カルチャーマッチ(カルチャーフィット)採用が流行っていますが、これには人材の採用や活用のアジリティが上がらないというデメリットがあります。
このデメリットを軽減した、新たなあり方としてダイナミック・カルチャーマッチングを提案します。
カルチャーフィットとも呼びますが、以下のあり方を指します。
狭義では 1: だけを扱いますが、広義では 2: も含まれています。
企業の採用ページや紹介資料を見ると、よくビジョンやミッションやバリューといったもの、社員インタビューなど人の紹介、働き方や職場といった手段面の話などが強調されています。
これらはまさにカルチャーマッチ的です。
要は「うちはこういうカルチャーですよ」「あなたも従ってもらいますよ」「これら情報をよく見て、マッチすると思った人だけがきてくださいね」と主張しているわけです。
合わない人材を採らないためです。
まず日本では正社員を解雇しづらいため、合わない場合に詰んでしまいます。合わない人が一人でもいたら、チーム全体の生産性や快適性が落ちます。到底許容はできませんし、もちろん社員一人一人にもコストはかかりますから、無条件に抱え続けるわけにもいきません。
次に、実力さえあれば良かった時代でもなくなりました。現代はチームの時代ですし、VUCA 改め VUCARD の時代でもあるように水準も上がっています。チームとして上手く動けることが重要です。多少実力があっても、所詮個人にすぎずチームよりはショボいので、チームに馴染めないなら大した価値はない(どころか有害)なのです。要は、実力だけ見て採用すればいいとも限らないのです。
そこでカルチャーを持ち出して、これに合う人だけを採る、という風にします。このやり方なら比較的「合わない人だった率」を減らせます。
逆に言えば、「こういう人材なら合う」「チームの一員として適合しやすい」といったものを言語化したものがカルチャーだとも言えます。
人材の採用や活用に融通が利かないことです。
冒頭ではアジリティ(素早さ)を挙げましたが、これは融通の利かなさの一側面にすぎません。
カルチャーマッチは、言うなれば選別です。合わない人材を入れてしまうリスクは避けられますが、合う人材を入れるまでに時間がかかりますし、入った後も、カルチャーという単一の世界観に支配されてしまいます。
辛辣な言い方をすると、ミスマッチを許容できないから、カルチャーという基準をつくって選別することしかできません。仕事術(仕事のやり方や考え方)を、つまりは手段を知らないから融通を利かせられないのです。
そもそもマッチなんてそうそうするものではないはずです。時代はVUCARDなのです。世の中を舐めすぎです。まるで「気が合う人とだけ付き合いたい」とする学生のようです。
※もちろん気が合う人とチームプレイした方が仕事が上手くいくのは否定しませんし、現代では最適解だとも思います。ただ、そのせいで融通が利かなくなっている点にフォーカスし、提案を出すのが本記事です。
※カルチャーマッチで困ってないなら、本記事は不要です。しかし、困らないのも少人数のうちで、組織規模が膨らむとそうもいってられなくなります。あるいはティール組織を知っているならそれでもいいですが、本記事は別解を提示します。
カルチャーマッチの問題点である「融通の利かなさ」を軽減するための、新しい仕事術を提案します。
それがダイナミック・カルチャーマッチングです。
**ダイナミック・カルチャーマッチング (Dynamic Culture Matching) **とは、カルチャーマッチを動的に行うあり方を指します。
長いので、以下動的なカルチマと呼ぶことにします。
※カルチマ = カルチャーマッチングの略
従来のカルチャーマッチは、言うなれば静的なカルチマです。
一方、動的なカルチマは、次のとおりです。
動的なカルチマの本質を3点でまとめます。
カルチャーマッチの問題点である「融通の利かなさ」を軽減できる。
具体的には:
冒頭ではカルチャー(組織文化)と書きましたが、もう少し踏み込んで整理します。
動的なカルチマでは、デファクト・カルチャー(事実上のカルチャー)を扱います。
デファクト・カルチャーは、どちらかと言えばワークスタイルと呼ぶのが正しいです。
たとえばミッション、バリュー、ビジョンといったカルチャーらしい根幹があって、それらを満たすために「全員フル出社で密に過ごそう」などとするわけです.
ここで注目したいのが、フル出社であることがカルチャーの一部として事実上存在することです。
マッチングを行う際も「あなたもフル出社してくれますよね?」を見ます。フル出社できない人はアンマッチとなり採用されません。
しかし、これはワークスタイルがマッチしていないだけで、カルチャーがマッチしていないわけではないのです。
つまり「ただのワークスタイル」も事実上カルチャーとして扱われてしまっています。
動的なカルチマは、ここに抗います。
デファクト・カルチャーはただのワークスタイルですから、変えてもいいですし、複数が共存してもいいわけです。しかし、カルチャー側に組み込まれてしまう程度には根幹的なものですから、あまり無闇に乱立させるわけにもいきません。柔軟性と統一性のバランスが重要です。
以降からは動的なカルチマの運用方法に入っていきます。
動的なカルチマでは、人材を2種類に分けます。
マッチドは濃いチームワークを行います。
濃いチームワークとは、お互いを強く拘束して、仕事のためだけに高密度に働くことを指します。
同じ島で席を固めて、必要なコミュニケーションや議論はその場ですぐできてしまうような、あの感じです。あるいは、ITでいうペアプログラミングのようにペアを組んで役割分担して仕事をする潮流(ペアワーク)もあります。
この働き方は疲れるため、(スーパーマンの集団でもなければ)長時間はできません。定時間とされる7~8時間を保たせることさえ至難です。その分、休憩やカジュアルなコミュニケーションが増えます。
※この点は誤解しやすいので注意してください。マッチドだから長時間働けるわけではありません。それではただの搾取です。
逆に、アンマッチドは濃いチームワークができません。カルチャーを拠り所にしていないがゆえに、濃く過ごすことを許容できないからです。
つまり濃いチームワークが可能などうかで分けるとも言えます。
動的なカルチマを運用する際の、典型的な流れをまとめます。
まずはカルチャーを決めます。
このとき、本当の意味でのカルチャーと、ワークスタイルでしかない「デファクト・カルチャー」とを分けてください。特に、後者のデファクト・カルチャーまで言語化してください。
つまり実質的にワークスタイルまである程度は決まるはずです。よくあるのは、以下のようなものです。
このセットに全部従える、あるいは基本的に従える者がマッチドとなります。
社員をマッチド or アンマッチドに分類します。これをマッチングと呼びます。
マッチングのやり方はどうとでも決められるまで、ここでは扱いませんが、重要なのはタイミングに融通を利かせることです。もっと言えば状態を2つではなく4つにします。
マッチドでもアンマッチドでもない保留状態を設けます。しかし、どちら寄りなのかは決めます。こうすることで、誰がマッチになりそうか、あるいはならなそうかといったことがわかるので、マッチングの前時点で立ち回りや戦略を考えやすくなります。
運用的には期間(マッチング期間)を求めて、それまでにマッチングを行うでしょう。そして期間をすぎたら、以降はマッチドは濃いチームワークで、アンマッチドはそれ以外の仕方で働きます。
マッチング期間中は、すでにマッチドになっている人は濃いチームワークができます。また、ライクリーの人も、本人が望むのであれば可能です。かつ、ライクリーですので、濃いチームワークに誘われることは許容されます。
期間が過ぎたら、マッチドかアンマッチドかのどちらになります。例外はありません。決まらない人は、無理矢理にでも倒してください。このとき、濃いチームワークを行える能力の有無で見るといいでしょう。ある場合はマッチドに、ない場合はアンマッチドに倒します。
マッチドは濃いチームワークで働き、アンマッチドは濃いチームワークの外で(あるいはスポットで混ざっても良い)働くことになります。
具体的な連携方法は割愛しますが、たとえば当サイトでは先日「ワーカー・トライアングル」仕事も三者で捉えるを紹介しました。
ワーカーやヘルパー、特に direct な人達は濃いチームワークが適しているでしょう。
もう一つ、取り上げておきたいのがチェンジの概念です。マッチド or アンマッチドは、(マッチング期間の外であっても)必要に応じて変えることができます。
何なら「今週プライベートが忙しいからアンマッチドになります」のような融通も可能です。
本質はマッチドとアンマッチドという概念が存在することで、社員たちが主体的に「濃いチームワークができるかどうか」を調整できるようになることです。ですので、マッチング期間にこだわらず、融通を利かせても構いません。
動的なカルチマは、その名のとおり動的ですので、カルチャーも変わります。変えていいのです。
日々仕事をしていく上で、各自カルチャーに関するフィードバックや議論を進めてください。
そうして貯めていくと、より良いワークスタイルが自然と浮かび上がってきます。落ち着いたタイミングで、今度はそれらをデファクト・カルチャーにすればいいのです(1: に戻る)。
動的なカルチマの解説は以上です。
最後に、よくある議論をQ&A形式で整理して終わります。
Ans: 推奨はしません。
そもそもそれができないから、単一の拠り所としてカルチャーを言語化して、それに合う人材を採用しようとなっているわけです。
できる、できないで言えばできますし、当サイトでもそのための仕事術を扱っていきたいところです。本記事では取り上げません。
※たとえば「ワークスタイル・ダイバーシティ」として、ワークスタイルそのものを多様性にするとの考え方を整備中です。
Ans: 色んな仕事術が使えます。
ワーカー・トライアングルについては既に言及しましたが、他にもあります。
結局、仕事術(仕事のやり方や考え方)という手段を知っているかどうかがすべてだと思いますので、自分でつくれない人は、知るところから始めてください。
当サイトでも色々と紹介しているので参考にしてください。
https://note.com/search?q=from%3A%40workhack20%20&context=note&mode=search