workhack2.0

脱拘束とは、新しいコミュニケーションパラダイムです。

従来のコミュニケーションは拘束を前提とするものでした。しかし技術と方法の発展に伴い、拘束無しでコミュニケーションできるようになりました。

脱拘束は仕事術2.0についてでも重視する概念の一つです。この新しいあり方について詳しく見ていきます。

拘束とは

拘束とは場所、時間、話題のいずれかが束縛されることを指します。

特に場所または時間のいずれかが拘束されることを強拘束と呼び、拘束と聞くと通常これを指します。

### 場所の拘束

場所が束縛されること。 その場所に同座する必要があります。

例: 出社、会議室への入室、会場への参加 etc

時間の拘束

時間が束縛されること。 その時間帯はその事に費やす必要があります。

例: 勤務時間、打ち合わせ、本番の試合や作業 etc

話題の拘束

話題が束縛されること。 今現在扱われている話題に関する事を扱う必要があります。 (他の話題の持ち出しや蒸し返しは想定されていません)

例: 会話で今話されている話題、DMで今やりとりしている内容、チャンネルやスレッドやタイムラインで今見えている話題 etc

拘束が損なうもの

拘束は以下を損ねます。

QoL を損ねます。

QoL と書きましたが、生活水準と言っても差し支えありません。拘束に耐えられる人や拘束されることを望んでいる人は問題ありませんが、そうでない人にとって、拘束は負荷でしかありません

拘束はまずその時間中は拘束されますし、準備や撤収の手間も要します。私たちの貴重なリソースを思っている以上に消費しますし、現代はまだまだこの視点に疎く、搾取と呼べるレベルで要求されがちです。

たとえば通勤時間とその準備・片付けに毎日2時間かかっているとして、通常この部分の給料は出ません。事実上、拘束されているにもかかわらず。実質サービス残業に等しい所業です。定時 + 昼休憩の 8 時間を含めると、毎日 10 時間も拘束されていることになります。

※2時間というと縁が無いと感じるかもしれませんが、意外と準備、片付け、そして待ち時間があります。片道正味40分の人でも、おそらく+20分くらいは要しているでしょう。

現代ではリモートワーク、特にパンデミックによる後押しもあって比較的拘束から脱せている組織は増えましたが、まだまだでしょう。また脱せていた組織についても、GAFAM を含め、出社に回帰する流れが見られます。

多様性を損ねます。

QoL とも絡みますが、拘束ありきのあり方では、拘束に耐えられる人だけが優遇され、耐えられない人は冷遇されます。あるいは適応にかなりの消耗を要します。

たとえば夜型の社会人や学生は、朝型前提で組まれている会社や学校に苦労しています。これは夜型という多様性を無視していることに他なりません。

熟慮熟議を損ねます。

※政治や哲学の用語としてではなく、単にじっくり考えることと議論することを指す言葉として使うことにします。

従来の拘束的なコミュニケーションは、ほぼ対面と口頭による原始的なものです。このやり方はじっくりと思考し、議論することにはまるで向いていません。

条件を満たせば不可能ではありませんが、それでも限度がありますし、条件自体も限定的です(たとえば心理的安全性が高くて、能力と自律性にも優れている、少人数の集団)。

そもそも原始的なコミュニケーションは人間の性能に全面的に依存しており、たかが知れています。話題の拘束は、まさにそのせいで生じています。たとえば 30 の話題すべての深耕や議論をしたり、300 人全員から意見をもらったり議論をしたりといったことはできません。基本的に一つずつ扱うことしかできませんし、人間にも時間や気力などリソースがありますから、取り合いになります。取り合いは政治を生みます。仕事がしばしば政治になるのもこのためです。

脱拘束に必要な要素

以下の 4 点です。

まずは拘束を脱せるコミュニケーションの仕方が必要で、それが非同期コミュニケーションです。

ただし、非同期コミュニケーションではスピードが出ません。拘束ありきの同期コミュニケーションでは当たり前の、対面口頭レベルのスピードが出ないのです。かわりの方法でスケール(前進と成長)させる必要があります。それが情報共有です。インターネットはまさにそうですが、情報を広く公開することでネットワーク的な複雑な関与を可能にし、情報格差を軽減しつつも局所最適と全体最適の双方を満たせます。また透明性により組織全体の健全性にも寄与します。

これだけで脱拘束は可能ですが、現実的にはもう少し必要です。

一つが、私たちが人間であり、非同期コミュニケーションばかりでは病んでしまうことです。これをカバーするために、同期コミュニケーションを適宜注入します。コミュニケーションの注入(CI, Communication Injection)です。

そしてもう一つが、そもそも非同期コミュニケーションや情報共有を各自が各自のペースで行えるだけのスラック(余裕)です。この点は意外と盲点で、多忙な現代人はついつい忘れがちです。新規事業はわかりやすいと思いますが、リソースをケチって片手間や「ながら」で行っても成功などしません。同様に、脱拘束においても、それなりのスラックを確保せねばなりません。