絡先を必ず書かせたい、などの指定が必要でしたら、形式ではなく単に「何を書かねばならないか」だけ定めてください。
ナレッジとしての自分には、以下のメリットがあります。
当サイトでは「ソリッドキャリア」として言語化していますが、現代の人材マッチングは、固定的なポジションと記述書を用意して、それにマッチする人材を探すという「融通の効かないやり方」をしています。
社外はともかく、社内でしたら、もっと融通を利かせていいはずです。そのためにはソリッドキャリアの考え方そのものから脱する必要があります。ナレッジとしての自分は、まさに脱するためにつくった、新たなマッチング方法です。