パターン:コアタイムよりもフレキシブルタイム、フレキシブルタイムよりもフリータイム
サマリー
- ASD 部下はコアタイムよりフレキシブルタイムが過ごしやすく、フレキシブルタイムよりもフリータイムが過ごしやすい
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背景とアプローチ
- 柔軟に働ける技術と方法を得た現代でもコアタイムは使われがちだが、コアタイムはしばしばランダムかつ高密度なコミュニケーションを意味し、ASD はついていけない
- 👉️コアタイムの配分を減らす。特に別の過ごし方を注目し、その配分を増やす
アプローチ詳細
- コアタイムとフレキシブルタイムについては、厚生労働省の手引から引用する *1

- フリータイムは造語であり、フレキシブルタイムよりもゆるい過ごし方を指す
- 上記を踏まえて、改めて以下のように定義する
- コアタイム:打ち合わせなど拘束を伴うコミュニケーションを許容する時間帯
- フレキシブルタイム:連絡が取れる状態にしておくべき時間帯
- フリータイム:連絡が取れなくてもいい時間帯
- 便宜上、CFFT(Core-Flexible-Free Time) と総称したい
- CFFT はいずれも勤務時間である
- その上で、ASD 部下に対しては、以降で述べる CFFT 戦略 に頼るのが良い
- その際、会社のルール――勤務時間の融通がどこまで認められているかを確認すること(手札の熟読パターン)
- ルールを逸脱せずに済むのならば、遠慮なく適用すればよい(合理的配慮)
- ルールを逸脱する場合でも、全社ルールではなく部門等のローカルルールであるなら、必要に応じてスルーして適用すればいい
- 全社ルールを逸脱する場合でも、合理的配慮として可能なら勝ち取りたい
- 例: 全社ルールで週2の出社が定められている(出社義務は事実上コアタイムとみなしてよい)場合でも、合理的配慮により ASD 部下のみ免除、少なくとも軽減する
フリータイム
- 連絡が取れなくてもいい時間帯のこと
- 例: 毎日 10 時以前と 16 時以降がフリータイムだとする
- この間は、連絡手段を一切見なくてもいい
- もっと言えば、何をして過ごしてもいいことに等しい。体裁としては推奨されないが、散歩したりゲームしたり買い物したりしても別にいい
- 主な議論
- Q: それではサボってしまわないか?
- Ans: はい
- 予防策は色々あります
- たとえば仕事の進捗や成果が見えるようにします(透明性)。クラウドストレージや CMS にワークスペースをつくって、仕事の過程や成果を常に置くようにします
- あるいは単に「進捗確認の場」を設定しておいて、そこでちゃんと出せればあとは好きにして、としてもいいです
- 最も効果的なのは テキストコミュニケーションによる率直な議論や意思決定を加速させる ことです
- 仕事の密度を上げると言い換えても良いでしょう。密度が上がると、フリータイムでテキストコミュニケーションで進めるだけでも仕事は成立する、との感覚が得られやすくなります
- 👉- ASDの強みは率直、自律、変則、迅速(特に率直)
- Q: 勤務時間を偽装されないか?サボっているのに勤務していると申告されたりしないか?
- Ans: はい
- ですので基本的に性善説や成果主義的発想(過ごし方よりも進捗や成果を見る)に頼らざるを得ません
- これができないマネージャーは、通常以下にとらわれています
- 1: 自分にその気やその能力がないから、部下もできるはずがない → もちろん自分がそうだからといって部下もそうとは限りませんし、マネージャーよりその手のモチベと能力を持つ部下がいることは通常珍しくありません
- 2: 単に自分が寂しかったり暇だったりするから、コアタイムを増やすことで必要に応じて満たせるようにしたい → 一種の職権乱用であり望ましくありません。寂しさはプライベートで満たすべきです
- Q: フリータイムで仕事など成立するのか?
- Ans: 人によりますが、成立します
- 成立しないと考えるのは、人と喋ることが仕事となっているような一部の人(マネージャーはそうかもしれません)だけです
- また、そのような人であってもやり方を工夫すれば成立します。たとえば 1 時間の会議を 3 回行う営みは、計30分の「手元での熟考」と、計 1 時間の「テキストによる非同期コミュニケーション」でまかなえたりします
- 少なくとも ASD 部下については、打ち合わせベースは苦手ですし、適応しきれないことも多いので ある程度は成立させねばならない と考えてください
ASD 部下の CFFT 戦略
- 1: 基本的にフリータイムを最大化する
- 2: フリータイムでカバーできない部分は、フレキシブルタイムまたはコアタイムのどちらかを使う
- カバーできない部分とは、フリータイムで行った仕事を評価したり、必要に応じた or 定期的な報連相その他コミュニケーションをしたり等
- 可能であればコアタイムは最小限にして、フレキシブルタイムにしたい。つまり「この時間帯に何か来たらすぐに応答するように」を課す
- コアタイムは 1on1 その他イベントなど、コミュニケーションのための時間で使うといい
コアタイムに頼らないという発想を持つ
すでに述べたとおり、コアタイム中に頻発する臨機応変に ASD はついていけない。にもかかわらず、コアタイムを乱用して、ASD 部下にもついてくることを期待させるのは暴力にも等しい愚行である(ASD 部下が望み、かつついてこれるのならば問題はないがその率は相当低いだろう)。
発想を変えねばならない。(ASD 部下に対しては)コアタイムに頼らずに仕事を分担できる状態をつくる 。このパターンでは、その戦略としてフレキシブルタイムとフリータイムが使えると述べている。
できればフリータイムがいいが、ASD 部下本人やチームやマネージャーであるあなた次第だ。チームやあなたにフリータイムで仕事を進める力があるとは限らない(逆に ASD はこの力を持っていることが多い → 自律)。フリータイムは、いわば一切の義務を課さず、各自のペースで非同期でやろうと言っているに等しい。これで仕事を成立させるためには、手持ちのボール(タスク)をすべて掌握し、そのすべてを遅らせることなく、ひとりで回していくフリーランスレベルの自律性が必要となる。この力を持たない場合は、改めて習得しても良い *2。少なくとも ASD 部下にコアタイムを課して、慣れてもらうことを期待するよりははるかに現実的だ。
もちろんフリータイムだけでなく、フレキシブルタイムも使っていいし、通常は両方をバランスよく使い分けることになる。
適用例
半日委譲と四半確認の原則でいえば、委譲時はフリータイム、確認時はコアタイムかフレキシブルタイムが良い。
参考