パターン:Chat and Away
サマリー
- チャット上でやりとりするのではなく、ノートなど「構造的なテキスト」でやりとりできる場所を使う
- 特に、そのような場所を確保した上で、チャットからは誘導だけ行う
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背景とアプローチ
- ASD にはテキストコミュニケーションが適するが、チャットだけでは足りない
- なぜならチャットは、「なるべく少量かつシンプルなテキスト」をやりとりする手段になりがちだから
- 実際チャットで数十行以上のテキストを送る行為は嫌われやすいし、文脈次第だがスルーの対象になりやすい
- しかし ASD とのコミュニケーションでは、数十行以上のテキストは珍しくない
- 言い方を変えると、非言語情報メインのコミュニケーションやハイコンテクストなコミュニケーションが苦手であり、その分、言語情報でカバーすることになる
- 問題は チャットという手段そのものにある。チャットでは十分なテキストを扱ったやりとりを行いづらい
- 🐰より大胆に言えば、チャットもまたハイコンテクストなツールであり、ハイコンテクストを捌けない ASD がチャットだけで仕事をすること自体に無理があります
- 👉️別のツールを使うべきである
- しかしチャットにはメンションなど「通知を送って気づかせる」効果があり、他のツールでまかなうのは難しい
- 👉️この点ではチャットは引き続き有効であり、活用したい
アプローチ詳細
- 以下の使い分けをする
- 1: コミュニケーションは、チャットとは別のツールで「場」をつくり、そこで行う
- 👉️QWINCS
- Cosense を使った例もあります *1
- 2: 「場」に誘導するのにチャットを使う
- この運用は、しばしばチャットで「”こっちに来て <URL>”」とだけ示す形となる
- チャットしてすぐ逃げる、ようにも見える
- 🐰ヒットアンドアウェイをもじってチャットアンドアウェイと名付けました
Chat and Away のやり方
- 1: 「場」をつくる
- 2: 「場」の URL をコピーする
- 3: チャットにて、対象者にメンションと 2: のURL をつけて送る
議論
- Q: Chat and Away をした後は、同期的にやりとりするのか――つまり場に張り付いてリアルタイムにやりとりしなければならないのか?
- Ans: いいえ
- Chat and Away は「この件については以後、こちらの場でやりましょう」と言っている だけです。チャットを使ってやりとりするのをやめましょう、と言っています
- ❌チャット上でやりとりする
- ⭕Chat and Away で誘導した「場」でやりとりする
- やりとりを同期的にやるかどうかは言及していません(してもいい)
- Q: 常に Chat and Away でコミュニケーションせよ、ということか?
- Ans: いいえ
- しかし、定型発達のメンバー同士で「チャットで 2-3 往復で済むこと」が、ASD 相手ではそうもいかないことはよくあります。ASD 側が暗黙や文脈を踏まえた上でシンプルに表現できないためです(踏まえる能力とシンプルな言語化の二つのハードルがある)
- かといって、具体的に言語的にあれこれ書いて 10 往復する、なんてことも非現実的です or 真面目な人は初期の頃はそうしようとしますが、時間もかかりますし、チャット上ではやりづらいのでストレスも溜まり、とほぼ必ず心が折れます
- 結局 2-3往復で済ませる要領のない ASD メンバーとは仕事なんてできないよね との結論になってしまいがちです
- これを防ぐのが Chat and Away パターンです
- つまり、チャットで 2-3 往復で済ませたいという幻想を捨てて、かわりに Chat and Away でまかなえるようになってください ということです
- Q: 「構造的なテキスト」でやりとりできる場、とはどのようなものか?
- Q: Chat and Away を行うのはマネージャー側か?ASD 部下側か?
- Ans: 両方です
- マネージャーが ASD 部下に対して Chat and Away をしますし、逆に部下がマネージャーを誘導することもできます
参考
- 1 指示やお願いはslack、議論や相談をscrapbox
- 🐰Chat and Away は、この営みに筆者が名前をつけたものです。抽象化すると「チャットでは本格的な議論はできない」「Cosense(QWINCSでいうWiki)なら可能」「なら Cosense 上でページ(場)をつくって、そこで行えばよい」「チャットではそのページへの誘導だけすればいい」となります