workhack2.0

現代はプロジェクト・エコノミーであり、プロジェクトの時代とも言えますが、プロジェクトにも限界があります。

新しい考え方を導入しましょう。トランスジェクト(Transject)です。

プロジェクト vs トランスジェクト

まずはトランスジェクトの概要を、プロジェクトとの違いを比較しながら見ていきましょう。

プロジェクトとは

プロジェクトの定義は権威次第ですが、一般的には以下を満たします。

つまり「ゴールと終わりがあって」「制約もあって」「プロセスもあったりなかったりする」活動を指します。

実際、現代では必要に応じてプロジェクトをつくったり壊したりしており、このあり方をプロジェクト・エコノミーと呼びます。

トランスジェクトとは

トランスジェクト(Transject)とは、「ゴールや終わりがなくて」「制約もプロセスもない」活動を指します。

プロジェクトは Pro- のとおり、前に進めるのが目的なので、色々としっかり決めてから責任を持って取り組むものです。

一方、これだけでは、進むと決定された事柄以外がこぼれ落ちますし、中長期的な検討や議論もできません。また肩の力を抜いて遊んでいるからこそ生まれてくるようなものありますが、プロジェクトでは捉えられません。トランスジェクトは、これらの問題をカバーします。

Trans- は「越境して」という意味です。トランスジェクトは、あちこち行ったり来たりして深めていくことを指します。

仕事でも雑談をしたり、給湯室や喫煙室、あるいは別のチームの島に遊びに行って話したりすると思いますが、まさにそういうことです。プロジェクトのように何もかも決めて、責任を持って取り組むわけではないが、肩の力を抜いてそれなりに取り組んでいはいるという、そういうものです。

トランスジェクトと言葉を定義したのは、このような活動をもっと重要視して、プロジェクトと並ぶ概念として共存させていきたいからです。

Work and Busy → Play and Slack

PJ(プロジェクト)とTJ(トランスジェクト)の違いは、一言で言えば次のとおりです。

プロジェクトは仕事として制約も責任も重たいですし、しばしば忙しくなりがちです。制約やゴールを守るためには、時には無茶もします。

一方、トランスジェクトは逆で、そういう負担を一切負いません。Work ではなく Play(あそび)ですし、Busy ではなく Slack(余裕)なのです

PJとTJの違いを、4要素から比べる

永続性

提供性

変動性

計画性

PJ と TJ は共存するもの

プロジェクトとトランスジェクトは共存します。

どちらか片方では望ましくありません。

プロジェクトでしっかり前に進んで、でもそこでできなかったことをトランスジェクトでやります。トランスジェクトとしては、特にプロジェクトで役に立つことを追求するでしょう。つまりお互いに生かし合います。

私たちは仕事をしているからこそ私生活も楽しめると思います。私生活ゼロの過労も、仕事ゼロの無職も、どちらもやりづらいはずです。推進と脱線のバランスは重要なのです。

人材としては、ウエイトで分けます。

このように PJ と TJ の配分を分けるようにします。人によって向き不向きはありますし、同じ人でも状況次第で変わるでしょうし、変えていいです。

従来のプロジェクト・エコノミーは、いわば PJ 100% しか選択肢がないようなものですが、そうしなくてもいいのです。少し極端に言えば、プロジェクト対応でヒーヒー言っているメンバーの横で、残業ゼロでのんびりトランスジェクトで遊ぶメンバーがいたっていいのです

プロジェクトは、プロジェクトに向いた者がやればいいのです。逆にトランスジェクトに向いている者もいます。

なぜトランスジェクトか

今までなぜトランスジェクトという考え方が生まれてこなかったかというと、資本主義だからです。

資本主義は、構造的に少数の権力者(勝者)が多数の駒を搾取することで成り立ちます。まさに機械がそうですが、多数の駒を効率的に動かすには、やり方を決めてそれに従わせるのがベストです。

すでに見てきたとおり、プロジェクトは決め事にまみれた営みです。権力者が管理しやすいのです。資本主義でいる以上は、プロジェクトを脱した考え方が生まれません。生む必要もないし、何なら生ませたくないまであります

だからこそ、トランスジェクトを意図的に啓蒙・導入していく必要があります。搾取を食い止め、より多様な社会を目指すために。そのために、この度トランスジェクトの概念をつくったのです。

トランスジェクトを実施する

では、トランスジェクトは具体的にどのように進めていけばいいのでしょうか。プロジェクトもそうですが、やり方や考え方は一つではありません。

そこで、ここからは仕事術2.0を使って一例を示します。

考え方、手段、制度の3要素それぞれについて、3つずつ取り上げて整理しています。

考え方

1: トピック指向

タスク管理改めトピック管理

TJ は PJ ほど制約が強くないため、「情報を外に残す」ことで進めていかねばなりません。しかしチャットや録音録画、文書といった程度では上手くいきません。

話題ごとに置き場所を変える、という概念を導入せねなばなりません。トピック指向と呼びます。

2: コンセプトドリブン

イシュードリブン、ギャザードリブン、コンセプトドリブン

具体的なニーズや問題に応えたり、コミュニケーションのために集まったりといったことは疑うまでもなく重視されます。このようなものをドライバーと呼び、前者はイシュードリブン、後者はギャザードリブンと呼びます。

トランスジェクトには、実はもう一つ必要です。それがコンセプトドリブンで、その名のとおり「概念」を重視します。自分なりに概念をつくって、言語化して、伝えて議論して、という営みを楽しむということです。

ドライバーというほどですから、仕事の一環として堂々と行えるほどの座に上げます。

3: ソロワークとソーシャライブのバランス

チームワークだけでなくソロワークも

現代はチームワークの時代でもありますが、チームワークは常に本番試合をしているようなものです。

スポーツやゲームがわかりやすいですが、本番だけでは上手くいきません。個人練習も必要ですよね。それがソロワークです。その名のとおり、ひとりで考えて形にします。

孤独とも言えますが、トランスジェクトでは重要です。社会人ならば必須のスキル・リテラシーと言えるレベルで重要ですので、当サイトでも強調しています。

一緒に進めたいという潮流 「ソーシャライブ」

一方で、ソロばかりだと病んでしまいます。集まってやった方が早い場合は、もちろんそうした方が良いです。ソロとソーシャルを、各自に合った形で行き来できるとベストです。

手段

1: QWINCS

QWINCS ~コミュニケーションツールの主な選択肢~

トランスジェクトでは、デジタルツールを使った情報のやりとりを主に行います。ツールを使わねばなりません。

主なツールとして Q W I N C S の 6 種類があり、上記記事にて整理しています。ちなみに C はチャットですが、チャットはこのうち一種類に過ぎません。チャットしか知らない人(たとえば Teams や Slack や LINE など)は、全然足りません。

2: コラボレーティブ・ノートテイキング

コラボレーティブ・ノートテイキング

ツールのうち、特に重要なのがノートアプリです。

言葉で書いて、議論するためには、チャット程度ではなく、ノートレベルの「ちゃんと書ける」手段とが必要ですし、複数人で連携・協調するためには同時編集など、それなりの便宜も必要です。

このあたりの理論を整理したのが「コラボレーティブ・ノートテイキング」です。

3: プレゼンシング

ミーティングは要らないかも 「プレゼンシング」

私達は人間なので、デジタルツールで情報を交換するだけで完結はできません。しかし、従来のように出社して対面で、打ち合わせをして――となると負担が高すぎます。プロジェクトはともかく、トランスジェクトでは成立しません。

そこで折衷案として「存在感を共有する」塩梅があり、これをプレゼンシングと呼んでいます。プレゼンス(存在感)を共有するわけですね。

制度面

1: 勤務2.0

短時間正社員は悪くないが、もっと上手くできる

現代の労働観はまだまだ原始的で、労働者にとって搾取的なものです。先日はハイパーフレックスを取り上げましたが、ハイパーどころかスーパーでさえもマイノリティです。

トランスジェクトは、Play and Slack のとおり、各自が余裕をもって遊ぶように取り組むことで行えるものです。勤務制度で働き方を縛られていてはスタートラインにも立てません。融通を利かせねばならず、そのあたりを勤務2.0と呼んで整理しています。

2: ティール組織

ティール組織の本質は3P

先述にて資本主義の構造的な問題を指摘しましたが、これは組織のあり方からも来ています。いうまでもなく現代でもまだまだ階層的な組織が採用されていますが、階層的である以上、どうしても権力が偏ります。限度が出ます。

ですので、組織のあり方そのものをアップデートせねばならないのです。現在最も確かであろうものがティール組織であり、当サイトとして取り上げています。

特に上記記事は、ティールの本質を 3 つの P で端的に整理しました。

3: 特区

VUCAに勝つための組織 「●●特区」

イノベーションなど先進的な文脈では、既存の組織が足を引っ張ることがあります。組織のルールや文化が邪魔なのです。

ですので、組織から切り離した治外法権的な場所をつくらねばなりません。当サイトでは特区と呼んで、整理しています。

トランスジェクト推進においても、まずはトランスジェクト用の特区をつくって推進するのが鉄板でしょう。

おわりに

プロジェクトの限界をカバーするために、トランスジェクトという新しい概念を提唱しました。

また、トランスジェクトを実現するために、仕事術2.0の仕事術をどう使えばいいかの一案も述べました。

ぜひご活用ください。