原則:トリックスターの原則
サマリー
- ASD 部下は標準的に貢献させるよりも、逸脱的な貢献を狙わせた方が良い
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背景とアプローチ
- 半人前の原則のとおり、標準的な過ごし方では ASD は生かしきれない。下手をすればマイナスになる
アプローチ詳細
- 生成AIを使う場合と同じ考え方を採用する
- 原則1: インプットを与えて、任せてみて、その結果をレビューする
- 原則2: 結果が芳しくない場合、インプットが悪いか、そのタスクが向いてないと考える
- 原則3: 任せたタスクが成功する前提で考えない。失敗しても問題ないか、リカバリできる範囲で任せる
- まずは「仕事のうちどの部分なら任せられそうか」を探したい
- どういう仕事なら得意なのかを見極め、それを選任させる。また苦手ジャンルからは引き離す →見極め
- 「まとまった仕事」の単位にとらわれず、必要なら分解や切り出しを行う
- 例
- ❌「うちのメンバーは顧客ヒアリング、ソリューションの実装、提出後のフォローまでトータルでやるからあなたもそうなってね」
- ⭕「議事録の記録、管理、共有が得意なのでその要員としてフル活用させてもらいます」
- ⭕「ドキュメンテーションが得意なので、ドキュメントや広報向け文章など文章作成を重点的にやってもらいます」
- 典型的な仕事が難しそうなら、他のネタを考える:
- ネタ自体を ASD 部下に出してもらうのも良い
- 中長期的に考えていきたいこと、備えておきたいこと、実は改善したいことを任せてみるのも良い
- 🐰通常はマネージャーかそれ以上のポジションが行うことです。このような仕事を ASD 部下にやってもらうことに抵抗感を抱くのはあるあるですが、まずはやってみてください。上記のとおり、ASD には常人離れした強みがあるので、期待以上のアウトプットを出してもらえる可能性があります
- 内部コンサルタント(チームや組織の一員として、そのチームや組織自体をコンサルする)、新技術・新ツール・新概念の検証報告や教育啓蒙の専任者あたりは比較的生かしやすい
- 最大のボトルネックは マネージャー側に、ASD 部下のアウトプットを確認して次どうするかとの意思決定を行えるだけの時間が無い こと
- 🐰トリックスター原則に則れるかどうかは、ここにかかっています。少なくてもいいので 時間を「実際に取ったか」「取り続けているか」がすべてです。行動をもってのみ ASD 部下の真摯な活用を証明できますし、そうして実際にアウトプットにフィードバックして循環させていかない限り、何も変わりません
- 定期的に確保してしまうのが良いでしょう
- 例:
- 週に一回、30分のレビューを設ける
- 週に一回、1時間の報告会を開催する。入退室自由。録画しており後からキャッチアップも可能(ASD部下は参加者0人でも実施する)
- アウトプットは随時共有し、かつコメントや Q&A や打ち合わせ依頼も随時受け付ける
- 🐰「空いたときに見る」などベストエフォートは、経験的に十中八九失敗します。余裕のある人間でも難しい営みなのに、普段から忙しくて、かつ ASD 部下に期待していない状態なのです。まず間違いなく形骸化します
トリックスターの語源や定義
参考までに、この原則の名前に入っている「トリックスター」も解説しておきます。GPT-5 の結果を記載します。
要点
- トリックスターは「秩序や境界をかき乱し、ずらし、笑いや機知・詐術で世界を動かす存在」
- 物語・神話・心理・文化研究など多分野で用いられるアーキタイプ(型)
- 誤解されやすい点: ただの「嘘つき」「悪役」ではない。混乱を通じて更新や洞察をもたらす両義性が核
分野別の使われ方と定義
- 比較神話・民俗学
- 境界侵犯者・変身者・媒介者。タブー破りや悪戯で秩序を反転させ、結果的に文化や技術をもたらす「文化英雄」的側面
- 人類学・文化理論
- トリックスターは「リミナリティ(境界状態)」の体現者(V. ターナー)
- 社会の規範やヒエラルキーを一時停止・反転させ、「カーニヴァル的」解放(バフチン)を引き起こす。
- ユング心理学・臨床
- 心理的アーキタイプ。自我や規範に穴を開け、無意識の素材(シャドウ/内なる子ども)を噴き上がらせて個性化を促す「賢い愚者」
- 日本の民俗・大衆文化
- 民俗: 狐や狸の化かし、河童・天狗のいたずら。笑いと恐れ、教訓と解放の両義性
- 漫画・アニメ・映画: ルパン三世、バグズ・バニー、ジョーカー(系譜として)、デッドプール、マーベルのロキ、ジャック・スパロウ、チェシャ猫、Q(スタートレック)など
- デザイン・社会実践
- ネット文化: 「トロール」は悪質化したトリックスター的振る舞いの一種と説明されることがある