仕事のパラダイムは主に二つ知られています。
第一のパラダイムは、予定をガッチガチに定めてそのとおりに従うとするウォーターフォールです。
第二のパラダイムは、小さな期間ごとに何をやるかを決めて小さく結果を出していくアジャイルです。
しかし、現代ではもう一つあります。
第三のパラダイムは、何も決まっていない中、探索的に動いてみるエクスプロラトリです。
エクスプロラトリ(Exploratory)とは、探索的な仕事の仕方です。
創造や研究に勤しむ人にとっては身近ですが、ビジネスにおいては一般的ではありません。目新しい概念ではありませんが、ビジネスにおいて活用されていないのが現実です。
そこで、これをビジネス全般で活用できるよう、『仕事術2.0について』では改めて整理していきます。それがエクスプロラトリです。
エクスプロラトリが役立つのは、タスクも予定も決まっていない場面です。タスクとスケジュールは分けて考えた方が融通が利くします。
このような場面では、従来のパラダイムは役に立ちません。ウォーターフォールにせよ、アジャイルにせよ、もちろん仕事ができないわけではないのですが、大したパフォーマンスなど出ません。
何も決まっていない状況下では、各自がベストパフォーマンスを出しながら探索し続けることが重要です。そのためには管理を撤廃し、自由に、それこそ遊ぶように動ける必要があります。これは従来のパラダイムでは理解しがたい世界観です。
次の三点です。
1: の非同期コミュニケーションの本質と必要性は、対面で口頭でやりとりするような拘束の強いやり方だと限度があるということです。
エクスプロラトリでは、各自が各自のペースで動くことで各自がベストパフォーマンスを出すのが肝ですので、拘束はできれば避けねばなりません。たとえば朝型の人も夜型の人も共存するべきで、どちらが我慢して合わない時間帯の会議に参加する、などあってはならないことです。
しかしコミュニケーションを完全に廃するわけにもいきません。そこで、拘束せずにコミュニケーションを行える非同期コミュニケーションが必要となります。
2: のアウトプットは、途中経過や結果をこまめに共有するという話です。お互いがお互いのアウトプットを参考にし、取り入れていくことで良い化学反応が起こります。誤解を恐れず言えば、アウトプットはおもちゃであり、皆が好き勝手にいじくって遊ぶものです。
また、共有するものは仕事に関するものに限りません。趣味や雑談的な内容も推奨します。何を読み、取り入れるかは各自が決めればいいのです。全員これをやれと押し付けるものではありませんし、誰の役に立つかもわからないから……などと出し惜しむものでもありません。
このあたりの感覚は、インターネットやオープンソースに馴染んでいる人ならよく分かると思います。
3: のコメントやフィードバックは、ちゃんと議論していこうという話です。趣味ではなく仕事ですので、意見や反応は必要です。それも、従来のように会議の場で空気を読んで厳選して発言する必要はなく、もっとラフに、気軽に出します。
たとえば30の議題があった場合、従来のやり方だと会議の中で数個くらいしか議論できないでしょうが、エクスプロラトリだと全部議論できます。30の議題を全部アウトプットして、各々へのコメントやフィードバックを書いていけばいいのです。
難しいのは収束でしょう。各人が好き勝手に意見を言うだけだと、発散しておわりです。仕事ですので、どこかで収束させる必要があります。つまりは意思決定です。
意思決定者が行えば良いのですが、意思決定者は通常忙しい上に、従来のやり方しか知らないことが多いです。エクスプロラトリには不向きで、足を引っ張りがちです。
そこで、エクスプロラトリ向きの意思決定者を育てるか、意思決定者がエクスプロラトリを覚える(リスキリング)ことが重要となります。
あるいは明確な意思決定者を立ち上げずに、メンバー全員が民主的に上手く意思決定していくやり方も考えられます。
エクスプロラトリの具体的なやり方として、3 つほど紹介します。
共同編集可能なWiki、ノート、ドキュメントなどのツールを使って、各自が好き勝手に動きます。アウトプットも議論もそこで行います。
このやり方として現状最も優れているのはCosense(旧Scrapbox)でしょう。
たとえば1日を以下のようなサイクルにします。
朝会とランチ会は、各自がアウトプットを持ち寄って議論をする場です。雑談など雑談など親近感を育む行為 「グルーミング」をしても構いません。
コメントやフィードバックは、基本的にこのタイミングでのみ行います。また、だらだらせずに濃密にやりましょう。30分以内で終われるはずです。終われない場合、準備不足か、人数が多すぎます。人数は2~5人の少人数がおすすめです。
ランチ会については、自由参加です。参加したくない、たとえば食事もひとりで取りたい人は参加しなくて構いません。食事しながらだと議論が弾むので、ここでは導入しています。
午前個人と午後個人は個人ワークの時間です。基本的に各々が自分に合ったやり方で仕事をするだけです。コメント、フィードバック、その他コミュニケーションはしません。あるいは、するにしても非同期で行います。
何度も言うように、エクスプロラトリでは各個人が自分に合ったやり方で集中することが重要(だからこそ探索できる)ですので、この個人ワークの聖域は無闇に侵害してはなりません。しかし、それでは連携の機会がないから、朝会とランチ会で確保しているのです。
――と、これはやり方の一つです。本質的には個人ワークを尊重しつつも、連携の機会を差し込むくらいの塩梅が良いと言っています。
特にマネージャーの方は(そのスケジュール観のせいで)わかりづらいかもしれません。以下記事も参考にしてください。
作家と編集者がわかりやすいですが、作家が書いたものを編集者がチェックするとの分業が敷かれています。また、その後の諸手続きも編集者がやります。
これを一般化するとクリエイター、レビュアー、オッドジョバーに分けて分業せよ、となります。
クリエイター業界では、レビュアーがオッドジョバーも兼任しますが、そのせいでボトルネックになっています。編集者やマネージャー(管理職ではなく芸能人のマネージャーとかの方)が多忙なのもそのためです。
ですので、エクスプロラトリでは役割を分けて、レビュアーはレビューに専念できるようにします。レビュアーもクリエイターの仲間です。それなりに勉強したり思索したりといった時間が必要です。雑用を兼任するべきではありません。
典型的には、チームにオッドジョバーなる専任者が存在することになります。雑務の専任化は(すでに確立されたバックオフィス業務以外では)馴染みが薄いと思いますが、エクスプロラトリでは重要です。探索に集中したいのです。
第三のパラダイム、エクスプロラトリについて解説しました。
まだまだ整備されていませんが、別段目新しい概念ではなく既によく知られていることです。それをビジネス一般でも使えるようにしよう、というだけの話です。
本記事がその一助になれば幸いです。また、『仕事術2.0』としても引き続き整備していきます。
エクスプロラトリのアプローチは様々だと思います。まだ定まってもいません。上述した3点は一例にすぎません。
他のアプローチも紹介します。
リトライアブルという概念を開発しました。とりあえずn回やってみるというものです。
エフェクチュエーションは手段(リソース)を集めてできることをやってみようとしますが、リトライアブルでは回数分やってみようとします。
行動には他にもあるので整理して、全体としてはマトリックスとして整理しました。