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情報共有、特に情報を握ってる中間管理職に情報を出してもらうために有効なのがウェルカム・ゲートウェイです。

ウェルカム・ゲートウェイ

ウェルカム・ゲートウェイ(Welcome Gateway)とは、配下の者から、いつでも誰でも匿名で自由に質問を受け付けるようにすることです。あるいは、そのような仕組みを指します。

わかりやすく言えば、マシュマロやPeingです。あのようなものを配下に向けて解放します。すべての質問と、その回答は、配下の者には見えます。

中間管理職が対象

ウェルカム・ゲートウェイは、部長級以上の中間管理職が対象です。

※原理上は経営層も可能ですが、配下の人数が多すぎるため今回は扱いません。

メリット

Ans: 情報共有を促進して、情報格差や政治を減らせることです。

情報共有はオープンには段階がある(誰に言われずとも最初から公開する)なものですが、中間管理職にいきなりこれを期待するのは厳しいものがあります。かといって、従来のように会議で伝えるだけでは負荷が高いですし、一方的であるため欲しい情報も手に入りづらいです。

ウェルカム・ゲートウェイを持たせると、配下からの質問をトリガーとして情報を引き出せる・残せるようになります。

回答者の心構え

ウェルカム・アプローチを持つことになる回答者が心がけると良いことを整理します。

すべての質問に必ず答える

即答する必要はありませんが、すべての質問に必ず答えるようにします。そうでなければ意味がありませんし、配下からも「この人は情報を出し惜しみするけちくさい人だ」「合間に回答できるだけの要領すら持たない無能な人だ」と評価されてしまいます。

特にポイントとなるのが、否定的な回答をしたい質問であっても、かんたんでいいので答えることです。この考え方を明示的な否定(Explicit Negative)といいます。

明示的に否定することの重要性

回答は簡潔で良い

質問は(上手く機能していれば)多数飛んでくるはずですから、回答にいちいち時間はかけていられません。

そもそも、メールのような情報密度の高さは不要で、むしろ一言二言で済むようなかんたんなやりとりが増えた方が有益ですし健全です。

このラフさを演出するためにも、回答は簡潔にします。

この程度で良いです。1 は一見すると良さそうですが、後のアクションを考えて言語化して書く手間は案外大きいです。そんなことを考える必要はありません

必要ならまた質問が飛んでくるので、そのときにまた回答すれば済みます。

匿名を受け入れる

異文化理解力の8つの指標と、特に日本の傾向を持つ日本の感覚では、匿名は忌み嫌われますが、もう少し柔軟に捉えてください。

まず、ウェルカム・アプローチは配下からの質問のみを受け付けるので、匿名といっても範囲は絞れています。

次に、情報をやりとりするのに、必ずしも実名や対面は必要ではありません。むしろノイズになることさえあります。あなたと部下は友達や恋人ではなく、仕事仲間なのです。シンプルに済む場合はシンプルに済ませればいいのです。

そうです。ウェルカム・アプローチがカバーしたいのは情報です。あなたは立場上、情報を握りすぎていますが、これをもっと配下に知らせたいわけです

※余談ですが、このように「いかにして情報を出すか」と捉えるあり方をいかに情報を引き出すか 「ブレイン・エリシット」と呼びます。

プロアクティブな情報共有ができるならそれでもいいですが、難しいでしょう。だからウェルカムするのです。ウェルカム・アプローチは、比較的かんたんに、あなたの情報を渡せる優れたやり方です。

別の言い方をすると、情報の渡し方にはこのような工夫が必要とも言えます。もっと頭を柔らかくしてください。受け入れてください。試してください。

実現のポイント

ウェルカム・アプローチを実現する際に、参考となる話題を雑多にまとめます。

義務化またはインセンティブ

組織の情報共有、よりカジュアルに言えば風通しをよくしたいのなら、ウェルカム・アプローチは最適です。

その際、取り入れ方には、以下2パターンがあります。

多様性の観点からも、2: がバランスが良いと思います。

さらなるインセンティブ設計

ウェルカム・アプローチ・レベルを設けると、さらにインセンティブの余地が広がります。

レベルは以下の三段階があります。

レベル2について補足します。以下の場合、

🐶部長がレベル2を採用したとすると、部門2と部門3の配下の全員からも見えるようになります。

ちなみに「全社全員から見えるようになる」といったレベルは存在しないことに注意してください。これを行うと、質問する側にセーブがかかってしまって、質問しづらくなります

ウェルカム・アプローチの肝は「配下にだけ見える」閉鎖性にあり、この原則を壊してしまうと、途端に質問のハードルが上がってしまうのです。

ウェルカム・アプローチは形骸化してもよい

形骸化した場合、それはその組織の中間管理職たちが情報的にケチであることを示しています。ケチであるとの検証が出来たという意味では価値があります。

ここまで見たとおり、ウェルカム・アプローチは(システムを全社的に整える部分を除けば)何ら難しいものではなく、質問量がよほど多すぎなければ、片手間でできるものです。新人ですらできるものです。

それでも成立しないのだとしたら、それは情報を出し渋る何らかの理由があることに他なりません。理由の解明は本記事で割愛しますが、ともあれ、情報的にケチであるとの事実に変わりはないわけです。

使えるツール

ウェルカム・アプローチを上手く実装したアプリやシステムは現状無いと思います。配下からのみ、匿名で、質問を受け付けること・閲覧できることが必要だからです。

Slidoやイマキクのようなものを思い浮かべるかもしれませんが、

https://imakiku.com/ja/

https://www.slido.com/jp

これらはイベント中に募集するものであって、「常時」「配下からのみ」募集するやり方としては使えません。

工夫すればできないこともありません。

Microsoft 365の場合、Formsを使えば匿名フォームは可能です。フォームの公開範囲は「限定URL」が使えますし、それが不安なら決め打ちで指定することもできます。

ただし、回答機能はないので、Teams など別の手段で行うことになります――が、このような運用は面倒くさくて、中間管理職側がついてこれないでしょう。

というわけで、かんたんに使えるアプリやシステムの登場が待たれます。

適用する「中間管理職」と「配下」の範囲は?

部長級以上で、至近距離カスケードをおすすめします。

至近距離とは、自分が直接定期的に1on1できる近さを配下とみなすという意味です。カスケードとは、同じあり方を適用していくことです。

たとえば、以下の構造があったとします。

まず部長以上ですので、6のマネージャーは除外します。

部長については、配下は「マネージャー達」と「各マネージャーが抱える部下全員」になるでしょう。

事業部長については、配下は「部長達」と「各部長が抱えるマネージャー全員」になるでしょう。

事業本部長、役員、社長についても、同じ規模感で定義します。10~30人くらいになると思います。「直下とその一つ下でいいのでは」と思われるかもしれませんが、組織構造によってはそれだと人数が多すぎたり、逆に少なすぎたりします。

多すぎると「配下」感がなくなって心理的な抵抗感が強くなりますし、回答も大変です。また、少なすぎると匿名感が薄まって質問しづらくなります。10~30人くらいがバランスが良いと思います。

ちなみに、経営層については、適用は難しいかもしれません。センシティブな情報を多く扱っていたり、中間管理職ほど「配下を抱えている感」がないがゆえにやりづらかったりするためです。

もちろん、可能ならやるに越したことはないですが、難しいと思うので本記事ではカットしていました(中間管理職向けとしました)。